シャルの違和感
「肝心なことを言うの忘れてました。もしよろしかったらなんですが、この孤児院を出て行く子らのために特別料金で【鑑定】を行いましょうか? こう見えて俺は【鑑定】スキルを持っておりますので」
ここにきた最初の目的をおじいさんに提案する。
するとおじいさんは少し悩む。
「してもらいたいのはやまやまなんですが、【鑑定】をしてもらえるほどの予算がないのですよ。ありがたい申し出なのですが……」
やはり問題はお金か……。
それなら鑑定としてするのではなく、俺が勝手に鑑定をして、その子にあった職を勝手に勧める……というのはどうだろうか?
俺の言うとおりにしてもいいし、しなくてもいい。勝手にしていることだから迷惑もかからないかも……。
心苦しそうな顔をしているシャルに報いるにはそれがいいかも……。
そう決めた俺は一礼をしておじいさんの部屋を出るとまずはここまで案内してくれた少年を【詳細鑑定】してみる。
【家事、レベル1】
【水魔法、レベル1】
【操魔の虜】
おや、最後のやつは見たことないな。
もしかして、この子のユニークスキルなのだろうか?
試しに最近使えるようになった場所がわかる鑑定。
このユニークスキルを持っている人が他にいるのか……それを調べてみる。
すると、この孤児院に大多数いることがわかる。
「こ、これは!?」
「どうかしましたか?」
シャルは不思議そうに俺の顔を覗き込む。
ただ、これはここで話すことは出来ないだろう。
俺は無理やり笑顔を作って「なんでもない」と言ったが、それがかえってシャルに疑問を持たれてしまった。
そして、家に戻ってくるとシャルにはみんなに集まってもらうように言付けて俺は考えをまとめることにした。
依然としてあの孤児院には【操魔の虜】のスキル持ちが沢山いる。
一般的なスキルならここまで疑問に思わないが、今まで見たこともないようなユニークスキル持ち……。
どう考えてもおかしいよな。
あの孤児院になにか起きていると考えるのが普通だろう。
問題は――。
何が起きているのか。
原因はなにか。
俺たちで解決出来ることなのか。
その三点だろう。スキル名的にもしかしたら魔族が関わっている可能性も……。
となると孤児院に出入りしている人を片っ端から鑑定すればなにかわかるかもしれないか。
すぐにできることはそれだけかな。
俺は自分の考えをまとめたあと、それをシャルたちに話してみる。
孤児院で過ごしていたシャルは信じられないかなと思ったが案外すぐに納得してくれた。
「道理で孤児院の雰囲気が違ったのですね。一体私が出てから何があったのだろう?」