勝負
ダンジョンは五階おきに強い魔物が生息していると言われていた。
その理由はわかっていないが、言い伝えではその強い魔物がそれより上の階の魔物を統治するためだとかなんとか……。
とにかく今回はその五階層に住む魔物を早く倒す……ということだが、ミハエル一人だと思っていた相手は、ダンジョン入り口にミハエルの仲間と思われる男たちが三人いた。
その皆が皆、ミーナの胸を見てニヤついていたが、ミハエルの話を聞き、さらにその笑みを強くしていた。
「な、なんか気持ち悪いわよ」
小さく震えていたミーナ。勝手にこの勝負を受けたんだから自業自得だ!
なんとか俺が勝った時の賞品を金品に変更できたからよかったが。
遠目ながら俺は【詳細鑑定】を使った。
まずはミハエルから……。
【白色冒険者証、レベル3】
【剣術、レベル3】
【水魔法、レベル2】
少しずつレベルが上がっているようだが、それにしては上がり方が少ない気がする。
いや、スキルならこれくらいなのだろうか?
冒険者証のほうはある一定以上の強さの魔物を倒すと上がっていく。俺やシャルが上がったのはレベルの高いゴブリンを倒したからだろう。
そして、今度は残り三人いるメンバーを右から調べていく。
まずはすらっと細身で背中に槍、鎧を着込んだニキビ顔の男だ。今はニヤニヤとミーナの胸を見ている。
【白色冒険者証、レベル3】
【槍術、レベル1】
【体力、レベル3】
まぁダンジョン内では槍の出番はあまりないよな。開けた空間ならいいけど、通路部分では突くくらいしかできない訳だし……。
次にその隣にいる小太りの大きな盾を持った男を調べる。
【白色冒険者証、レベル3】
【盾術、レベル2】
盾で守ることしかできない男……でもパーティを組むなら結構重要な役割だ。誰もやりたがらない分、一つのスキルしか持たないこの男でも成り立っているのだろう。
もちろん、ミーナを見てニヤついている。
そして、最後に残っているチャラチャラした長い金髪男を調べる。
【白色冒険者証、レベル3】
【魅力、レベル5】
【短剣術、レベル1】
【気配遮断、レベル3】
スキル数は一番多い……があまり戦闘では活かせてない感じだな。むしろ気配を消して逃げているだけに思える。
「ふふふっ、お前程度が俺たちに勝てると思うのか」
腕を組み不敵に笑うミハエル。
「……それより早く行かないか?」
冷たくいいあしらうとミハエルは憤慨したようで、「後悔しても知らないぞ!」といってダンジョン内に入っていった。
合図もなしか……と愚痴りながら俺たちも同じようにダンジョンに入っていく。
階段を一段降り、魔物が出てくる場所へとたどり着く。
ここからの作戦だが、極力シャルの魔法は抑えていく。
まず、俺が【詳細鑑定】を行う。その結果、一人で倒せそうな相手なら俺一人で対処する。
厳しそうならミーナに強化魔法を……それでも足りないようなら妨害魔法を使ってもらう。これは複数回使っても効果があるので、なるべくここまでで対処したい。
でも、それでもどうすることのできない場合はシャルに魔法を使ってもらう。おそらく五階層ではシャルの魔法の力を頼ることになるので、それまでは極力温存してもらう。
クルードフダンジョン、地下一階……そこはダンジョンに入ったばかりの新人冒険者でも相手にできるような弱い魔物が徘徊する地点。
主に存在するのはゴブリン、ウルフといった魔物だ。
そのレベルは【1〜3】が基本で稀にたくさんの人を倒した魔物はそれ以上のレベルになることもある。
しかし、基本的には俺でも相手にできる魔物ばかりのはずだ。