凶化持ちの人間は?
「とにかく先ずは凶化を持ってる人物を探すしかないな」
一応探す基準ははっきりしていた。
王族に会える人物でこの町を頻繁に出入りしている人物……。
ただ――。
「こんなに広い町の中を探せるか!!」
町は思いのほか広く、一人ずつ探していてもいつに見つかるか……、その目処すら立たなかった。
せめてもう少し調べる基準があれば……。
「それならまだ感染していない目立った人物がいたら大丈夫じゃないか?」
「つまり誰かが囮になるってことですか?」
ブライドが頷いてくるので俺が慌てて首を横に振る。
「い、いや、それはダメだ!」
「どうしてだ?」
「まだどういう理由で広まっているのか、あとは治し方もまだわかっていない状態では危険すぎる」
「危険は承知の上だ。もちろんもしかかったとしても治してくれると信じてるぞ」
それだけ言うとブライドは笑みを浮かべてくる。
ブライドの目は覚悟のこもった目つきでとても止めさせることは出来なさそうだった。
「とにかくまずは町の中を案内してやる。その上で見つからなかったら囮として動くことにするな」
そう伝えてくると俺たちは町の中を案内して貰った。
そして、一通り見終わった後に城の方へと案内してくれる。
「この中に王女様がいるのだが、見ての通り厳重な警備をしていて近づけそうにすらない。」
ブライドの言うとおり、城に入るための門は二人の兵によって守られていた。
その格好は全身を鎧で覆い、手には槍を……。腰には剣を……。
更に魔法スキルすら持っているという万能っぷりだった。
「でも、あの兵士達を倒したら中には入れるよね?」
スキルとしては強くても倒すのは容易に出来そうだ。
要はシャルの魔法でぶっ飛ばせば良いだけだもんな。
ただ、それをすると凶化した全員に知れ渡ってしまうだろう。
町全員と戦う覚悟がないと出来なさそうだ。
「とりあえずそれは最終手段だな」
俺が小声で呟くとシャルは不思議そうな顔をしていた。
「ハク様、どうかしたの?」
「いや、何でもないよ」
軽くシャルの頭を撫でておく。
「とにかく今は探せるだけ探しておこう」
再び町の方へと戻ってくると鑑定を使っての捜索を始めていた。
しかし、一日かけて町中を見て回ったのだが凶化の原因である人は見つからなかった。
「やはりきつかったか。では明日から私が囮になりながらの捜索を始めるか」
「それしか……ないですね。でも、囮は一人じゃなくていいですよね。俺も囮になればいいな。その方がすぐに見つけられる」
「……いいのか?」
ブライドが心配そうに聞いてくる。
「えぇ、その方が良いと思いますから――」