初魔物戦
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ダンジョンの中は約三メートル四方の通路となっており、薄暗いながらも壁がほんのりと光っていて、見えないというほどでもなかった。
そんな中を俺が前、シャルロッテが後ろといった陣形で進んでいく。
「薄暗いですね……」
体を縮こめておどおどと進んでいくシャルロッテ。俺はいつでも剣が抜けるように構えながらゆっくりと進む。
しかし、このフロアはなにもいないのか、魔物一匹も姿が見えない。
とそうしているうちに下へ降りる階段が見つかる。
「ダンジョンってもっと迷路みたいになってると思いました」
「いや、多分この階だけなんじゃないか? 魔物も出てこなかったし、こんな一本道ならもっとダンジョン走破者がいてもおかしくないからな」
「あっ、そうですね」
俺たちは下の階へと降りていった。
そして、そこからは明らかに雰囲気が変わる。
魔力の淀みのようなものが感じられるようになる。
「どうやら本当のダンジョンはここからみたいだな」
「そうですね」
俺たちはさらに気を引き締めてゆっくりと進み始める。
すると少し開けたところに出てくる。
そこでこのダンジョンに入って初めての魔物と遭遇する。
悠々自適に闊歩する俺の腰くらいの大きさの緑肌の亜人がいた。おそらくゴブリンと呼ばれる魔物だろう。
「あれ、魔物ですよね?」
「そうだ」
俺はそう言いながら遠目で【詳細鑑定】スキルを使い相手を確認する。
『ゴブリン、レベル1』
【ナイフ術、レベル1】
スキルは持ってるようだが、ゴブリンが手に持ってるのは棍棒だ。スキルを生かせない……ということは俺でも十分相手に出来るはずだ。
しかも、ゴブリン自身のレベルも【1】。あまり強くないやつなのだろう。
このレベルは人には表示されないものなので、予想でしかないが……。
「あれ、倒せますかね?」
不安げに聞いてくるシャルロッテ。
「多分大丈夫。俺が行くから何かあったら魔法で助けてくれ」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください……」
俺はシャルロッテが慌てて声をあげたのも聞かずに、そのままゴブリンに向かって駆け出していった。
腰に差した普通の鉄の剣を抜き、大きく振りかぶりゴブリンの頭に下ろす。
あまりに突然のことだったからか、ゴブリンは反応できずにそのまま俺の剣を頭に受ける。
「グルゥァァァァ……!」
その瞬間にゴブリンは咆哮を上げる。
くるか?
俺は剣をしっかりと握りしめ、どんな攻撃が来ても防げるように構える。そして、緊張のあまりグッと息を飲み込む。
しかし、ゴブリンはそのままあっけなく倒れてしまった。
そして、しばらくするとゴブリンの体は消え、後に残されたのは魔石と呼ばれる石と、ゴブリンが手に持っていた棍棒だった。
魔物は絶命してしばらくするとその姿を消し、魔石とたまに素材を落とすことがあるらしい。
魔石は冒険者組合で買い取ってもらえる。これが基本的な収入源だが、素材の方も物によっては買ってもらえる。
まぁ今回の棍棒は売れないよな。……武器もなしだと心配だろうしと思い、シャルロッテに渡しておく。
「ありがとうございます」
「気にするな。いくら魔法を使えると言っても武器なしでは心配だろうからな」
「そ、そうでした!? なんで私が魔法を使えることになってるのですか!?」
驚きを見せるシャルロッテ。スキルで持ってるのだから当然だろう……いや、持ってることを知らないと使えないのか?
俺は鑑定が使えると本能的に知った時から普通に使えてた。
だからシャルロッテも同じだと思っていたのだが……。
まぁ一応スキルを持っていることを話してみるか。
「シャルロッテ……」
「あっ、私のことはシャルって呼んでください。孤児院の皆からはそう呼ばれてましたので」
「わかった。それなら俺のことはハクでいい。じゃあ、シャル……」
「はい……」
シャルがグッと息を飲み、真剣な眼差しで俺のことを見てくる。
「お前は魔法スキルを持っている」
「はい、えっ!? えぇぇぇ……」
ダンジョン内にシャルの声が響き渡る。




