スタジオ
「スタジオ借りるのに、都会に行くしかないな」
リョウタが言った。
Avid crownの時はメンバーが都会だから仕方ないけど、RSKは、三人とも地元だから、地元でアルバムの録音したいけど地元にスタジオはない。
「じゃなきゃ、宅録かー。防音の部屋にドラム入んないだろうな」
宅録では、音はスタジオ録音より悪いだろう。
三人がスケジュールを合わせて、都会のスタジオに通うのは大変かもしれない。それでは、いつアルバム出来上がるか、わからない。
朝、朝食の支度をしてる時に母親に聞いた。
「うちに、いらない土地ない?」
「あるんじゃない。お祖父さんから、お父さんが貰った土地あると思うから聞いてみたら。でも誰も買わないような土地よ。お祖父さんって趣味で、工芸の作業場に使ったと思う」
作業場とは。もしかして小屋がある?
「遠いの?」
「車で10分くらいだけど、川のほうだから人が住むような場所ではないわね」
周りに住宅が、ないなら好都合だ。
水曜日の休みに打ち合わせのため、RSKのメンバーと、真吾くんに店に集まってもらった。
「自主レーベルを立ち上げることにしました。名前は、Avid recordsです」
「えっ。オレらのレーベル?」
もちろんインディーズだが。
「そう。Avid crownとRSKは、このレーベルからCD出します」
「すげー」
駿くんが、驚いて言った。
「で、スタジオいちいち借りるより、スタジオ作ります」
「まじで?!」
メンバーは驚いていた。
「作るといっても、川のほうに、お祖父さんが残した土地と小屋があるので、それを少し改装して。近くに住宅ないから少々の騒音は大丈夫だと思う」
その小屋をリョウタと見にいったのが、ちょうどいい広さの小屋だった。
「オレ、改装しますよ。ホームセンターで安く材料買ってきて、いくらか防音にしますよ」
カンジくんが言った。
「ぜひカンジくん、お願い」
「はい。仕事ないときに、ちょこちょこ改装しに行きますよ」
「RSKのスケジュールなんだけど、スタジオができたら、ミニアルバムの製作に入ります。それが終わったら、HPにアップするMVの撮影。あとミニアルバムが、どれだけ反応あるか分からないのでHPで予約受け付けましょう。遠い方は通販で近くの人だったら、うちの店で引き換えできるようにします。その辺の予約の管理は、真吾くんにお願いします。その予約状況見て、プレス枚数決めます」
私は、ざっとしたスケジュールを言った。
「ライブは、まだ先になりますか」
駿くんが言った。
「アルバム出してからの方が、いいでしょう。Avid crownとの対バンを考えてる。で、地元で最初にワンマンできればいんだけど。ライブやれる場所は、真吾くんと、話し合って検討しときます。」
「オレ。今からホームセンター見てきます」
カンジくんは、スタジオの改装をやる気満々だった。
「オレらも仕事ないとき、手伝うよ」
リョウタと、真吾くんと、駿くんが言った。
夜にリョウタが言った。
「京子、自主レーベルたって、金大丈夫なのか?機材も揃えきなきゃいけないだろうし。無理すんなよ」
「売れたら、倍返ししてもらうから資金は、なんとか大丈夫よ」
「オレらのレーベルか。夢みたいだ」
リョウタは私のために地元に来てくれた。
あのまま都会にいたら、バンド活動だってスムーズだったろう。
ライブだって、もっと出来ただろう。
自分のやりたいこと犠牲にして私と結婚してくれたのだから、私で、やれることはしてあげたい。




