エグゼクティブ。
私はリョウタと東京にいた。
リョウタはBEAT誌の撮影である。BEAT誌のインディーズバンドのページで、Avid crownとRSKを兼用しているリョウタを取材したいと奈緒美ちゃんから申し出があった。
私はtracks Japanの江口さんと打ち合わせがあった。
私は江口さんと、オフィスビルを出てタクシーを捕まえようとしていたところ
「京子じゃないっ。なんで、ここにいるの?」
それはキャネラーの同級生のミドリだった。相変わらず、全身キャネルだった。
「仕事で東京に来たの」
驚いていたミドリに私は言った。
「先生、タクシー捕まりましたので早く行きましょう。先方が待っているので」
私はミドリと話してると、江口さんに急かされた。
「ごめん。ミドリ、またね」
ミドリには話を途中にして、申し訳なかったが私はタクシーに乗り込んだ。
「先生って?なんの先生?」
ミドリは不思議に思って、私が出てきたオフィスビルを見上げていた。
「tracks Japan。レコード会社?」
その頃、リョウタはスタジオで写真撮影をしていた。
「リョウタさん、いいじゃないー。カッコいいー」
奈緒美ちゃんがリョウタを誉めちぎっていた。
「素材がいいね。インディーズの割には撮影なれてますよね。
リョウタを撮ってるカメラマンが、奈緒美ちゃんに言った。
「地元ではコマーシャルでたり、ポスターになったりしてるみたいだから」
「結婚してるらしいけど、色気ありますね」
カメラマンが、言った。
「奥さんは私の大学時代のライブ仲間で、リョウタさんのバンドの事務所の社長よ」
「京子っー」
撮影が終わったリョウタが、待ち合わせ場所で私を見つけると、嬉しそうに手をふった。
「リョウタ、髪お洒落」
私はリョウタの髪型を見て言った。
「ヘアメイクさんに、やってもらった」
リョウタは、いっそう若く見えた。
「久しぶりに、二人でデートしてこう」
リョウタは、お台場に行こうと言った。
「でも恭ちゃんが待ってる」
リョウタとデートしたい気持ちはあったが、家で両親とお留守番をしている恭ちゃんを思うと、早く帰ってやりたい。
「ちょっとだけ行こう。そのかわり恭にお土産たくさん買ってかえろう」
お台場に行って買い物して、あの有名なテレビ局にも行った。
そしてリョウタとお洒落なレストランで食事をした。
スーツを着ている私と、スタイリッシュな雰囲気のリョウタが周りから見たら、どう見られてるだろう。
やはり社長とモデル。マネジャーとバンドマン。それとも東京で、久しぶりに会った姉と弟か。
まあ夫婦と思う人は、あまりいないだろう。
「仕事のときのバッグ、良いの買おうかな。同級生のキャネラーじゃないけど、やはり仕事のときはキチッとしたバッグと靴の方が、印象良いよね」
さすがにOL時代に買ったブランドのバッグも10年使っている。
「オレ買ってやろうか。なんのブランドのバッグがいい?」
リョウタが言った。
「いいー。自分で買う。長く使いたいから高いの買いたいから」
リョウタに買ってもらったら、悪くて値段気にして好きなのを買えない。
「なんでー。遠慮するなよ。たまには、いいよ。それに、京子が仕事で、他の男と会ってるときオレが買ったバッグを持ってれば他の男に目移りしないだろう」
「目移りなんて、しないよー」
こうして、リョウタに、ブランドのバッグを買ってもらった。
高くて気にしちゃうけど、好きな人に高いバッグを買ってもらうのって嬉しい。
キャネラーのミドリも、いつも、こういう気持ちだったのかな。
「リョウタ、ありがとう。このバッグ大切に、ずっと使うね」
リョウタと家に帰ると、恭ちゃんが待っていた。
「ママー。遅いよー」
「ごめんね。お土産、いっぱい買ってきたから」
私は恭ちゃんを抱きしめた。
その頃、ミドリから花江にメールが着ていた。
「京子と、東京で会ったわよ。すごい高いオフィスビルから、出てきて部下みたいな人に、先生と呼ばれてた。京子、スーツ着て決めてたし。京子って、なんの仕事してるの?」
さすがに、ミドリは、さぐりを入れてきた。
「たまたま仕事で、東京行っただけでしょう。事務所やってるんだから、あちこちに宣伝してるんじゃないの」
花江は、しらばっくれてたようだ。
私はtracks Japanのエグゼクティブアドバイザーに就任した。(非常勤)




