三人でダンジョン――地下第四階層
少し不穏な空気を漂わせたまま俺たちは地下第四階層に足を運んだ。
ここはロックウルフやロックバットといった堅い魔物の生息地だが、ニャーが毒にしてくれたら簡単だろう……そう思っていた時期もありました。
ニャーの攻撃は簡単にはじかれてしまい、毒も与えられない。
どうやら毒牙のナイフは相手に切りつけないと効果を発揮してくれないようだ。はじかれるだけでは毒には出来ない。
その結果、俺たちでは相手に出来ず、シャルに魔法を頼むという結果になった。
「どうするか……」
さすがに今のままではつらいな。
まぁ魔物が全員堅いわけじゃないから堅い魔物を無視するというのも手だが、どうするか……。
少し悩んでいるとロックバットが隙だと思って襲いかかってくる。
「危ないにゃ!」
それをニャーが短剣で捌いてくれる。
「ご主人様、こんなところで考え事をすると危ないにゃ!」
「ごめん、助かった」
気を取り直して俺はロックバットを見る。
コウモリ型の魔物だけあって動きが速いがそれでもニャーには及ばない。
ただ、短剣の攻撃が入らない。やはりはじかれている。
シャルに魔法を頼もうとしたとき、どういうことかロックバットに攻撃が通る。
「な、なにが?」
シャルに頼もうと思っていたので少し目を離してしまっていた。
その一瞬で何が!?
困惑する俺だがニャー自身は攻撃を続けている。
やはり、それらははじかれ続けている……が今度は数回ロックバットに傷を負わせた。
「やはりそうかにゃ」
ニャーはなにか掴んだようで攻撃を更に加えていく。
その攻撃は次第にロックバットに当たるようになり、ついにロックバットは毒の症状になった。
「今がチャンスにゃ」
そう呟くとニャーは今まで見せたことのない速度でロックバットに攻撃を加えていく。そして、ロックバットは倒され魔石に変わる。
しかし、ニャーもその場で座り込んでしまった。
「少し疲れたにゃ」
ニャーの今の速度……おそらく【瞬間加速】のスキルを使ったのだろう。それも本能的に……。
ただ、使った後には疲れが出るみたいだ。一撃必殺が出来るとき以外は使わせるべきではないだろうな。
「ニャー、今の技だが――」
「わかってるにゃ。ドンドン使っていくにゃ」
「いや、あまり使うな。使った後にこう大きな隙が出来るんだ。タイミングを考えて使え」
「わかったにゃ」
顔に疲れの色を見せながら笑顔で答えるニャー。
「あの……、回復はいりますか?」
オドオドとシャルが聞いてくる。さすがに回復まではいらないだろうな。
「いや、それは大丈夫。それより次はあいつだ。シャルも力を温存しておいてくれ」
「あっ、そうですね。わかりました」
そういってシャルもニャーのそばに腰かける。
二人に休んでもらっている間、俺は周囲を警戒しながら魔石を拾っていた。
「それにしてもどうしてあの堅い魔物を攻撃出来たんだ?」
ニャーに気になることを聞いてみた。
「なんていうかにゃ……こう、柔らかいところが見えたのにゃ。そこを斬ったら倒せたのにゃ」
つまり、堅いところの他に柔らかい部分もある? 体の節々に当たる部分だろうか? でもそういったことがわかるのなら、今後堅い魔物が出て来ても対応出来るかもしれない。
それならと休憩を取り終えた後、今度はロックウルフの相手をしてみる。
やはり最初は何度もはじかれながら攻撃を繰り返す。
それをしばらく……ロックバットより長い時間繰り返す……。するとようやくロックウルフも傷つけることが出来た。ただこれ、俺にはとても出来そうにないな。
目の前でくり広げられている高速の戦闘をただ黙って【詳細鑑定】をしながら見守っていた。




