新たな仲間
一晩休み、翌朝。
既にグランは旅に出たらしい。そのことはニコルから聞いた。
どうやら俺以上のパーティを作ると張り切って出て行ったらしい、それも朝早く。
おかげでニコルは寝不足らしく、たまにあくびを堪えていた。
それとは別にニコルから「俺のパーティに加えて欲しい」と頼まれた。
おそらく昨日グランが話して置いたのだろう。
俺は二つ返事で了承しておいたが、どうしてグランと一緒のパーティじゃないのかを聞いてみた。
「だって……、お兄ちゃんと一緒だと冒険者って感じがしないじゃない」
結構ドライなところがあるんだな……。
まぁ口ではこう言っているだけで本心は別のところにあるのかもしれない。
その辺りは俺にはわからない。ただ、ニコルが俺たちのパーティに加わりたいと言うことがわかればそれで十分だった。となるとまずすることがあるな。
ニコルは冒険者証を持っていないのでまずは冒険者組合へと向かおう。
冒険者組合の扉を開くと少し話し声が聞こえていたのが急に静かになる。
そして、ノービスさんが走って俺たちのほうへと駆け寄ってくる。
「おい、ハクトール。この魔石、本当に魔族のものだったぞ! 助かった!」
俺の手を掴み、何度も何度も上下に振ってくる。
「えぇ、そうですよ。それで今日はこの子の冒険者証を――」
自分の要件を言おうとするがそれはノービスさんに遮られる。
「それでお前たちの冒険者レベルを上げようと思うんだ。冒険者証を貸してくれるか?」
話を遮られたのも仕方ないか。魔族を倒した成果のことだしな。
俺たちは冒険者証をノービスさんに渡す。
「おい、そこの君も冒険者証を……」
ノービスさんがニコルにも言ってくる。
「あっ、そうだ。ノービスさん、ニコルはまだ冒険者証を持っていないのですよ。今日はそれを作りに来たんですよ」
「持っていない? でも昨日この子もいたよな?」
「はい、もちろん魔族の戦いにもいましたし、むしろトドメを刺したのがニコルですよ」
それを聞いたノービスさんが興味深そうにニコルを覗き込む。
シャルが同じようなことをされると照れて顔を背けるだろうけど、ニコルの場合は笑顔をノービスさんに向けていた。
ただ、その顔は『なんで見られているの?』と訴えかけてきているようだった。
「とても信じられないが、ハクトールがそう言うなら間違いないんだろうな。それなら冒険者証の登録も一緒にしておく。こっちに来て記載事項を書いていってくれ」
「わかったよ」
ニコルがノービスさんに連れられて冒険者組合の受付へと向かっていった。
その間に俺たちは二階の鑑定所へと足を運ぶ。
ここもエミリがもう慣れたもので一人でも余裕で回していた。
「あっ、ハクさん。今日は鑑定のお仕事をされていくのですか?」
嬉しそうに聞いてくる。しかし、俺にはもうこの村にとどまる理由もないんだよな。当初の目的も果たしたし、ここのダンジョンで取れる特産のエビナフの実も大量に手に入ったし……。
一旦メルカリの町に帰っても良いかもしれないな。
そう決めた俺はエミリに言う。
「いや、俺たちは一度町の方に戻るからこの鑑定所はエミリが仕切ってくれ」
「えっ!?」
エミリが驚きの声を上げる。