表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定使いの冒険者  作者: 空野進
第一章、クルードフダンジョン、第1〜5階層
12/152

地下一階層

 俺でも対処できる……そのはずだった。

 今俺たちは必死に逃げていた。

 そんな俺たちを追いかけるようにゴブリンの大群たち。数はおそらく二桁を超えるだろう。


 何でこんなことに!?


 逃げながら不思議に思う。どう見ても魔物っぽくない行動だ。何だか誰かに操られてる風にも取れる。

 そこで俺はハッとなり【詳細鑑定】を使う。



『ゴブリン、レベル1、魅了状態』

【棍棒術、レベル1】



 あっ、このゴブリンは棍棒スキル持ってて厄介だな……じゃない!?

 なんだ、この魅了状態は?


 いや、そういえばミハエルのパーティに魅力スキルの高いやつがいたな。もしかしたらあいつがしたのか?


 とにかくこのままではまずい。

 俺だけではあれは相手にできないのでシャルに頼るしかないだろう。



「シャル、あの数はいけそうか?」

「や、やってみるの」



 グッと杖を握りしめて、狭い通路にひしめき合ってるゴブリンへ向けてその杖を突き出す。そして、呪文を唱え始める。



「△◯△△、ファイアー」



 今回の火の魔法はいつもの大きな火の玉でも、以前ウルフ相手に見せた複数の小さな火の玉でもなかった。


 俺がはっきりと見えたのは赤い線のようなもの……それだけだった。

 気がつくとゴブリンたちの頭には小さな穴が開いており、何があったのかわからない様子のまま、その場に倒れていった。


 そして、ゴブリンは姿を消していき、あとに魔石と棍棒が数本残されていった。




「ちょ、ちょっと待って! さっきの魔法って一体なんなの!?」



 しばらく口を開けてシャルの魔法を見ていたミーナだが、急に俺を掴み揺さぶってくる。



「何って普通の魔法だ」

「全然普通じゃないわよ! どう見ても普通の威力じゃないわよ! 魔物相手なのよ! 一撃で何体も倒すなんてそれこそ上級……いえ、中級クラスの魔法じゃないと……ちょっと冒険者証を見せなさいよ」



 言われるがまま冒険者証を出すシャル。ミーナはそれをひったくるように奪うと食い入るように見ていく。



「(うそっ、スキルなし? いえ、あれだけの威力……奪い合いになりたくないなら隠すのもわかるかも……それにしても……)」



 悔しそうにシャルに冒険者証を返すとミーナは少し考え込んでしまった。



「そんなことしてる場合じゃないぞ。早く行かないとこの勝負負けるぞ」

「そ、そうだった。早く行くわよ!」



 考えることをやめてズンズンと先に進んでいくミーナに苦笑いを浮かべながらも俺たちはあとに続いた。




「それにしてもこの階層はあまり人がいないな」

「当たり前よ。この階層に生息してるゴブリンやウルフはそれほど美味しい魔物じゃないのよ。魔石を取ったとしても銅貨一枚にしかならない。一度にたくさん狩れないなら他所の階層の方にいくわよ」

「でも、いちいちダンジョンに降り直すのは大変だな……」

「そこはほらっ、一度使ったワープポイントは地上からでも使えるようになる……らしいから」



 さすがに俺たちより経験がある分詳しいな。それにしてもワープポイントか……。ダンジョン一階に床に変な模様が沢山書かれていたが、もしかしたらあれがワープポイントなのかもしれない。


 とそんなことを話していると目の前に一体のウルフが姿を現した。まだ距離はあるが嗅覚が鋭いウルフのことだ。すでに俺たちに気づいているはずだ。

 俺もこの距離で【詳細鑑定】を使用する。



『ウルフ、レベル2』

【咆哮、レベル1】



 咆哮!? 今息を大きく吸い込んでるのはもしかして!?


 それに気づいた俺は慌ててウルフ目掛けて駆け出していった。しかし、ウルフのそれには間に合わず、辺り一体に騒がしい大きな声が響き渡る。



「グルァァァァ!!」



 思わず耳に手を当ててその音が鳴り止むのを待つ。

 とその瞬間に腹部に強い衝撃を感じ、俺は後方へと吹き飛ばされた。

 今のはウルフの体当たりか?


 痛みに顔を歪めながら状況を確認する。ウルフはまだジッと俺たちを見ている。



「だ、大丈夫ですか?」



 不安な顔を見せ、回復魔法を使おうとするシャルに制止を促す。



「あぁ、大丈夫。それよりミーナ、強化を頼めるか?」

「それはいいけど、本当に大丈夫?」



 ミーナも心配してくれる。しかし、今はあのウルフの対処が先だ。【咆哮】スキル、思ったより厄介なもののようだから……。



「あぁ、大丈夫だ。頼む」

「◯◯◯△、身体強化(オールバフ)



 全身が熱を帯びたように熱くなってくる。そして、体が少し軽くなった。これなら——!


 俺は再び息を大きく吸っているウルフへと目掛けて駆けていく。

 さっきは全然間に合わなかったが、今回はウルフが吠え始める前に目の前までやってこれた。


 そして、袈裟斬りの要領で一閃する。といってもスキル持ちではない俺の一閃は綺麗に両断される……ということはなく力任せに剣を振るっただけなのだが、レベルの低いウルフにはそれで十分だったようで意識を失ったようにその場で倒れ伏せ、その姿が魔石へと変わっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ