ゴブリンキング
「う、嘘だろ? どうして俺の魔法が?」
困惑するライン。
さすがに彼の力ではゴブリンキングを相手にするには厳しいだろう。
「シャル、準備は出来てる?」
「はい、いつでも大丈夫ですよ」
一応シャルの確認を取っておく。
するとすでに準備が出来ているようで俺に向かってい一度頷いてくれる。
「余計なことをするな! ここは俺が……。このくらい俺が倒せなくてどうするんだ……」
少しいらついた様子だったものの手を出すなと言ってくるライン。
「シャル、今の状態で魔物だけ狙うことって出来る?」
「さ、さすがに今のままでしたらあの子に当たってしまいますよ……」
となるとやはりラインは退けないとまずいか……。
でも、本人はまだゴブリンキングを倒せる気でいる……。どうしたものか。
ここで本人の才能が発揮して……なんてこともないだろうし、むしろ魔族の彼がそうなる方が怖い。
うーん、となるとやはり俺が動くしかないか。
「わかったよ。俺が彼を少し引き離すからその間にシャルは魔法をお願いね」
「は、はいっ。わかりました」
シャルの確認も取れたので俺は早速少年に向かって走り出す。
当然ゴブリンキングに集中していた彼は全く俺の行動に気づいていない。
うーん、周りに意識が回せないのもダンジョンだと致命的になりかねないかな?
そう思いながら俺はラインに飛びつく。
「うおっ、な、なんだ!?」
驚きの声をあげるライン。
それと同時に俺は叫ぶ。
「シャル、いまだよ!」
「ファイアー!!」
シャルの火の魔法はそのまままっすぐにゴブリンキングに向かっていく。そして、そのまま火に飲み込まれたゴブリンキングは叫び声を上げながらそのまま倒れていった。
後に残された魔石を拾っているとラインが怒りながら言ってくる。
「ど、どうして邪魔をしたんだ! あのままいったら俺だって……」
「あのままだったら間違いなくやられていたよ?」
どう見ても攻撃全てを防がれるラインが圧倒的不利であった。
「そ、そんなことはない……。あのままいけば俺だって――」
しかしすぐに口を閉ざすライン。おそらく自分でもわかっていたのだろう。あのままいけば負けることくらいは……。
「でもどうしてただのゴブリンに……?」
「今のは普通のゴブリンじゃなかったよ。ゴブリンキング……明らかに普通のゴブリンより強い魔物だったよ」
「ゴブリン……キング?」
ラインが首を傾げてくる。
どうやらゴブリンキング自体を知らないようだった。
「やっぱりダンジョンに入る前に少しだけ勉強した方がよさそうだね」
「べ、勉強なんて俺には……」
なんとか逃れようとするが、後ろにいたシャルにあっさりと捕まる。それを確認すると俺たちは今日のところはダンジョンから出ることにした。
三作同時更新しました。
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