プロポーズ
忘れられない元カノが
結婚をしていて、子供がいて
幸せそうだったら、どう思うだろう。
「京子っ。タウン情報誌みたわよ。凄い綺麗に写ってたじゃない。モデルさんみたいよ。」
花江がタウン情報誌を持ってきて興奮して言っていた。
そうなのである。働く既婚女性の特集をするからと、慶子に取材をお願いされたのである。県内のタウン情報誌とはいえ、顔が載るのは嫌だったので、断ったのたが、慶子に、どうしてもと懇願された。
「オーナーシェフ兼プロダクション社長。そして、一児の母でもある。なんかー、京子、カッコいいわねー。」
花江は、タウン情報誌を見て、惚れ惚れしていた。
「この着てるスーツも素敵。自前?」
「違う。スタイリストついたから」
スーツはブランドを用意をしてくれた。慶子が気合いをいれてくれた。
「リョウタくん、京子、素敵よねー。まさに美人社長って感じよね」
「はい。めちゃ、美人に写ってました」
まあまあ、カメラマンの腕が良かったのだろう。
ランチタイムが終わりそうな時に、40代と思える男性が一人で入ってきた。
「まだ、ランチ大丈夫ですか」
その男性は、申し訳なそうに、リョウタに聞いた。
「大丈夫ですよ。どうぞ」
オーダーストップは過ぎていたが、一名様なので長居はしないだろうと、リョウタは席に案内した。
「へえー。どれも美味しそうだな。このホウレン草とベーコンのパスタとコーヒー下さい」
男性はオーダーした。
「かしこまりました」
リョウタは、その男性をどこかで見たような気がしていた。
ランチタイムが過ぎたので、お客さんは男性だけになった。
「とても、美味しかったです。すいませんがシェフを呼んで頂けますか」
その男性はリョウタに言った。
「かしこまりました」
リョウタに、呼ばれて私は男性客のところに言った。
「本日はご来店頂きまして、ありがとうございます。私、オーナーシェフの笹原と申します」
私が顔をあげると、男性は言った。
「京子、元気そうだな」
「ま、雅樹?」
その男性はリョウタと別れてから、私が32歳の時に付き合っていた男性で、西川雅樹だった。
雅樹は、一つ年上だから、今は42歳だ。一流企業のサラリーマンで、顔は人気俳優さんみたいに渋めだった。モテたらしく結婚は考えてないと言ってたので、私は付き合った。
でも雅樹が転勤になったときに、私は結婚を考えてないと言ってた雅樹にプロポーズをされた。
私は結婚はしないと決めていたので、プロポーズは断った。
「たまたまタウン情報誌見たら、京子が載っていて驚いたよ。」
「雅樹、大阪に転勤したんじゃ。戻ってきたの?」
「ああ。一年前に、こっちの地方都市に戻ってきた。今日は確かめたいことも、あって京子のパスタ食べにきた。」
キッチンで、花江がリョウタに言った。
「あの男性、誰?渋いけど」
リョウタは、雅樹をじっーと見ていた。
「あっ。アイツ、京子の元カレだ。京子にプロポーズしたヤツだ」
リョウタは、雅樹を思い出すと顔色を変えて、ホールに出ていった。
「なんなんだよっ。おまえっ。今さら来てオレと京子の仲を壊しに来たのかよっ。京子にプロポーズ断われた腹いせかっ?」
リョウタは、雅樹に怒鳴った。
「キミ?京子の弟じゃなかったのか」
「だれがっ。弟だよ。勝手に決めつけんなっ」
「京子がキミを家族のように、愛しおしそうに心配そうに見てたから、てっきり年の離れた弟だと思っていたよ」
年の離れたが、余計だっつーの。
「だから、何しに来たんだよ」
リョウタは、雅樹に言った。
「確かめに来たんだよ。結婚しないと言ってた京子が、結婚したとタウン情報誌に書いてあったから、結婚して幸せか、どーか確かめに来たんだよ」
雅樹は言った。
「なんだよ、それ。幸せか確かめに来たなんて、オレへのアテツケかよ。オレは、おまえみたいに大学もでてないし就職もロクにしてないくけど。けど、おまえなんかより前に、京子のこと好きだったんだよ。おまえなんかに負けないくらい、京子を愛してるつーの」
リョウタは、ほとんど涙目だった。
雅樹と付き合ってたとき、リョウタから、たまに電話が来てたから、雅樹は誰だろと思っていたみたいだ。ライブのチケットのことで、リョウタと会った時に、雅樹はリョウタを見たみたいだ。
毎日、不安だった。
京子が一流企業のサラリーマンと付き合いだして、オレは不安だった。
京子がアイツと結婚したら、どうしようとイラついてた。
「オレ、今、付き合ってる女性いてプロポーズするかどうか迷ってる。京子のこと忘れられなくて、吹っ切れないままプロポーズしても、付き合ってる女性にも悪いなと思ったから来たんだよ」
雅樹は、まだ結婚してなかったらしい。
「とっとと吹っ切れよ。迷惑だ」
リョウタは言った。
「京子は幸せよ。リョウタくんと結婚して幸せよ。リョウタくん、そっくりの息子さんもいるのよ。あなたが心配することじゃないです」
花江がキッチンから出てきて言った。
「そうだね。幸せそうだね。オレと付き合ってた時より、京子、イキイキしてる。やっぱり、オレじゃ京子に、こんな顔させられなかったよ。幸せそうで安心した。吹っ切れたよ」
雅樹は、本当に安心したような顔をしていた。
「リョウタくん。オレが来たことで嫌な思いさせて、申し訳なかった」
そう言って、雅樹は帰って行った。
夜に私はリョウタに謝った。
「リョウタ。今日は嫌な思いさせて、ごめんね」
「京子、アイツにプロポーズされた時、嬉しかった?」
リョウタは私に聞いてきた。
「ううん。面倒くさかった」
私は子供が産めないと思っていたから結婚は、するつもりなかった。だから結婚は考えてないという雅樹だから、付き合ったのにプロポーズされたから、迷惑だった。
「そういえば、オレ、京子にプロポーズしてない」
「うん。してない。恭ちゃんは、プロポーズしてくれたよ」
そう。私はリョウタにプロポーズされてない。私が実家に帰ることになって、リョウタがついてきたから結婚したんだよね。
「京子。オレと、ずっと一緒にいてください」
リョウタは、私の目を見て、言った。
「はい。喜んで」
リョウタは、嬉しそうに笑って私を抱きしめた。
雅樹は、29歳の若い女性と結婚するらしい。
ちっ。結局、若い女かよ。
やっぱ年をとった私を見に来て、若い女と結婚すると、アテツケに来たに違いない。
ったく。散々、綺麗事言って、男って調子いいつーの。




