バザー
「京子先輩ー」
幼稚園の父母会に行くとき、高校の後輩の朝子ちゃんに声をかけられた。
「京子先輩、潤が、いつもお世話になってます。あの子で、役に立ちますか?迷惑かけてないといんですが」
朝子ちゃんは、バイトの潤くんのお母さんなのである。
「潤くんに手伝ってもらって、すごい助かってる。ありがとう」
「なら、いんですけど。あの子、家じゃ、ロクに喋らないから、心配だったんですよ。ちゃんとバイトやれてるのか」
朝子ちゃんは、私より1個後輩なのだが、大学生の息子さんがいるのである。
「潤くん。うちの旦那とは、よく喋ってるよ」
「潤。リョウタさんを尊敬してるみたいだから。潤は、長男だから、リョウタさんをお兄さんみたいに思ってると思いますよ」
そうか。潤くんは妹がいると言ってた。リョウタは、末っ子だから、潤くんを弟みたいに思ってるとこもあるかもしれない。
「息子は難しいですよ。娘は、私とよく喋るけど、潤は、学校のこととか聞いてもロクに答えないし。何、考えてるのか。でも、私が京子先輩の後輩と知ってからは、まだ、話すようには、なったほうですよ」
息子は難しいか。親と話さない時期あるだろうな。
恭ちゃんも、いずれ、そうなるんだろうか。
あと潤くんのお母さんが、私の後輩じゃ、私、完璧に潤くんからみれば、おばちゃんだよね。
朝子ちゃんと別れてから、幼稚園に向かった。
幼稚園のバザーで、話し合いがあるのである。
「バザーの実行委員長を、どなたか、やってくれる方いらっしゃいますか」
先生が父兄に言った。
誰も名乗りを上げなかった。バザーの実行委員なんて、面倒くさいし準備が大変だし、やりたがらないだろう。
「私、笹原さんがいいと思います。仕事で、そういうイベントの段取りとか慣れてると思いますし、適任だと思います」
専業主婦の梨佳ちゃんのママが言った。
「でも笹原さんは、他の役員もやってますし、今回は役員になってない方にやって頂きたいのですが」
先生は、梨佳ちゃんのママに言った。
「役員になってない方って。専業主婦で、働いてないってだけで、押し付けらても困ります。働いてなくても小さい子供が三人もいるんですよ。そこまで手が回りません。笹原さんは、経営者ですし雇われてるわけじゃないから、時間に融通きくんじゃないですか。やっぱり慣れてる方がやったほうが、スムーズに出来るんじゃないんですか」
でたよ。梨佳ちゃんのママは何かと言えば、小さい子供が三人もいるを強調して、一切、何もやらない。小さい子供が、いるのは皆同じである。
「笹原さん。どうですか」
専業主婦チームが、やんや言うので先生が、私に聞いてきた。
私は、お店もやたら休みたくないし料理教室もあるし、料理本の話も進んでるし、キツいんだけどな。でも恭ちゃんが、喜ぶ姿が見たいしな。
「わかりました。私で、よければ」
誰もやりたがらないなら、私がするしかないだろう。
「私、笹原さんが実行委員長するなら、補佐として手伝います。私も働いてるとはいえパートですし、笹原さんに比べれば、働いてる時間短いですので、手伝います」
聡くんのママが言った。
「笹原さん。夜までお店もあるし、料理教室もやってますし。事務所もやってますし。私は定時で終わる仕事なので、笹原さんを手伝えます」
聡くんのママは、ヘビメタ好きなママである。リョウタのバンドのライブも見に来てくれてる。
「私も手伝います。」
道郎くんのママも言い出した。
「私も手伝います。私、お弁当を上手く作れないときに、笹原さんに助けて頂いたので。私も笹原さんを手伝いたいです」
今度は、太郎くんのママが言った。
「じゃあオレも手伝います。オレも自営業なので、笹原さんよりは、時間に融通きくと思うし」
団子屋の明奈ちゃんのパパが言った。
「笹原さんは、私達より時間がないと思いますので、笹原さんに、バザーの企画を考えて頂いて、それに伴って私達、動きますので、なんでも言ってください。」
聡くんのママが、私に言った。
「ありがとうございます。助かります」
私は、協力してくれるママとパパがいて嬉しかった。
「では。実行委員になってないかたも、バザーの出品の協力はお願いします。」
先生が言って、父母会は閉めた。
「えっ。バザーの実行委員長を引き受けたのか?」
家に帰って、リョウタに言ったら、リョウタは驚いてた。
「うん。聡くんのママ達も手伝ってくれるっていうし」
「料理本の撮影も始まるんだろ。引き受けて大丈夫なのか」
「お願い。リョウタも手伝ってー」
私は、リョウタに甘えてみせた。
「当たり前だろ」
リョウタは、そう言って私を後ろから抱き締めた。
「出店、なんにしよ」
「焼きそばは、定番すぎるから、特産品まつりでやったホットドックで、いんじゃね」
さっそく、バザーの企画を考えた。




