共闘へ
「実は話したいことはどうして町で盗みをしているかと言うことなんだ」
遠回しに言っても少年はわからないだろうと思い、単刀直入に聞いてみる。
「仕方ないだろ! 食べるにはそうするしか出来ないんだ! 本当ならダンジョンにでも行って一攫千金を狙いたいんだが、まだ年齢制限に引っかかる。全ては生きていくためなんだ!」
本当に悔しそうに少年が叫ぶ。
確かに今のこの子の年だと雇ってくれるところもないだろうし、ダンジョンで魔物を倒すなんてことも出来ない。
「あの……そんなときのために孤児院が……」
シャルが小さく手を上げていう。
ただ、自分の孤児院を思い出して、すぐに口をつぐんでしまう。
「あんな所信用できるか! 前に一度行ったがすぐに追い出されたぞ!」
おかしいな? 確か孤児院は人数制限にかからない限り入ることが出来るのに。
その予算は国から出されているはず……。記憶違いだったかな?
このあたりは俺よりシャルの方が詳しいだろう。
チラッと横にいるシャルを見ると彼女は首を横に振っていた。
どうやら彼女もどういうことかわからないようだった。
「うーん、でもいつまでも盗みを働いてはいられない……それはわかるよね?」
「あぁ……、満足に食っていけるならこんなことしねーよ」
それを聞いて俺は安心する。
それならこの子に稼いでもらう方法は一つある。
うちのニャーがそうだが年齢規定に引っかかってもダンジョンへ入る方法はある。
この少年にもそれを使えばいい。
問題はそれを少年がよしとするかだ。
「君、俺の奴隷にならないか?」
うん、もしこれを口にしてしまうと間違いなく少年は今後俺とは会ってくれないだろう。
しかもそれだけではない。
いきなり問答無用に攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
そこまで考えるととても口に出せる言葉ではなかった。
そう考えるとどう切り出すか……それが問題だった。
「君……、誰かの奴隷になればダンジョンには入れるよ? うちのニャーちゃんもそうだし……。信用できる人にそうしてもらうといいかも……」
俺が口に出すか迷っていたことをシャルが先に話してしまう。
しかし、俺から言うのではなくて小さな少女であるシャルから言ったことで少年はその考えを考慮してくれる。
「それは……本当なのか?」
確認のためにそのことを俺に聞いてくる。
なので俺はニャーのことを詳しく説明する。
奴隷はもの扱いだから年齢制限に引っかからないことを……。
俺から言ったのでは聞いてもらえなかっただろう。
しかし、自分から聞いてきた少年は一考して、そして、俺に頼んでくる。
「なぁ、あんた。俺と共闘関係になってくれないか?」
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『ポーション売りの少年 〜彼のポーションは実はなんでも治す伝説のエリクサーでした〜』
ただのポーション売りの少年が治療した人の影響を受け、少しずつ変化していくほのぼの物語です。
作品の雰囲気も似ておりますのでよかったら読んでもらえると嬉しいです。
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