利用。
休憩時間にリョウタの高校の後輩の女の子から、ホームページにメールがあったことを花江に言った。
「リョウタくん。ただの後輩じゃないんじゃないのー」
花江は探るように、リョウタを茶化した。
「あ、オレが卒業するとき告白された。断ったけど」
そうだろうな。あのメールの感じじゃリョウタと連絡とりたい感じだったしね。
「じゃあ、なにもなかったんだ?」
花江は、突っ込んで聞いた。
「一回やりました。どうしても最後の思い出にって、迫られて」
はあ?告白されて断った後輩とやっただと?
「最低ー」
呆れたように、私は言った。
「リョウタくん。高校生から遊んでたんだ。」
花江も、さすがに驚いていた。
「オレ、真面目に、ちゃんと付き合ったのは、京子が初めてなんで」
リョウタは誇らしげに言ったが自慢できることでもない。
「20歳のとき、オレ、京子に、メロメロで」
リョウタは、花江に言った。
「京子は、20歳のリョウタくんを手玉にとったんだ」
「オレ、京子に夢中で、一日京子のことばかり考えてました」
リョウタは、花江に私のことをどれだけ好きだったかをアピールした。
「でも、あっさり浮気したんだよね」
私は、すかさず水を指した。
「それでは、信用性ないわよね」
花江は呆れた。
「あん時は京子が悪いんだよ。オレをほっとくから、寂しくて、つい。誰でも良かったんだ」
リョウタは、焦って、言い分を語った。
「言い訳ね。男の都合のよい言い訳よ」
花江はリョウタの言い分をあしらった。
「私のせいにするなんてね。私のことを一日考えたのなら浮気する余裕なんてないはずよ。気持ちが足りないのよ」
私は、きつく言った。
「なんだよ。京子、最近、過去の過ちを掘り返すなー」
リョウタは、たじたじだった。
そんなわけで、休憩時間に花江と二人でリョウタを攻めてました。
休みの日にリョウタと恭ちゃんと、都会に買い物に行った。
リョウタが楽器屋に行くというから、私と恭ちゃんは、デパートに行った。
「新しいギター欲しい。京子に聞いてみるかな」
リョウタは、そう思って私のいるデパートに行こうと、アーケード街に出た。
「リョウタ先輩?」
リョウタに女性が声をかけてきた。
「私、鈴木結夏です。高校の後輩の。今は結婚したので、中川結夏です。」
その女性は、ホームページにメールをくれた結夏さんだった。
「ああ。メール見たよ。ミニアルバムの予約ありがとう」
「私、一年前に結婚して、この都市に住んでるんです」
しかし結夏さんは、私が来るのを見つけたらしく
「リョウタ先輩の奥様じゃないですか」
結夏さんは、目が輝いて嬉しそうだった。
「奥様ー。私、リョウタさんの高校の後輩で、中川結夏と申します。奥様の料理本買いました。奥様の料理本を参考にして作ったら、主人が、すごい美味しいって言ってくれて、最近、飲みに行かないで、早く帰って来てくれるんですっ。私の料理が食べたいからって言うんですっ」
結夏さんは私が載ったタウン情報誌の働く既婚女性の特集も見てくれたらしい。
「奥様のようになりたくて、私、料理教室に通い始めたんです。主人にも、もっと喜んでもらいたいし。私の主人、モテるので、やっぱり料理で胃袋をつかんで、浮気されないようにしなきゃって、思ってるんですっ」
結夏さんは、熱く延々と、15分は私のファンであることを熱弁した。
リョウタは、取り残されていた。
えっ。もしかして、オレ利用されたのか。リョウタは、そう思っていた。
「あのー結夏さん。オレ達、そろそろ帰りたいから」
リョウタは、痺れを切らして結夏さんに言った。
「あっ。ごめんなさい。今度、お店に主人と食べに行きます」
そう言って、結夏さんは帰って行った。
「あははっ。じゃあリョウタくん目的じゃなくて、京子のファンだったんだ。その結夏さんは、京子に会いたくて。リョウタくんをうまく利用しようとしたのね。あははー」
花江は大笑いだった。
「後輩、オレに全く眼中になかったですよ」
ははは。リョウタ、ちょっとは期待してたのかな。




