勝利の宴
町に帰ってきた俺たちはまず冒険者組合へと顔を出した。
そこで倒した魔物たちの魔石を渡した。
「うそっ!? ドラゴンの魔石……ですか? まだダンジョンに入って間もないあなたたちが?」
冒険者組合の受付にいるお姉さんが口に手を当てながら驚きの視線を送ってくる。
すると、その声を聞いた周りの冒険者たちが一斉に俺たちを見る。
「おい、あいつら、ドラゴンを倒しただってよ」
「いやいや、きっと犬サイズのドラゴンの子ども——スモールドラゴンベビーとかだろ?」
「いや、あの魔石を見てみろよ。あんな大きな魔石、見たことないぞ」
周りがざわつきだす。
その声は次第に大きくなっていき、ついには俺たちは冒険者たちに囲まれてしまった。
「一体どこで倒したんだ?」
「おい、もっとよく見せてくれ!」
さすがにここまで関心されると悪い気はしない。
次第に俺たちの頬は緩んでいく。
そして、いかにしてドラゴンを倒したのかを事細かに説明していた。その説明の最中、さりげなく渡されるエールを飲みながら……。
次第にその場は宴会へと変わっていき、その主役たる俺たちには延々とエールが注がれ。
そして、程よく酔ったところで冒険者の一人が聞いてくる。
「もちろんここはドラゴンを倒した勇者様の支払いだよな? さすが勇者様、器が大きい!」
俺が言う前に支払うことが前提で話が進んでいく。まぁドラゴンの魔石のお金ももらえるしいいか。
酔いが進み、冷静な判断ができなかったのかもしれない。
「よーし、ここは俺のおごりだ! 思う存分飲んでくれ!」
普段ならこんなこと言わないだろうが、少し気が大きくなっていたのだろう。俺は高らかにそう宣言すると周りは一段と大きく歓声があがる。
そして、気がつくと俺は酔い潰れていた。
どうやら昨日は騒ぎすぎて飲みすぎたようだ。
冒険者組合の一階——酒場の場所で仰向けになって眠っていたようだった。辺りには飲み干された酒瓶や酔い潰れた冒険者たちが高いびきをかいている。
そんな彼らを押しのけて俺は眠っているシャルたちを発見する。
幸せそうな寝顔をしている。起こすのがためらわれるので、用事が終わるまで眠らせておいてあげよう。
そう思い、俺は受付の方へと歩いて行く。
「おはようございます。すみません、昨日は騒いでしまって――」
既に仕事を開始している受付のお姉さんに謝る。すると、お姉さんは微笑んでくれる。
「いえいえ、私たちも一緒におごってもらってすみません。ありがとうございます」
お姉さんは俺にお礼を言ってくる。
あれっ? おごる?
酔っていたときのことをあまり覚えていなかった俺。いつの間にかそんなことを言っていたようだ。
なんだかイヤな気がするな……。
「それで昨日のドラゴン討伐した件なんですが――」
「はい、魔石の方の代金は昨日の宴会代に当てておきました。でこれが新しくなった冒険者証です」
……どうやらドラゴンの魔石分飲んでしまったようだ。
あまりの絶望に俺は何も言えずにただ口をパクパクとさせていた。