表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/175

口出す人。

私の料理本が、発売された。

それが、なかなか売れているらしい。

1ページだけ、リョウタの横顔の笑顔の写真を載せたのだが、それがまた、かなりの好感度があったらしく、なぜかイケメンを捕まえられる料理の本という噂がたち、そんな訳で売れてるわけである。

増刷が決まったくらいである。



リョウタが、休みの日に近所の本屋に言った。

「あっ。これこれ、京子の料理本。売れてるらしいよ」

「えっ。先輩、パスタ屋のシェフと知り合いなんですか。」


サラリーマン二人組が、私の料理本を見て話していた。

「中学の同級生だよ。中学ん時、京子、かなりモテてさ。まあマドンナみたいな存在だったんだよ」

40代にみえるサラリーマンの方が言った。


「同級生かあ。いいですね。オレの友達の間でも、こういう奥さんだったら、良かったよなと言ってますよ。美人で料理できて、仕事も出来て旦那さんを支えて、理想の奥さんですよ」

後輩のサラリーマンが言った。


「確かに。京子、あの旦那さんに尽くしてそうだもんな。いくら年下のイケメンの旦那とはいえ、オレらの手の届かないマドンナと結婚できるんだもんな。羨ましい。京子が奥さんだったら、毎日早く帰るよ」


リョウタは、そのサラリーマンの話を全部聞いていた。



私が部屋にいると、慶子から電話がかかってきた。

「今、リョウタくんから私に電話あったわよ」

「リョウタが?なんで?」

「京子の料理本の増刷をやめてほしいって。これ以上、京子が理想の奥さんになって、他の男に奥さんにしたいと思われたら嫌だからだって」



ええっー。リョウタ、そんなこと言ったのー。は、恥ずかしい。





リョウタが本屋から帰ってきた。

「リョウタっ。慶子に、電話したでしょう。なんで、あんなこと言うのよっ。恥ずかしいわよっ」

私は、リョウタを怒った。


「別に恥ずかしくないだろ。これ以上、他の男に京子の料理本見てほしくない。」

リョウタは、全く悪びれない。


「恥ずかしいでしょうっ。私、41歳よ。世間じゃオバサンなのよ。それを他の男に、奥さんにしたいと思われたくないって。私みたいなオバサンを奥さんにしたいと思うはずないでしょう。若くて可愛くて、料理できる女性が、いくらでもいるでしょうー。もう慶子に、私の仕事のことで、直接言うのやめてよね。旦那が口出しするのも恥ずかしいよー」

私は、リョウタを責めた。


「だってよ。さっき、本屋で京子の同級生というサラリーマンが、本屋で喋ってたんだよ。理想の奥さんだとか。マドンナと結婚できて羨ましい。京子が奥さんだったら、毎日早く帰るって。理想の奥さんなんだってよ。オレの奥さんなのに、そんなの面白くねーよ」


同級生って、いったい誰よ。こんな田舎で、ペラペラ喋るなって言うのよ。誰、聞いてるか分からないよね。



「あの料理本の料理。オレに作ってる料理だよな。それを他の男が食うの耐えられない。他の男に料理なんか作るなよっ」

それを言われても、私は、シェフだからお客様に料理を作る仕事である。




でも、慶子は増刷はするとリョウタに言ったそうだ。

慶子は心配されて、いんじゃないのと笑っていたが、恥ずかしいつーの。旦那が、そんな理由で仕事に口出すなんて恥ずかしい。


「いらっしゃいませ」

ランチタイムが、落ちついた頃にスーツ姿の40代のサラリーマンか入ってきた。

「笹原京子さんに、お会いしたいのですが」

そのサラリーマンに言った。

「お名前、お伺いしてよろしいでしょうか」

リョウタが名前を聞くと、サラリーマンは、リョウタに名刺を渡した。


「私、レコード会社tracks Japanの江口と申します」

tracks Japanと言えば、かなり大手のメジャーレーベルのレコード会社だとリョウタは思った。


私はリョウタに言われて、そのサラリーマンに会うためにホールに出ていった。



「先生、お久し振りです」

そのサラリーマンは、私を見て言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ