削除。
土曜日のディナータイムに、同級生の三塚くんが家族連れできた。三塚くんは市の実行委員をやっており、イベントにリョウタのバンドを呼んでくれたりした。
「京子。ちょっと。」
三塚くんが、キッチンにいた私を呼んだ。
「圭介に、京子のLINE聞かれてさ。すごい用があるみたいで、どうしても教えて欲しいというから教えたぞ。」
えっー。あの圭介にLINEを教えたのっ。そんなの困る。
「なんで、教えたの。私、別に圭介くんに用がないから、困る」
私は顔をしかめて、三塚くんに言った。
「ごめん。すごい用があるみたいだから。あと京子が都会にいた時に、会ったことあるみたいで連絡取り合ってたみたいなこと言うからさ。」
「それは嘘だよ。私、圭介くんと偶然1回会っただけだよ。連絡なんて、とってない」
圭介、何かたくらんでるんだろうか。圭介も結婚してるんだから、どうしようって言うんだろう。
「ごめん。京子。京子が、そんなに圭介を嫌がるとも思わなかったし。おまえら中学ん時、けっこう仲良かっただろ」
確かに初恋の人ではあるが、でも、あのことあってから、会いたくない。
「どうしたんですか。三塚さん」
リョウタが私が困ってるのを気づいて、話してるところに来た。
「り、リョウタくん」
三塚くんが、びくついてた。
「いやね。同級生の男子に京子のメアド教えてと言われて、教えてしまったからさ。いちおう京子に言っておこうと思って」
「だれですか。その同級生って、男は」
リョウタは、三塚くんに突っ込んで聞いた。
「中学んとき、京子を好きだった男子」
三塚くん、余計なこと言わないでー。
「はあ?そんな奴に教えないで下さいよ」
リョウタは、ちょっとムッとしたようだ。
「着たら嫌ならブロックすりゃいいさー」
三塚くんは圭介と仲良かったから、圭介を信用してるみたいだ。
私がお風呂に行ってる間にメールが来たので、リョウタが見た。
『高槁圭介です。京子、会いたい。ずっと京子に謝らなきゃと思ってた。だから、会って謝りたい』
リョウタが私に来たメールを見て、意味ありげだなと思っていた。
『京子にメールよこすな。オレの妻にメールをよこすなんて許さない。京子にも会わせない。二度とメールよこすな。』
リョウタは、勝手にメール返信して、圭介をブロックしてしまった。
これが圭介をいっそう燃え上がらせたのかもしれない。
「京子、例の三塚さんがメアド教えた男から、メール来てたから返信してブロックしといたから。なに言われても、絶対会うなよ」
リョウタが、お風呂から上がって来た私に言った。
「うん。ありがと」
リョウタが返信したのなら、二度とメールよこさないだろう。
日曜日。
家の前を知らない白い車が、何度も通っていた。
道を迷っているのだろうか。
家の固定電話に、何度も無言電話があった。
「私が出るから、切れるのかしら」
母親が電話を出て言った。
「今度来たら、リョウタくん出てみて」
母親が、男が出るとかかってこないかもしれないから、リョウタに言った。
しばらくして、また電話があったのでリョウタが電話にでた。
「誰だっ。おまえはっ。イタズラ電話よこすなっー」
リョウタは、電話に怒鳴った。
そうすると固定電話には、無言電話は来なくなった。
イタズラ電話も来なくなったので、私は恭ちゃんと買い物に出掛けた。
「あれ?お義母さん。京子は?」
「恭ちゃんと歩いて買い物に言ったわよ」
「歩いて?オレ、見てくる」
私と恭ちゃんの後を、ずっと白い車がつけてきた。
気持ち悪い。近くのスーパーだから散歩がてら、歩いてきたが車で来るんだった。リョウタ、呼ぼうかな。
携帯を見ようと、立ち止まったら白い車から男が降りてきた。
「京子。久しぶり。オレ、どうしても京子に謝りたくて」
それは高槁圭介だった。都会にいた時に、偶然、圭介と会ったとき飲みに誘われて、ホテルに連れ込まれそうになった。
私は恭ちゃんの手を握り、足早に圭介を無視して、去ろうとした。
「京子。待てよ。京子の載ったタウン情報誌も、料理本も見たよ。京子、相変わらず綺麗でさ。うちの妻なんて、京子より若いのに子供産んだら、太って、ひどいもんだよ。京子は、ずっと綺麗だー」
そう言って圭介は、私の手を掴んだ。
「離してっ」
私は圭介の手を振り払おうとしても、圭介の力は強かった。
「ママを離してー。ママに触るなっ」
恭ちゃんは、圭介を一生懸命叩いた。
「ボク。おれはママの友達なんだよ。怖くないよー」
圭介は恭ちゃんに言ったが、聞いていなく恭ちゃんは、足で圭介を蹴り始めた。
「おじちゃんは、あっち行けー」
「なに、やってんだっ」
リョウタが圭介の腕を掴んだ。
「警察。呼ぶぞ」
リョウタは、圭介を押さえて言った。
「違います。誤解です。オレは京子さんの同級生で、京子さんに話したいことがあっただけです」
圭介は、焦って言い訳をした。
「もしかして、おまえ、昨夜、京子にメールよこした奴か」
リョウタが圭介に詰め寄った。
「誤解です。誤解です」
圭介は、逃げようとしたが、離さなかった。
「三塚さん。来てくれませんか。高槁圭介って奴が、京子に、ストーカーまがいのことしてますよ。」
リョウタはスマホで、三塚くんを電話で、呼び出した。
三塚くんは、すぐ来た。
「圭介、どういうこと?」
三塚くんは、仲の良かった圭介が、こういうことをするのが信じられなかったみたいだ。
「うちにイタズラ電話よこしたのも、こいつですよ。車で、朝から、うちの家のまわりをうろついてました。そして、京子と息子のあとをつけてました。」
リョウタは、三塚くんに説明した。
「オレ、京子のこと再会してから忘れられなくて。妻は、太って、子供優先になって、オレを粗末な扱いになるし。でも京子は綺麗なままで、だから京子に会いたくなった。でもメールブロックされてるから、嫌われてると思ったけど、いっそう会いたくなった」
圭介は言った。
「だからといって。京子は結婚してるんだぞ。お前だって、奥さんと子供いるんだろ。なら分かるだろ。なにやってんだよ。圭介、しっかりしろよっ」
三塚くんは、圭介に言った。
結婚して、若い奥さんが子供を産んで、態度が変わり、こんなはずじゃなかったと思ったのだろう。
私を思い出して、私に会いに来られても迷惑だ。
「はっ?ラブホテルに連れ込まれそうになった?なんで、それをその時に、オレに言わないんだよ」
私は都会にいた時に、圭介に、ホテルに連れ込まれそうになったことをリョウタに言った。
「リョウタ。心配すると思ったから黙ってた。ごめん」
「そんとき締めときゃ、良かったな」
中学の時の圭介は爽やかで、そんな欲求不満おじさんに、なるとは思っていなかった。
「恭ちゃん。ママを守ってくれて、ありがとう」
私は、恭ちゃんを抱き締めた。
でも、改めて初恋が圭介だったなんて、削除したい思い出だ。
月曜日、三塚くんが仕事帰りに、また店に来た。
カウンター座り、三塚くんは昨日、圭介と、ちゃんと話したことを言った。
「男ってさ。現実離れしたいとき、昔、好きだった女子のこと思い出すもんだよ。そんなとき京子が、雑誌に載ったのを見て綺麗ままだから、会いたくなったらしい。圭介の場合、抑えられなかったんだろう。オレはリョウタくんにも、イベントで世話になってるし。厳しく圭介に注意したから。もう二度と来ないだろう。オレが圭介を信用して、京子のメールを圭介に教えてたから、京子に迷惑かけることになってしまって、申し訳ない。」
三塚くんは、私に謝った。
仲のよい圭介を疑いたくない三塚くんの気持ちもわかる。
でも男の同級生と、女の同級生では違う対応なのかもしれない。
でも圭介の私に会いたかったとは、言い訳だ。
ただ中学のときを思い出だして、現実逃避にちがいない。
大人になった今の自分に、嫌気がさしたのだろう。
でも中学には、戻れない。
家に帰ってから、私はリョウタに謝った。
「心配させて、ごめんね」
「京子、オレのそばを離れるな」
そう言って、リョウタは、私を抱き寄せた。




