小さな少女(FAあり)
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「私を、私をダンジョンに連れて行ってくれませんか?」
とあるダンジョンに向かう途中、俺が出会ったのは小さな少女であった。
金色の肩ほどの髪を大きめなボロボロのローブについたフードで隠した少女。様々な人に声をかけていたが背丈が低く、年齢がおそらく十歳前後である少女を連れて行こうとするものはいなかった。
「誰か、誰か私を……」
涙目でダンジョンに向かうパーティに声をかけていく少女。しかし、人によっては嘲笑の目を。人によっては聞こえない風を装ったり。人によってはツバを吐きつけたり。
当然だ。ダンジョン内では何が起きるかわからない。そんな中に足手まといの少女を連れて行って自分の命を危険にさらすものなんてどこにいるだろうか?
「お兄さん、私も一緒に連れて行って……」
そして俺の前までやってきた少女は涙目を浮かべながら頼んでくる。どうしてそこまでするのか、疑問に思った俺はそのことを少女に聞いてみた。
「どうしてダンジョンに入りたいの?」
あやすように頭を撫でながら聞いてみる。
「わ、私もダンジョンに入って、お金を……」
よくよく見ると少女の服は本当にボロボロで奴隷だと言われてもおかしくはなかった。貧富の差がはっきりとしているこの世界では、ダンジョン前に貧しい子どもがおこぼれにあずかろうと待っていることが多々あった。
それに、俺には少女が奴隷でないことがわかっていた。
ということはいつ奴隷落ちしてもおかしくないほど貧窮に襲われているのだろう。
彼女が奴隷でないことがわかった理由。
【詳細鑑定】スキル
これが俺に宿っているスキルだった。
スキルとは生まれ持っている己の才能で、人それぞれについているスキルの種類、個数はバラバラだった。
そして、十五歳の成年時に成年の儀として、鑑定所に行って調べてもらう。これが普通の人の慣わしだった。
一流の冒険者を夢見ていた当時の俺はスキル鑑定にワクワクして、その結果に絶望した。
でも、有用なスキルがないものでも努力次第で第一線とは言わないまでも、そこそこの冒険者になっているものもいる。諦めるにはまだ早いとようやく最近になって吹っ切れた。
もちろん数少ない鑑定スキル持ち——。鑑定所の職には困らなかった。しかし、俺のスキルは他人の鑑定スキルとはどうも違うみたいでより詳細にスキルがわかるらしかった。
具体的に言えば魔法スキル持ちが他の人の鑑定では【魔法スキル】としか見えないものが、俺には【火魔法スキル、レベル1】と言ったくらい詳細にわかっていた。
このレベルというのは魔法の熟練度らしい。鑑定の儀に来る人たちは【レベル1】のものがほとんどで、それなりに魔法を使ってきたものは【レベル5】とか最高で【レベル20】というものも見たことがある。
しかし、それが冒険者になるために役に立つかと言えば疑問符がつく。それでも一攫千金が夢見れる冒険者、諦めるには惜しかった。鑑定スキルがある以上、いつでも鑑定所の職につける。それなら、一度は夢である冒険者になってみようと剣と鎧を揃え、冒険者組合の門を叩いた。
そして、白色で【レベル1】と書かれた冒険者証を受け取ると意気揚々とダンジョン前までやってきたのだ。
そこで出会った誰にも相手にされない少女。年齢的にもまだ成人の儀を済ませていないのだろうな。
もちろん成人の儀を経ていなくてもスキルを持っているものもいる。しかし、所持してる全てのスキルが出るのがだいたい成人の儀の頃までと言われている。
もちろん後天的に得られることもあるので、調べたい場合は鑑定所に行けば調べられるが、それなりの値段がかかることを考慮すると貴族と呼ばれるような偉い人以外二回も三回も調べるような人はいなかった。
俺の【詳細鑑定】スキルを見る限り、すでに成年の儀を経ている彼女なら誰も手放さないだろう。
【白色冒険者証、レベル1】
【聖魔法、レベル1】
【火魔法、レベル1】
【魔法威力強化、10倍】
こと魔法に関して言えば彼女の右に出るものはいないだろう。それが鑑定をした俺の感想だった。しかも、これでまだ発展途上……。末恐ろしい才能だ。
しかも白色冒険者証を持っているということはこの少女、年齢は十五歳以上ということだ。
それ以上でないと冒険者証はもらえないからだ。
ということは彼女が貧しくて成人の儀を受けられなかったのだろう。
成人の儀は値段はそこまで高くないとはいえ、お金のかかるものなので、貧乏な子は受けられないこともあった。
有能なスキル持ちの彼女がパーティに入れてくれと言っているのだ。本来なら相手にされないであろう、戦闘スキルを持たない俺は彼女のその言葉に思わず頷いていた。