再会。
「大学の同級生の披露宴に出ることにした」
大学の同級生で、同じサークルだった理恵と、柚木くんが結婚することになった。二年前に再会して、付き合っていたのである。
「えっ。大学の同級生?男もくるのか」
リョウタは、顔をしかめて言った。
「うん。新郎も同級生だから、来ると思う」
「なら、行くことないだろ。欠席しろよ」
またリョウタの過剰な心配が始まった。
「でも、理恵が41歳で結婚するから、お祝いしたい。出席したい」
都会にいた時に、お互い独身だったので、メールで、愚痴りあっていた。理恵は、ローカルテレビ局の構成をしていた。お互い時間が合わず、あまり会えなかったが、披露宴に呼んでもらったので、出席したい。
「わかった。じゃあ、オレも行く」
リョウタは、ついてくる気なのか?!
「じゃあ、マンションで待ってて。それで、いいでしょう」
式場まで来られるのは、同級生多いだろうし、ちょっとね。
はあ。リョウタの嫉妬深さにも困ったものだ。
ということで、日曜日に、リョウタと恭ちゃんと、都会に行った。
朝早くマンションについて、私は、披露宴に出席する準備をした。
「お昼は、お弁当作ってきたから、二人で食べてね」
私は、着替えながら、リョウタに言った。
「二次会に出るなよ。すぐ帰ってこいよ」
「わかってる」
普通、同級生に久しぶりに会うんだから、ゆっくりしてこいよ。とか言うんだよね。大人の旦那さんだったら。
「大学って、まさか、マサトさん来ないだろうな?」
リョウタは、心配そうに言った。
マサトとは、私の大学の時の元カレで、先輩である。そして、メジャーで地道に活動してるspeck crewのリーダーで、ギタリストである。前に、リョウタのバンドが、speck crewのオープニングアクトをしたのだ。
「どうだろ。先輩だし、わかんないや」
マサトは、新郎の柚木くんとは、仲が良かった。
「誘われても絶対行くなよ。絶対だぞっ」
「わかってるよ。うるさいなー。もう時間だから行くね」
リョウタは、玄関までついてきて、しつこく言ってた。
私は、式場についた。
「京子っー。久しぶり」
尚実と、由香子がいた。
「尚実、由香子久しぶり。由香子、名古屋から来るの大変だったでしょう。」
由香子は、旦那さんの転勤で今、名古屋にいる。
「まあね。でも、久しぶりに皆に会いたいし、旦那も行ってこいって言ってくれたしね」
やはり、他の旦那さんは理解あるようだ。
「それにしても、京子。相変わらず綺麗ね。全く老けてないわね。旦那さんが、若いイケメンなんだって、いいわね」
「だから、若作りするのに大変よ」
「またまた謙遜しちゃって。」
尚実と由香子と、近況を言い合い盛り上がってた。
私は、トイレに行くので、尚実と由香子に、先に席に行っててと言った。
「京子ー」
今度は、ナオキだった。
「あのクソ生意気な年下の旦那と、うまくやってるのか」
ナオキには、交際を申し込まれたこともあったが、断った。ナオキは、リョウタに、SNSをブロックされたり、オッサン扱いされたりして、散々な対応をされた。
「うん。仲良くやってるよ」
「ふーん。なら、いいけどさ」
ナオキは、二年前に、8歳年下の奥さんと結婚した。若い子は、面倒くさいとか言ってたけど、結局、若い奥さんだもんね。
「なんか、柚木が、マサト先輩も呼んだらしいぞ。来るかどうかは分かんないけど」
駿くんの披露宴にも、ツアーで来なかったから、来ない気がする。
披露宴は、盛り上がり、感動もした。
披露宴が、終わり、新郎新婦がお見送りの際に、理恵と柚木くんと、少しだけ話をした。
「京子、来てくれて、ありがとう。都会で、お互い頑張って働いてたから、嬉しい」
理恵は、泣いていた。
「柚木くん。理恵を幸せにしなさいよ」
私は、新郎の柚木くんに言った。
「京子、わかってるよ。」
理恵は、結婚しても、仕事を続けるそうだ。今まで、一人で頑張ってきたけど、これからは、支えあい、助け合う相手がいる。
理恵にも幸せになってほしい。
「京子。二次会でないの?」
尚実と由香子が言った。
「うん。旦那と子供がマンションで、待ってるから」
そう言って、尚実と由香子とは、別れた。
ロビーを通って、出口に行こうとした時、マサトがいた。
「よお。京子、久しぶりだな」
「マサト、来てたんだ?」
マサトは、少し遅れて来てたらしい。
「年下の旦那なんだって?」
マサトが、柚木くんに聞いてたらしく、私に聞いてきた。
「もしかして、Avid crownのリョウタ?」
「うん」
「やっぱり、そうか。あのライブの打ち上げの時、リョウタやたら、京子のことを気にしてたから。やっぱ付き合ってたのか」
「うん」
「オマエ、ギタリストに縁があるな」
「たまたまだよ」
「あんな年下で、大丈夫なのか?」
「うん。私の両親も大切にしてくれるし、リョウタと結婚して良かったよ」
「そうか。京子が、いいならいいけど」
「うん。すごい幸せだよ」
「そうか。オマエが幸せで、良かった」
マサトは、微笑った。
「私、旦那と息子が待ってるから、行くね」
私は、マサトに言った。
「じゃあな」
マサトは、出口に行く私を見送ってた。
あの時。メジャーになるマサトについていかなかったのは、私の正直な気持ちだったのだろう。
リョウタとは、違う恋愛だった気がする。自分を犠牲にしてまで、マサトに、付き合えなかった。
でも、リョウタは、違う。ワガママで、無茶言われて、利用されてるかもしれないと思いながら自分を犠牲にしてまで、付き合って。でも、その分、リョウタは、私に安らぎと、癒しをくれた。
「ただいまっー」
私は、リョウタと恭ちゃんが待ってるマンションに帰った。
「京子っ。遅いっ。何やってたんだよ」
「ママー」
二人が私の帰りを待っててくれた。
「ごめんね」
リョウタが、私の体の匂いをかぎだした。
「何してるのよっ」
「恭も、ママの匂いをかげ。おじちゃんの匂いがついてるかもしれないぞ」
「うんっ。ボクもママをかぐ」
そうして、リョウタと恭ちゃんとで、私の匂いを嗅いでいた。
「もうっ。やめてよー。二人とも」
今日は、マンションに泊まっていくことにした。
明日の朝、帰ることにした。
恭ちゃんが寝てから、リョウタとソファに座った。
あの時。二人で選んだソファだ。
このマンションには、リョウタと付き合って、同棲して、思い入れが、沢山詰まっている。
「マサトさん。来たのか?」
リョウタが聞いてきた。
「うん。来てた」
「マサトさんと話したのか?」
「うん。少し話したよ」
リョウタは、珍しく、追求しなかった。
マンションのベットで、リョウタと恭ちゃんと、三人で寝た。
あの時、子供が産まれて、ここで、一緒に寝れるなんて思ってなかった。
月曜日。店が終わって家に帰ると
「うおっーー」
リョウタが二階で発狂してた。
「リョウタくん、騒いでるな。なんかあったのか?」
リビングにいた父親が言った。
「また京子に、駄々こねてるんでしょう。京子だけに。」
母親が、またか、みたいに言った。
リョウタは、speck crewのマサトのブログを見て発狂したのである。
「なんだよっ。これ昨日の披露宴のこと書いてるじゃないか」
どれどれ。私は、リョウタのスマホの画面を見た。
「後輩の披露宴で、久しぶりに大学時代の元カノと会った。結婚して子供もいるが、変わらないで、綺麗なままだった。あの頃より、綺麗になってたかもしれない。惜しいことしたなーと思った。」
あー。マサトも、こういうこと、ブログに書かないで欲しいな。リョウタ、すねて、面倒くさいんだから。
「やっぱ。未練たらたらじゃないかっ。だから、披露宴なんて行くなって言ったんだよ。どうすんだよ。マサトさんが、京子のこと忘れられなかったらよー」
リョウタは、大騒ぎだった。
ちゃんと、最後まで、読みなさいよ。
「でも、元カノは、旦那さんと結婚して良かったと言って、とても幸せそうだった。オレには全く眼中ないようだった。」