キャネラーが、現れる。
東京で結婚して暮らしている中学の同級生、綾小路みどり(旧姓、佐藤)が実家で、ご法事があるらしく帰省するらしい。
ミドリが久しぶりに帰ってくると言うことで、中学の女子何人かで飲み会をしようということになったのである。
幹事は花江で、日曜日やることになった。
居酒屋の座敷に集まった。
いつもの女子会のメンバーと、あとミドリと仲良かった女子、あとは、あの童顔の佑実も最近引っ越してきて、参加したいみたいなので誘ったらしい。
「みどり、遅いわね」
「法事で親戚も来てるだろうし、出てきづらいのかしら」
主役が来ないのでは、乾杯もしづらい。
「お待たせー。みんな、久しぶりっー」
襖を開けて登場したミドリに、全員ぼーぜんとした。
それはそれは中学のみどりとは、別人のようなミドリがいた。
上から下まで、全身高級ブランドのミドリだった。
建設業を経営する社長さんと結婚したとは聞いていたが、金持ちオーラが、すごかった。
「ミドリ、羽振り良さそうね」
花江がミドリに言った。
「まあね。旦那が小さいながらも会社を経営してるから、贅沢させてもらってる。これ、キャネルの新作」
そう言ってミドリは、キャネルのバッグを私達に見せた。
ミドリのしてる時計もキャネルで、素敵だった。
やっぱり東京に住んでる人は違うな。全身ブランドなんて当たり前なのだろう。
「あら佑実。その服、もしかして、モリムラ?佑実は、モリムラーなのね。オホホホー」
ミドリは童顔自慢の佑実に皮肉なのか言った。佑実は、童顔だからモリムラの安い若い服で、沢山買っているのだろう。
「法事に、キャネルのイヤリングしたら、親に怒られちゃって。ちょっと派手かしら?田舎もんの親には、価値が分からないからね。オホホホー」
おまえは女王様かと、突っ込みたい。
ゴホッ、ゴホッ。
ミドリの隣に座っていた和津が咳き込んだ。
どうやらミドリの香水のすごさに咳き込んだらしい。
私もシャネルの香水の匂いは好きなのだが、ミドリは全身に香水を撒き散らしたみたいだ。
料理の味もしないくらいミドリの香水の匂いが、座敷中に充満していた。私にも匂いが染み付きそうな勢いだ。
これじゃあ、リョウタに香水の匂いがすると、怪しまれそうだ。
「京子、そうえば社長やってるんだって?すごいじゃない。経営者なんてさ。京子は、昔から頭良かったしね。経営って大変だと思うけど、やりがいがあると思うの。まあ、うちは東京で経営してるから、田舎でやってるのとは、ちょっと訳が違うけどね」
会社やってるのは、おまえの旦那だろーが。
「花江のそのバッグは、どこのブランド?見たことないブランドね」
花江のバッグを見て、ミドリは言い出した。
「地元のショッピングモールで、買ったバッグよ。ブランドなんてないわよ。3000円。うちの旦那は稼ぎ悪いから」
「3000えーんっ。バッグって、そんなに安く買えるもんなのー。ある意味。そんな安いバッグを見つけた花江は凄い。さすが、やりくり主婦。掘り出し物を見つけるのが得意なのねー。オホホホー」
ここまで来ると見下してるのか、天然なのか、分からなくなってきた。
でもミドリも、中学の時は田舎で安いバッグを買っていたと思うが。
そんなことは忘れてしまったのだろうか。
「京子、そのネックレスはティパターじゃない?ハートは、可愛いけど若者で手頃な値段よね。京子も若いわよね。ハートなんて。」
「これは旦那が、クリスマスにプレゼントしてくれたものだから」
リョウタがプレゼントしてくれたハートだ。
「えーっ。旦那さんのプレゼントでハートなの?!旦那さん、ひどいわね。あっ。京子の旦那さんって年下なんだっけ?だったら仕方ないかー。私なんて10歳も年上の旦那だから、高いものばかりプレゼントしてくれるのよ。この間の誕生日には車をプレゼントしてもらったわ。もちろん、外車。クリスマスには600万円のダイヤの指輪。ほんと高価なプレゼントばかりで困るわー。オホホホー」
さすがに周りは、ミドリの高飛車さに呆れてきてるようだった。
こんな田舎で一緒に過ごした同級生が、変わり果てた姿で、やってきて田舎に住んでる、ブランドの店などない田舎で買い物は地元のショッピングモールで、それでも楽しいと思ってる私達を見下すようになった同級生。
それはそれで、寂しい。
でも大人になるって、こういうことなんだ。
少女の時代を忘れ、安いもので感動もしなくなり、価値は値段で決めるようになる。
高価なプレゼントを愛だと思い、そこで愛を査定する。
「でも旦那がくれたものだからハート嬉しい。私の旦那は10歳も年下だから、高価なものを私にプレゼントしてくれたら恐縮しちゃう。だって旦那が一生懸命働いたから、私のものに高いものを買うんじゃなくて、自分のものに使ってほしい。私は自分で働いて、自分のものは自分で買えるから」
花江は目がうるうるしてた。
「そうね。京子は社長だもの、自分で買えるよね。その方が頑張って働いた証になるよね。男にブランドを買ってもらうばかりが名誉じゃないよね。私達も40過ぎたんだし、いい加減、旦那の稼ぎをあてにしないで自分で買わないとね。」
和津が言った。
ミドリは、さすがにバツが悪そうだった。
「京子は、リョウタくんという最高のブランドの旦那を貰ったのよ」
花江が泣きながら言った。




