歌詞カード
「リョウタっ。なんで、RSKの歌詞カードのサポートメンバーに私の名前があるのよ。消してよ」
「キーボード、サポートしてもらったんだから、京子の名前いれるの当然だろ」
しまった。チェックするんだった。リョウタに任せたのがいけなかった。しかも、名前の表記が、kyokoになってる。
「キョウコなんて、名前ゴロゴロいるんだから、作曲家のkyokoと、同一人物だと思わないって」
ゴロゴロいるって、人の名前をありきたりな名前みたいに言うなんて、むかつく。
「京子聞いてよ。高校の同級生の希美のブログが、むかつくのよ。セレブぶってるし、あと毎日、手料理載せてるんだけど、ほんとかよーって、感じ。今、結婚して、千葉にいるんだけどさ。あと毎日、子供自慢。そんなセレブってタイプじゃないのよ」
花江がブログを見て、むかついてた。
確かにブログに、自慢満載の人いるよね。
「絶対、いいね!押さないから」
「見なきゃいいよ」
花江が見て、むかついてるのに私は言った。
「でも、今日は、どんな自慢か怖いものみたさもあって、つい見てしまう。でっ、文句をつけたくなる」
花江は、私に、その希美さんのブログを見せてきた。
『今夜は、外国の友人から頂いた白ワインを開けました。優しい味で、上品で美味しい。』
あー確かに。この田舎の出身には思えないコメントだ。いや、むしろ田舎者だから、このコメントかもしれない。
グルメレポートする際に、コメント豊富じゃないレポーターが、『優しい味』っていう言い方するが、優しい味って何?無難な味?味がハッキリしてない感じがして、納得のいかないコメントである。
『高校生の息子が家事をいつも、ありがとうって、アロマを買ってきてくれました。心優しい息子です』
高校生といえば反抗期の時期だが、うちの息子は反抗期もなく、母親思いの優しい息子ですと、いいたいのだろうか。
「うちの息子なんて、ろくに話もしないし連絡もよこさないわよっ」
花江は、大学生の息子さんのことを言った。
「しかもさ、見てよ。夕食にフランス料理を作る?希美って、実家は、となりの町なのよ。田舎の町出身がフランス料理なんて、食べないでしょー」
まあ、都会に行ってフランス料理屋で、バイトしてたのかもしれないし。
『今日は4時に起きて、旦那様と息子のお弁当を作りました。手作りのハンバーグに、アボガトご飯です』
アボガトご飯。しかも、二人分のお弁当で4時に起きるとは。
でも、なんとも、このオーバーな自慢が突っ込みどころ満載で、クセになる希美さんのブログだった。
「希美が、こんな手の混んだ料理するなんて信じられないー」
花江は吠えていた。
「ところでさ。日曜日に、娘と例の映画見てきたわよ。京子のピアノ素敵だった。サユカさんのピアノも素敵だったけど、あの映画には京子のピアノの方がぴったりだわ」
花江は、映画を見たらしい。
「京子もしかして、主演の松坂健人くんに会えるんじゃない。すごいイケメンよねー。」
会えない。会えない。会うつもりもない。
いやいや。色々、頭が痛い。
実は、映画のサントラの話が出てる。
CD化になると面倒くさい。
「自主レーベルのAvid recordsから、CD出したらいいさ」
リョウタが私のピアノを自主レーベルから、発売したらと言う。
そういうわけにもいかない。
江口さんを通しての話だから、tracks Japanを押し退けて、発売するわけにも行かないだろう。
しかも自主レーベルから発売したら、もろにkyokoは、私だって、バレるでしょうが。
RSKのホームページに、メールが来ていた。
「リョウタさん、覚えてますか。結夏です。リョウタさん、まだバンド続けてたんですね。ぜひ、聴いてみたいです。アルバムを予約します。」
誰?結夏って?
「ああ。高校の時の後輩。軽音楽部のマネジャーだった。」
後輩?それだけ?
怪しいー。
「へえー。今、うちの県にいるんだ。」
リョウタは、予約の住所を見て言った。
「名字変わってるから、結婚したんだな。結夏。」
結夏って、呼び捨てする仲なんだ。
へえー。




