武器屋
翌朝、俺たちは町中にある武器屋へとやってきた。俺は剣と鎧を持っているので不要だが、シャルはゴブリンが落とした棍棒しか持っていなかった。
そして、今日もミーナが付いてきていた。彼女が言うには「あなたたち、まだレベル【2】でしょ。レベル【3】の私が付いて行ってあげるわよ。喜びなさい」と言っていた。
ただ、昨日一日いてなんとなく彼女のことがわかった俺には「わ、私も一緒に連れて行って……。お願い……」と頼まれてるように思えたから不思議だ。
シャルも特に否定しなかったし、断る理由もないので一緒に行くことにした。
彼女に関しても装備は問題ないだろう。
昨日は持っていなかったが、今日は高そうな宝石のついた杖を持ち、高そうなローブに身を包んでいた。
シャルの服もミーナのお下がりだと言って、それなりに高そうなローブだった。
「どんな杖を買いましょうか?」
武器屋に入ると嬉しそうに杖を見て回るシャル。しかし、値段を見て驚いていた。
「こ、これ銀貨がいるの!? と、とても買えないですよ!」
「いや、俺も出すから好きなものを見るといいぞ」
このパーティで一番の戦力はシャルだ! なら彼女の装備に値段をかけるべきだろう。
いざとなったら昨日拾ったミーナのパーティだった人らの装備を売ればそれなりのお金はできるだろう。
「い、いいのですか?」
不安げに聞いてくる。
「あぁ、俺たちのパーティに関わることでもあるからな」
と言いながら値段を見ておく。ここにあるものならなんとか買えそうだな。
そこは安心した。そして、シャルが見ている間に【詳細鑑定】で物を調べてみる。
『ミルミルの木の杖』
【攻撃力上昇、極小】
いたって普通の打撲武器……あれっ?
杖って一応魔力が強化されるはずなのに……。
不思議に思って他のものも【詳細鑑定】していく。すると全てについていないとかそういったことはなく、ついてるものもついてないもの、まちまちだった。
何かつくための条件があるのだろうな。
まぁ今回はシャルが選ぶものにちゃんと【魔力強化】がついているのかだけ注視しておく。
シャルが気に入った杖は普通に【魔力強化】スキルがついていたのでホッとした。
それを購入すると俺たちはダンジョンへと向かっていく。
「おや、誰かと思えば能無しのハクじゃないか。まだ生きてたのか」
歩いているといきなり声をかけられる。そこにいたのは俺と同時期に成年の儀を受けた……確か名前はミハエルといっていたな。
彼のスキルは必要な戦闘スキルがバランスよく備わっていて、鑑定所で調べた時には歓声が上がっていた。
「ハクさん、お知り合いですか?」
「いや、人違いだ」
あまりいい思い出もないので無視して行こうとするが、ミハエルが道を塞ぐように立ちふさがる。
「いったい何の用だ!?」
「いや、能無しのお前がパーティを組んでダンジョンに潜ろうとしていたからな。そんな危険にお嬢様を行かせるわけにはいかないと」
ミハエルは仰々しい態度でミーナに向けて言う。その視線はとあるふくらみの部分に注がれていた。
もしかしたら知り合いなのかとミーナに視線を送るが、彼女は首をかしげる。
どうやら知り合いではなく、単なる一目惚れなのだろう。
「用はそれだけか? それじゃあ行くぞ!」
俺は再びミハエルを無視して進もうとする。しかし、ミハエルが俺の腕を掴んでくる。
「まだ話は終わってない! 能無しのお前に彼女を任せられるか! 俺と勝負しろ!」
俺にそれを受ける義理はないので無視をして先に進む。
「ふん、能無しのハクは意気地もないのか……」
俺を嘲笑するミハエルについ声を荒げて反論する……ミーナ。
「あなたなんかにハクが負ける訳ないでしょ! いいわ、勝負してあげる!」
「なら勝負内容は先に五階層に住むオークを倒すと言うのでどうだ? 勝ったものがあなたとパーティを組む」
「いいわよ」
勝手に話を進めるミーナ。
おいおい、その条件だと俺にメリットがないだろ!