実家への帰宅(ミーナ視点)
久々にこの町へ帰ってきた気がする……。
ミーナはグッと手を伸ばし、大きく伸びをする。体をピンとはって、そういった姿勢を取るととたんに視線を感じるようになる。
慌ててそちらに顔を向けると、どうも視線を送っていた人は男の人で、たまたま私を見ていただけなのだろう。すぐに視線を下に戻し、顔を赤くしていた。
気のせいか……。
少し周りを探していたミーナだが、他に誰もいなかったので気にせず自宅の方へと戻っていった。
自宅に帰ると真っ先にお父様の部屋に行くように言われる。
その言葉に従ってまっすぐにお父様の部屋へと向かう。
そして、扉を軽く二度ほどノックする。
「おう、入れ」
「ただいま」
ゆっくりと扉を開き、中へと入る。
すると目の前に椅子に座ったお父様が難しい顔をして、腕を組んでいた。
ミーナもまっすぐ進んでいき、向かい合うように椅子に座る。
「ミーナか。よく帰ってきた」
お父様がそう声を出すが、どちらかといえばまだ帰ってきてほしくなかった……。そう言った雰囲気を出していた。
「何か問題でもあったの?」
「あぁ、実は——」
お父様が語ったのは婚約者候補のことだった。
今の婚約者候補、ハクより上の冒険者レベルの人が現れた。そういうことらしい。
どんな人かと聞いてみるとどうやら冒険者レベル【7】の人らしい。最低【5】以上と決まっているから条件は満たしている。
ただ、自分のことも考えると何とか断りたかったらしいが、相手がランク上の冒険者ということもあって断るに断れなかったようだ。
それで頭を悩ましていたらしい。
ただ、今の自分としては、(なんだ、そんなことを悩んでたのか)と思えてしまう。
まぁ何も知らないお父様が悩むのは仕方ないか。
そう思ったミーナは自分の冒険者証を見せる。
冒険者レベル【8】
【名前】 ミーナ・ラーノルド
【年齢】 17
【性別】 女
【使用武器】 杖
【所持スキル】 魔法
「冒険者レベル【8】? この短期間で?」
「えぇ、少し強い魔物を討伐しまして、飛び級で上がったのよ」
「つまり、ハクトールも?」
「私と同じよ」
「そっか……、私の心配はただの杞憂だったのだな。それにしても冒険者レベル【8】か……。そろそろこの町のダンジョンは攻略しそうだな。私の時だから信ぴょう性に欠けるが、この町のダンジョンの踏破目安が冒険者レベル【9】だからな」
まぁ実際にダンジョンを踏破して得たレベルじゃないから、まだ時間はかかるだろうけど、あのメンバーならきっと——。
もし冒険者レベル【9】までいけば、ハクとの婚約も決定的なものになるだろう。
そう考えるとミーナの顔に自然と笑みがこぼれる。