ダーリン。
恭ちゃんが寝てからソファで、くつろいでると
「京子、また白髪増えたな」
リョウタが私の髪を触って言った。
「もう、おしゃれ染めじゃなくて白髪染めしないといけないかな。明日ライブあるのに、染めにいくひまがないー」
「オレ染めてやるよ。若いとき自分で染めてから、けっこう上手いよ」
ということで、リョウタが染めてくれることになった。
私の髪を染めながら、リョウタは言った。
「働きすぎなんじゃないの」
「違うよ。そういう白髪がでる年齢にきたのよ」
1本でも白髪が増える度に、リョウタとの年の差を思い知らさせる。
「オレが、京子の白髪増やしちゃったかな」
リョウタは、私の髪を触りながら、感じたように言った。
「そんなことないよ」
ほんとに、そんなことない。
もしリョウタじゃなくて、他の男の人と結婚してたら、私は無気力だったかもしれない。
張り合いもなく、ただ一日を過ごす。
お弁当も義務的に作って、仕方なく洗濯して献立も考えるのも面倒くさいくらい料理も億劫だっかもしれない。
そして忘れられない年下の元カレを思い出して、その旦那と比べてみたり。なんで結婚したのだろうと思っていたかもしれない。
だからリョウタ以外の男の人と結婚してたら、今の私は、もっと老け込んでたのかもしれない。
「もっと地位も名誉も金もある男と結婚したほうが、京子は幸せだったのかもな」
私の白髪が増えたことで、リョウタを心配にさせる。
「なんで?私は、他の人だったら結婚するつもりなかったよ」
いつも、そばにいるのが当たり前になって離れるのは、あまりにも寂しすぎる。
あのときリョウタが、私の実家についてこなくて都会にいたままだったら。
でもリョウタとは縁が切れることは、なかっただろう。
あまりにもリョウタは私の中に浸透過ぎて、家族のように心配するのも、当たり前で幸せを願うのも当たり前になっていたから。
「できた。あとは20分くらい。待ってれば白髪消えてるよ」
リョウタは、私の髪を染め上げた。
髪を洗って、乾かしたら白髪は消えていた。
「若くなったじゃん」
リョウタは、私を見て言った。
明日は、市民ホールで、ライブだ。
関係者席には、tracks Japanの江口さん。秋元さん。
BEAT誌の奈緒美ちゃん。
タウン情報誌の慶子。
テレビ局の理恵。
ライブハウスのオーナー、沢木さん。
そして、Terezishon。
「京子が、オレを惚れ直すライブをしてやるから」
私を何度、惚れ直させるつもりなの。




