知らない男
どうやら俺たちが買い物に行っていた途中に来客があったようだ。
ただ、その人の名前はマグラナイド……というらしい。
初めて聞く名前だ。
まぁシャルが無難に対応してくれたし、本人の顔でも見たら思い出せるか。
そして、しばらくするとミーナも帰ってきた。
今日は実家に泊まってくるのかと思ったが、そうではないらしい。
「ハク、明日からさっそくダンジョンに向かいましょう!」
帰ってきて早々、ミーナがやる気を見せていた。
実家で何かをたきつけられたのだろうか?
「まだ休んだ方が良いんじゃないか? ここ最近ずっとダンジョン入ってただろ。みんなも疲れているだろうし……」
「私は……大丈夫ですよ?」
「ニャーも全然平気にゃ?」
「ボクは……そもそもダンジョン入ったのだって前が初めてだし」
あれっ? 思ったよりみんなやる気なのか?
ミーナはそれを聞いて嬉しそうにする。
みんな入りたいならそれでいいかもな。
そして、次の日。
俺たちはダンジョンの前にやってきていた。
今日の目標はもちろん十三階層の突破だ。
しかし、十一階層も十二階層も魔物が結構強かったはずだ。
気を引き締めないといけないな。
すぐにダンジョンの中に入らず、一呼吸おいて気持ちを落ち着かせてから中に入る。
しかし俺の緊張もどこへやら、十一階層ではニャーが一人で無双していくのをただ眺め、十二階層ではニコルが新しい武器をさっそく活用していた。
エアリアルウルフが現れると全力でボールを投げつける。
それがエアリアルウルフに当たると、ボールは勢いを殺さずにそのまま魔物を貫通していく。
それほどまでに早い球を投げつけたニコルは、平然とした顔をしながら魔力を使いボールを手元に戻していた。
そして俺は鑑定すら使うことなく十三階層までたどり着いてしまった。
あれっ? こんなに簡単だったかな?
首を傾げながら十三階層の階段手前で氷結草をかじる。
少し体が涼しくなった気がする。本当にこれで大丈夫なのだろうか?
不安になる気持ちを抑えながら十三階層を進んでいく。
ジュウジュウとなにかが焦げる音を聞きながら俺たちは進んでいく。
「あっ……」
シャルの持っていた木で出来ている杖が燃え上がる。
熱さは感じないようだが、シャルは悲しそうな声を上げていた。
しかし、肝心の十三階層自体は何事もなく下へ降りる階段を発見してすぐに降りていった。
どうやら暑い階層は十三階層だけのようで次の階にくるとそういった様子はみじんも感じられなかったので一度階段のところで休むことにした。




