アルバム
「この曲さ。キーボードいれたいんだけど、京子弾いてよ」
リョウタが、ミニアルバムの曲のことで言った。
「いいよ。」
結局。この間、東京に行ったとき私が弾いたピアノが、映画で使われることになった。
映画のエンドロールのスタッフクレジットに私の名前が出るらしい。たかが、ピアノだと思うので、映画のメインになるわけではないだろう。
幼稚園に迎えに行くと、明奈ちゃんが悠平くんに言われていた。
「どうして、明奈ちゃんは、ママが迎えにこないの?みんな、ママが迎えにくるよ。いつも、パパばっか」
疑問に感じたのだろうが、酷な質問をする。
「ママは離婚したから、いないよ」
明奈ちゃんは、離婚の意味を知ってか言った。
「でも、明奈は、パパがいるから、いいもん」
それだけ、明奈ちゃんのパパは明奈ちゃんを可愛がっているのだろう。
「明奈ちゃん、パパまだこないの?」
私は、明奈ちゃんに聞いた。
「パパ、今日はお仕事で都会に行ったから、おばあちゃんが来る」
そういえば、今度、都会の駅の県内のフェアで団子を出店すると言ってた。
「明奈ちゃんー。おばあちゃん、お店が忙しいから遅くなるって」
幼稚園の先生が言った。
「じゃあ、明奈ちゃん、うちで、おばあちゃん来るの待ってる?」
私は、明奈ちゃんに言った。
「うんっ。恭ちゃんちに行く」
明奈ちゃんのおばあちゃんには、私から連絡しといた。
「恭ちゃんのパパー」
明奈ちゃんは、リョウタを見つけると走っていった。
私が、おやつを用意している間、リョウタが恭ちゃんと明奈ちゃんに、絵本を読んでいた。
両親が揃っている子供は、当たり前に、どうしてママがいないと思うだろう。明奈ちゃんは、さっきは、ああ言ってたけど、年頃になったら母親がいたらと思うだろうか。
でも、今の子は自分で学ぶところがあるし、自分で身に付けていくのかもしれない。親が全部教える時代でもない。
「恭ちゃんのパパ、お歌歌って」
明奈ちゃんが、リョウタに言った。
「なんの歌がいいの?」
「パパが好きな歌。Bハーツがいいー」
Bハーツか。ヒロキさん可愛かった。
リョウタは、アコギを取り出して、歌った。
明奈ちゃんはリョウタの歌に合わせて、ジャンプした。
明奈ちゃんのパパが、Bハーツの映像を見せてるのだろうか。
恭ちゃんも一緒に、ジャンプ始めた。
なんだか、リビングがライブになっていた。
「踊ったから。お腹すいたでしょう。おやつだよ」
私は、作ったシフォンケーキを持っていた。
「美味しいー。恭ちゃんのママは魔法使いみたい。なんでも出来るから」
明奈ちゃんは、喜んで食べた。
しばらくして、明奈ちゃんのパパが迎えに来た。
「パパー。恭ちゃんのパパにBハーツを歌ってもらった」
明奈ちゃんはパパに言った。
「明奈、良かったな」
明奈ちゃんは、帰りの車の中で言った。
「明奈は、ママがいなくても、恭ちゃんのママもいるし、太郎くんのママもいるし、みんな優しいママがいるから、寂しくないよ。恭ちゃんのパパも大好き」
明奈ちゃんのパパは思った。周りに良い父兄がいて、明奈は、母親がいなくても、成長していくだろうと。
「先生、映画披露試写会に来てください」
江口さんから、電話があった。
「仕事あるので、いけないです」
私は、断った。
「監督が会いたいそうです」




