セーターと海
蠍座の黒猫さんの企画「詩のサークル第二回」テーマ: 音楽、参加作品です。
緑のセーターで
真夏の海に来た
皆が堤防を走る
僕も遅れて走る
そのまま海に飛び込む
続いて飛び込んだ
海水を吸う羊毛が
体にまとわりつく
……忘れてた
足がつかない
から沈む
何とか浮かぼうとして
人に掴まった
ブイに掴まる先輩だ
笑顔の髭面
必死の俺も余裕ぶって
笑おうとして
……海水を飲んだ
その温度が
あの夏の僕の
命の温もり
緑の海に
太陽の反射
*****
発想元の歌手と曲 : 真心ブラザーズ「うみ」
若かりし頃の私は、最底辺のダメ人間でした。どれくらいかダメかというと、真夏に着る服がなくて、全裸で家に引きこもっていたくらいに。
着る物を洗濯して、それを干すという行為、それすらも出来ないほどの無気力で、濡れた洗濯物を洗濯機に数日放置(二層式で脱水すらしていない状態)、腐らせてしまうのです。それも一回では無く、何度も。
着る物が無い日は多々ありました。電気もガスも止められて(開いてる時間に郵便局に行く事すらできないのです、故に貯金はあるのに金が無い。引き落としの手続きなど到底できませんでした)ローソクで焼いたロウ臭いポーク缶詰を食べながらラジオを聴く深夜、筋肉少女帯の「踊るダメ人間」が聞こえてきたときは、泣きたい気持ちで笑いました。
そんな中、引きこもりの私を連れ出してくれたのが先輩でした。その日も友達と「海に行こうぜ」と誘ったくれたのです。でも着る服がないので、真冬に着るセーターを裸の上に着て、海にドライブに行きました。そのまま海にダイブ、まあ溺れかけますわな。死にはしなかったけど。
そんな先輩が東京に引っ越す時に、もらったシングルCDが真心ブラザーズの「うみ」でした。
これを聴くと、先輩の「お前は面白いよ」という言葉が思い出されます。
あれがあったから生きて来られた。人とも喋れたし、変な部分に自信を持てた。皆から特別だと言われなくとも、先輩は認めてくれた。その記憶はいまだに心の支えかもしれません。
前髪だけモヒカンや、弁髪だけのこし全剃りとか、前だけ剃りモヒカンとか、マザーカッター先輩の施す前衛髪型の当時の私、遊ばれていたのかも知れませんが、遊んでくれた記憶はとても暖かいです。