レコード会社設立。
僕は、クラシックしか、聴かない。
「京子ちゃん、コンクールで優勝したのに、パンク聴いてるなんて、おかしい。」
準優勝の坂間和音くんが、言った。
都会の大手の音楽教室で、幼稚園からピアノを習っていた坂間くんは、田舎の個人のピアノ教室で、習っていた私が優勝したから、悔しさ紛れに言った。
バンドって、不良がやるもんじゃないの。
それを音楽と言えるの。
クラシック以外は、音楽じゃない。
そういい放った坂間くん。
今はプロのピアニストになった。
「京子さん、じゃあ、看板つけますよ」
カンジくんは、スタジオの入り口に看板を取り付けた。
「やったー。完成ー」
「俺たちのレコード会社だ」
Avid crown、RSKのメンバーと、マネジャーの真吾くんは喜んだ。
楽譜通りのぶれない音もいいけど、それだけじゃ伝わるだろうか。歌詞をのせて、少し音が、ずれていても、いいじゃない。
君たちが自由に表現してほしい。
自主レーベル設立パーティは、質素に、うちの店で内輪だけでやった。
「ちーすっ。久しぶりー」
ルキアくんが、やってきた。
「ルキアくん、来てくれたの」
私は、ルキアくんが来てくれると思わなかったので、驚いた。
「駿からメールもらった。社長さん、自主レーベル、おめでとうございます」
そう言って、ルキアくんは私に大きな花束を渡した。
「ありがとうー」
「そういえば、お祝いの花、あのメジャーレーベルのtracks Japanから来てましたね。すごい大手のレコード会社ですよね。すごくないですか」
駿くんが疑問に思ったのか言った。
江口さんが贈ってくれたのだろう。
慶子のタウン情報誌からも、お祝いの花が来ていた。
あとライブハウスの経営してる沢木さんからも、来てた。
理恵の働いてるテレビ局からも、来ていた。
「なんか、お祝いの花、けっこう有名どころばかりから、来てましたよね。知名度ありすぎですよ」
カンジくんが言った。
「まず、CD完成むけて頑張ってください。宣伝はガンガンしますので。」
私はメンバーに言った。
「インディーズランキングに、入るようにしようぜ」
裕太くんが言った。
料理は私と花江と、彩ちゃんと、紀香ちゃんと作った。
彩ちゃんと、紀香ちゃんは出産予定日が、あと一ヶ月である。
カンジくんの奥さんの松子さんだって、かなりお腹が大きくなってきたし、そろそろ男どもの飲み会を控えてもらうようにしないとな。
恭ちゃんはルキアくんが大好きなので、ルキアくんの隣にいた。
「恭ちゃん、ちょっと見ない間に大きくなったな」
恭ちゃんは、若いお兄さん達が、沢山いて相手にしてもらって嬉しそうだった。
「早く、オレも、オレの子供に会いたい」
真吾くんが、恭ちゃんを見て言った。
「もう、男の子か、女の子かわかるんでしょう」
私は、真吾くんと、駿くんと、カンジくんに聞いた。
「オレ、女の子なんですよー」
真吾くんが言った。
「えー。女の子、真吾くん、溺愛しそうー」
私と花江は、声を揃えて言った。
「そうなんすよ。女の子じゃ。今から嫁に行かれるかと思うと心配で心配で」
真吾くんは、もうお嫁に行く心配をしていた。
駿くんと、カンジくんは、男の子らしい。
「お義父さん、すごい喜びようで、大工にする気満々です。松子は反対してるんですが」
カンジくんが、困ったように言った。
もう跡継ぎの話じゃね。
「恭ちゃんは、なんになりたいの?」
ルキアくんが、聞いた。
「ボク、ママの旦那さん」
恭ちゃん、可愛いことを言ってくれるじゃないの。
「あー。結婚式したもんね」
駿くんが言った。
「うんっ。ボク、ママと結婚したの」
「羨ましいー。イケメン二人と結婚できるなんて」
花江が、私を見て言った。
恭ちゃんは、恭ちゃんのやりたいことをしてほしい。
店を継げとか、ギターリストになれとか、そんなことは言いたくない。恭ちゃんの好きなことをしてほしい。
型にはまった生き方はさせたくない。
自分で決断することも、必要である。
私は手助けをするだけ。
「京子、私さ。調理師の免許とることにした」
花江が突然言い出した。
「花江さん、すげー。頑張ってください」
リョウタが言った。
「私、なんもしないで、主婦になったから、勉強とか資格とか、諦めてたけど、今から挑戦するのも遅くないって思った。よりよい京子のサポートをしたいなと思ったし」
花江は言った。
「花江、私のサポートだけじゃなくて、もっと上みなよ。いっそのこと、店を開く目標持つとか」
私は花江に言った。
「私の目標は、京子だから。」




