ミッドランド王国へ出発
ミッドランド王国の場所も知らずに出発しようとしていた俺たちを見て、ミーナはため息をついていた。
「はぁ……、その手紙に地図なんかはついていなかったのかしら?」
「そ、そういえば手紙のほかに何か入っていた気がする」
慌てて手紙が入れられていた封筒を取り出す。
そして、中に何が入っているかを確認すると一枚の紙が落ちてくる。
「これは……?」
それは今俺たちのいる町からミッドランド王国までの道のりが書かれていた地図だった。
さすがにここまで丁寧に準備されていると逆に怪しく思えてしまう。
「うん、ここに書かれているとおりに進めばミッドランド王国に着くわね」
ミーナも地図を確認してくれる。彼女が言うのだから間違いはないだろうし、やはりこの地図にも呪いのようなものはかけられていなかった。
やはり、俺の考えすぎなのだろうか?
「とにかく行ってみないことにはなんともいえないな。とりあえず出発するか」
シャルやニャーに確認すると早速馬車を手配して出発する。
◇
(ミッドランド王国王女)
鑑定使いの冒険者様は来てくれるでしょうか?
さすがに事情が事情なだけに堂々と名前を出して頼むことができなかった。
でも、よくよく考えてみると差出人不明の手紙なんて怪しすぎて自分だと受けることはない。
それでも、そんな一縷の望みにかけても鑑定使いの冒険者様に頼むことしかできなかった……。
しかも大勢の人間を連れて歩くと怪しまれてしまうので、少人数で来てもらうよりほかはなかった。
まさか、今このミッドランドが半分魔族に占領されてしまっているなんて……。しかも、王族である自分にも監視の目があるなんてとてもじゃないけど手紙には書けなかった。
で、でも、鑑定使いの冒険者様なら……きっと、この町に入ったらその異常に気づいてくれるはず!
門番の兵はすでに買収済みだし、私自身も監視の目があるとはいえ、行動を抑制されているわけではない。
むしろ、魔族に占領されている事実自体を隠そうとしている。
今ならばまだ対処することができる。
でも、どうして私にこんな能力が宿ったのだろう?
人か魔族か……、善か悪かを判断する目が――。
今も窓の外ではたくさんの人が歩いている。
ただ、私の左目には人の姿が映らずにぼんやりとした色の光だけが映っていた。
何も問題のない普通の人間族なら青く丸い光……、魔族なら三角……、獣人族ならば四角……といった感じに映っていた。
逆に悪人ならその光は赤く染まる……。
そして、この町にいる人たちは皆赤色に染まっていた――。
鑑定使いの冒険者様……、早く……、助けてください――。