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焼き肉。

リョウタの実家から帰ってきて、すぐ店を再開し、疲れも溜まってたせいか、日曜日の休みに、私とリョウタと恭ちゃんの三人は、10時まで爆睡してた。

いくら娘とはいえ、家事もせずに、10時まで寝るのは、ヤバイ。

「お母さん、ごめーん。つい休みだと思って寝ちゃって」

私は、焦って、下に降りていった。

「いいのよ。休みなんだから。あなたもリョタくんの実家にいて、一応は、気疲れしただろうし。日曜日は、朝はパンだし、もう少し寝てても、良かったのよ」

今日は、いやに物わかりのいい母親だ。


「お父さんが夜は皆で焼き肉いかないかって。お父さんのおごりらしいから。リョウタくん焼き肉好きだし、京子も疲れてるだろうから、夕飯の仕度も休みにしてさ。お父さん、『和肉』さんに、予約したみたいよ」

母親が言った。

「えっ『和肉』さんって、ブランド牛ばかり置いてる高級焼肉店よ。それじゃリョウタだって、気を使って、あまり食べれないから、安い焼肉屋で、沢山食べれる店にしようよ」

そうなのである。『和肉』さんって、国道沿いに半年前にオープンした焼肉店なのだけれど、かなり高いのである。

花江も家族で、行ったらしいが、一皿が、たった5品くらいで、軽く10000円はして、会計が気になり、食べた気がしないと言ってた。


「何でも、お父さんが市役所時代にお世話した人がオープンしたみたいだから、少しはサービスしてくれるんじゃないの。そんな高級店なんて、たまにしか行かないんだから、今日は、お父さんにおごってもらいましょうよ」


そうは言っても。会計が気になって食べた気がしないのは、美味しいものでも、そう感じなくなるのでは、ないだろうか。



しかし、父親の折角の誘いも断るのも悪いので、私達は、家族で、高級焼き肉店に行った。


入り口は、いかにも高級店という和式の造りだった。

「いらっしゃいませ」

30歳くらいの女性店員が迎えた。

「予約していた笹原ですが」

「笹原様ですね。お待ちしておりました。お席にご案内致します」

私達は、個室に通された。

「リョウタくん、どんどん好きなのを頼みなさい」

父親は、リョウタに言った。

私は、本開きになっているメニューを見ると、思わず閉じてしまった。

私の目の錯覚か、コースが、最低で一人20,000円である。

「まず鍋料理を頼まない?温まりたいし」

私は、皆で食べれる鍋で、お腹をいっぱいにし、肉をあまり食べない作戦にでた。

「オレ、もつ鍋がいい」

リョウタが言い出した。

まあまあ、いいだろう。野菜も入ってるし。

「リョウタくん、肉も好きなのを頼んでいいぞ」

そういって、父親は、メニューをリョウタに渡した。

さすがに、リョウタも顔がひきつっていた。

「オレ、野菜食べたいから、野菜セットでいいです」

遠慮のないリョウタが、野菜セットとは、だいぶ気を使ったみたいだ。

「なんだよ。リョウタくん。野菜も頼むけど、肉頼んでいんだぞ。遠慮するなんて、リョウタくんらしくないな」

父親は、リョウタが遠慮してるのに、気づいたみたいだ。


「失礼致します」

そこへ、オーナーさんが来た。

「笹原さん、今日はご予約ありがとうございます。笹原さんには、大変お世話になりましたので、今日は誠心誠意サービスさせて頂きます」

サービスすると言っても、値段は安くはしないだろう。野菜セットをサービスするとか、そんなとこだろう。

「なんか、うちの婿が肉好きなのに、遠慮しちゃって、なにかお薦めありますか」

父親がオーナーさんに言った。


お父さんっ。お薦めなんか聞いちゃダメっ。高いのを薦められるに決まってるんだから。


「それでは、牛タン盛り合わせ、和牛盛り合わせなど、いかがですか」

「リョウタくん牛タン好きだよな。じゃあ、それ両方ともお願いします」

まんまと、高いのを注文させられる。

「お父さん、ビビンパとか、頼もうよ。肉だけでは、お腹すくよ。」

私は、言った。

「そうだな。リョウタくん、肉だけじゃお腹いっぱいにならないだろしな」


ふー。あとは、肉は頼んで欲しくない。


「おじいちゃん。ボク。ウィンナー食べたい」

よしよし。恭ちゃんは、偉い。


「お待たせいたしました」

運ばれた肉は、それはそれは、みたことない鮮やかな色だった。

牛タンの厚みが、すごい。噛みきれるのだろうかという厚さだ。

「この牛タン。柔らかいー。美味いー」

リョウタが牛タンを食べて、絶賛していた。

「リョウタくん、好きなだけ食べていいぞ」

父親は、リョウタが喜んでる姿を見て、嬉しそうだった。

しかし、確かに美味しいが、一皿の量が少なかった。


「失礼致します。こちら。オーナーからのサービスで、特選盛り合わせで、ございます」

オーナーさんからのサービスの肉は、特選とあって、高級ブランド肉ばかりだった。


「美味いっー」

リョウタは、悲鳴にちかい声をあげていた。

それを見て、父親は、満足気だった。

本来ならば、特選盛り合わせは、3万円もした。



「笹原さま、ありがとうございました。またお越しくださいませ」

オーナーに、出口まで、見送って頂いた。


会計は、5人で100,000円だったところを父親の顔で、80,000円にして、頂いた。


花江のいう通り、私は、食べた気がしなかった。

はらはらドキドキの焼き肉だった。

やっぱり、値段を気にしないで沢山食べれるほうがいい。

お年をめした人は、少食で、高い焼き肉でもいいかもしれないが、リョウタみたいに沢山食べる若者は、やはり量である。


でも、リョウタは、高級焼肉を食べれて喜んでたみたいだ。



次の日の朝、母親と朝食の用意をしてるときに話をした。

「お父さん無理したんじゃないの。焼き肉で、8万円なんて」

「そう?お父さん、リョウタくん喜んでたから、嬉しかったみたいよ」

それにしても、贅沢すぎる。


「実は、お父さん。あなた達が、リョウタくんの実家から、戻ってこないんじゃないかって心配してたのよ。リョウタくんのご両親が体調崩せば、誰か会社を継がなきゃいけない。リョウタくんが跡を継がなきゃいけなくなったら、帰ってこないだろうってね。でも、リョウタくんのお兄さんが会社を継ぐみたいだから、お父さん安心したのよ。だから、戻ってきてくれたあなた達に、喜んでほしかったのよ」



そういうことだったのか。

だから、リョウタが肉を食べて喜んでる姿を見て、父親は、嬉しそうだったのか。




そういうことだったら、もっと高級肉を味わって食べるんだった。




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