三人でダンジョン――地下第五階層
ロックウルフも無事に倒せることがわかったので俺たちは意気揚々として地下五階層のオークを倒しに来た。
しかし、そこには既に先客がいるようだった。
「はぁ、はぁ……こんなことであいつに……あいつなんかに負けてたまるか!」
体はボロボロで至る所に傷があり、既に満身創痍のミハエルがそれでも諦めない強い瞳をオークに向けていた。
これは以前と同じ状況だが対するオークのほうも既に虫の息のようで重たい体をなんとか動かしてミハエルへと迫っていた。
「グルゥァァァァ!!」
オークの方がゆっくりと動き出す。しかし、ミハエルはその場でしゃがみ込んだまま動かない。
このままじゃ危ない。
「シャル!」
「はい、わかりました!」
「余計なことをするな……」
シャルに援護を頼もうとするとミハエルが低く唸るように言ってくる。
だ、大丈夫なのか?
流石に心配になり、わからないように小声でシャルに言う。
「(回復の準備しておいてくれる?)」
「(は、はい。わかりました)」
そう指示しておいてミハエルの行動を固唾を飲んで見守る。
しかし、ミハエルは下向いて、目もつぶっていた。
オークの太い拳でミハエルに殴りかかる……と思ったら次の瞬間にミハエルの姿が消える。
そして、ミハエルの剣をしまう音だけが響きわたり、オークは地に伏して、その姿が魔石へと変わっていった。
それを袋に入れるとミハエルは俺たちの前へとやってきた。
「お前たちに負けてから俺は鍛えたんだ。いつか勝つためにな……あれ、あの方は?」
威圧的な表情で話しかけてきたはずのミハエル。しかし、急に困惑した表情に変わる。
「あの方っていうとミーナのこと?」
「ミーナさんっていうのか……」
そういえば名前、名乗ってなかったかな。すごく嫌がってたもんな。
「彼女は俺たちのパーティを抜けたんだ」
「まぁ能無しのハクのパーティだからな。次こそは俺が勝ってお前が能無しだってことを証明してやる!」
ビシッと指を突きつけてきて、傷ついた体を引きづりながら奥の扉へと向かっていった。
それを呆れながら見守った俺たちは再びオークが現れるのを待った。
ミハエルと一緒に先に行ってもよかったんだが、今回は俺たち三人でどこまで行けるかを調べに来たんだ。ならこのオークとも戦っておくべきだろう。
周囲を警戒しながら五分ほど待つとどこからともなくオークが現れる。
本当にどこから現れたんだと思えるほど、急に現れたので俺たちは慌てて戦闘隊形を整える。
「まず、ニャー。絶対攻撃に当たるなよ! そして、シャル。シャルはいつでも回復出来るように準備しておいてくれ。攻撃魔法のタイミングは俺が出す」
俺の言葉を聞くと二人は頷き、すぐに行動を開始する。
ニャーは動きの遅いオークの攻撃をかわしながら何度も毒牙のナイフで斬りかかる。
しかし、この階層のボスたる存在のオーク。中々毒になる気配がなかった。
そして、ニャーの攻撃をものともせず手に持った棍棒を振り下ろしてくる。
ニャーは余裕を持ってかわすがその余波を受けて、一瞬からだが硬直してしまう。
「地面がグラグラにゃー」
どうやら棍棒が地面に当たった衝撃で近くの地面が揺れたようだ。
しかし、オーク自身も行動が鈍いので特に影響はないようだ。
そして、動き出せたニャーが更に攻撃を加えていき、ようやく毒状態になる。
「ニャー、離れろ!」
「わかったにゃ」
俺はニャーに指示を出し、ニャーが離れた時点でシャルに言う。
「今だ、シャル!」
「はい!」
シャルは杖を前に突き出し、呪文を唱える。
「□△◯□□、ファイアー」
シャルは以前オークと戦ったときにも使った大火炎球を呼び出し、それをオークに向けて飛ばす。
「グォォォォ…………」
オークの悲鳴が響き渡る。
そして、オークが倒れたかと思うと体が消えていき、魔石に変わった。




