イケメンが危ない。
私は、その秋元さんのアシスタントの花田さんという女性には会ったことはない。
28歳。独身。担当のルキアくんと酔った勢いで、関係をもつ。
ルキアくんは年上女性から見ると、可愛いイケメン。屈託のない笑顔で母性本能をぐすぐる。
そんなルキアくんと一回関係をもったら、どうなる。
割りきる大人の女性もいるが、そうとは限らない。
年下男と関係をもち燃え上がり、怖いくらい夢中になる女性も少なくない。
28歳。結婚に焦る年かもしれない。それにレコード会社の社員が、あっさり担当アーティストと関係をもつ意図がわからない。
イケメンのブレイクするかもしれないアーティストと関係を持ち結婚まで持ち込む魂胆か。
危ない。
ルキアくんが危ない。
もしルキアくんが、その花田さんを一回だけで、あっさりふったら逆恨みし、ルキアくんがブレイクしたときに、週刊紙に、垂れ込むかもしれない。ルキアくんとのベットでの写真を写真週刊紙に、売るかもしれない。
そんなときに叩かれるのは、ルキアくんのほうだ。
ルキアくんが、危ないーー。
私は一人で、勝手に妄想していた。
「たらいま」
リョウタが、帰ってきた。
私は耐えきれず、私の妄想というか推測をリョウタに言った。
「うーん。ルキアくんは全く、その気ないと思うよ。たまたま、やったんじゃないのか。でも相手の年上女も、担当のアーティストと軽くやるようでは怖いね。狙われた感じ」
ベットで寝転がってリョウタは言った。
「どうしたらいい?ルキアくん、可哀想だよ。江口さんに言って、その女性、担当外してもらったほうがいいかな」
オバサンになると、若いイケメンの肩を持つものである。
相手の女性の気持ちは、知らないが、やはりレコード会社の社員として、うかつである。仕事じゃなく仕事に男を探しに来てると言われても仕方ない。やはり、ルキアくんのバンドの担当は責任感のある人にしてもらうべきである。
「京子、怖い。そこまで、手回しするのかよ」
リョウタは私が江口さんに言って、担当外させるようにするのは、やり過ぎじゃないかと言う。もしルキアくんが、そこから、その女性を好きになったら、どうするのか。そうなったら私が口出しすることじゃなくなると言う。
「だって。ルキアくんは、大事なデビュー前なのよ。やっぱり印象って大事よ。それを、そんな年下に手を出すような女に壊されたくない」
んっ?なんか、私、自分のことを棚に上げて言ってる?
「私、やっぱり、江口さんに言う。担当外してって」
そう言って、私はスマホをとって、電話をかけようとした。
「京子、やめろって。まるで、おっせかいオバサンみたいだよ。じゃなきゃ息子の仕事に口出しする親バカみたいだ」
リョウタに止められた。
「花田。昨夜、何時頃、帰ったんだ?」
秋元さんが、花田さんに聞いた。
花田さんはビクッとして、気が気じゃなかった。
「あれから、すぐ帰りましたよ」
「ほんとか?ルキアくん、デビュー前だから気を付けてくれよ」
花田さんは、まずい。まずい。と思っていた。
日曜日。私は、また打ち合わせのために東京に行った。
江口さんがリョウタと恭ちゃんを会社に連れてきていいというので、私が打ち合わせをしてるうちリョウタと恭ちゃんは、休憩室で待っていた。
「あっ。リョウタさん、恭ちゃん来てたんですか」
ルキアくんが、来た。
「ルキアお兄ちゃんー」
恭ちゃんは、喜んだ。
「ルキアくん、担当変わったの?」
「変わってないですよ。もしかしてアシスタントのこと?電話したとき、京子さんがリョウタさんが帰ってきたら、相談してみるって、言ってたから。京子さん、オレが怖くなること言うんですよ。結婚に焦ってる年上女性は、危ないわよーって。」
ルキアくんは、リョウタに言った。
「京子、すごい。心配してたよ。写真週刊紙にベットの写真を売られるんじゃないかって、妄想がすごくて。ルキアくん、京子の気をひこうとして大袈裟に言ったんだろ」
「はは。わかりました?オレも、京子さんが、あそこまで真剣にとらえると思わなかったから」
「花田、スケジュール調整しといて。」
そこに、秋元さんと花田さんが、コーヒー飲みに来た。
「あっ。京子さーん」
ルキアくんは打ち合わせを終えて来た私を見つけると、嬉しそうな顔をした。
それを、花田さんは見逃さなかった。
もしかしてルキアくんの片想いの相手って、この人?
花田さんは、私を見て思っていた。
「リョウタさんと、恭ちゃんと話をしてました」
ルキアくんは、私に言った。
「あっ。京子先生。旦那さん、今度ライブやるんですよね。」
秋元さんが、私に言った。
「私、見に行きますんで。江口さんと」
秋元さんと、江口さんが見に来るらしい。
「ああ。京子先生。紹介します。私のアシスタントの花田です」
この人が、ルキアくんとホテルに行った女性か。
美人といえば美人だが、どういう魂胆なのだろうか。
あとで、花田さんは、ルキアくんに言った。
「なんか、京子先生って、怖そうですね。私をチェックするように、上から下まで見てました。40代の女性って、こわーいっ」
なんだ、この女。
ルキアくんに私の好感度下げるために、わざと言ったに違いない。




