大切なもの。
リョウタとショッピングセンターに行った。
私が食材の買い物を終わって、リョウタのところに行くと、リョウタが若い可愛い女性と楽しそうに話をしていた。
リョウタの嬉しそうな顔を見て思った。
そうだよね。リョウタだって、若い可愛い子と、話して、嬉しくても仕方ない。男だもの。長年連れ添った夫婦でも、あっさり若い女性と、浮気する旦那さんもいる。奥さん以外の女性に、目がいっても、なんの不思議もない。
でも、私には、そんな魅力がなくなったのかと、哀しくなる。
旦那を繋ぎ止めておく、魅力もなく、年をとるだけ。老けていく妻より、自分に言い寄ってくる若い女性に、ひかれても不思議はない。
リョウタは、私に気づくと、若い女性と話をやめて、私のところに来た。
「京子、ごめん。ファンの子で、東京ライブ行きたかったけど、行けなかったらしいから、ライブの話をしてたんだ。」
「うん」
でも、いつか、リョウタは、私を女として見れなくなる日がくるんだろうな。
そう思ったら、哀しくなり、私は、車に戻った時に、涙が出てしまった。
「京子?ごめん。オレ、ファンの子と喋って嬉しそうな顔してたか?若くて可愛い子だから、嬉しそうな顔したんじゃないから、ライブのこと、誉められたから、つい嬉しそうな顔しただけだよ」
リョウタは、私が哀しそうな顔をしたのを悟ったのか言った。
「うん。わかってる」
私は、リョウタが若い女性と喋ったのが哀しかったんじゃなく、年をとった私といるリョウタとの先を考えたら哀しくなったのである。
「京子、ごめん・・」
リョウタは、気にしたようだった。
昼休憩時間。私は足りない食材を買いに出掛けた時、リョウタが花江に言った。
「昨日、オレが可愛いファンの子と、話したら、京子、泣いちゃって、参りましたよ」
リョウタは、花江に嬉しそうに言った。
「リョウタくん。浮かれないほうがいいわよ。京子は、あっさり身を引くところがあるから、リョウタくん調子乗ってると、大切なもの全て失うことになるわよ」
リョウタは、花江の言葉に、全身の血がひき、青くなった。
日曜日に、例のグループで女子会をやることになった。
私は、久しぶりに皆で話したかったので、恭ちゃんをリョウタにお願いして、参加した。
花江、和津、鈴子、早智、梨佳が揃った。
「和津。東京まで、ライブまで、見に来てくれて、本当にありがとう。これ、みんなに東京のおみやげ。」
私は、全員に東京のおみやげを配った。
「京子。お願いがある」
和津が、改まって言った。
「今度、中学の文化祭があるんだけど、Avid crownか、RSKどちらか、サプライズで、ライブに来てほしいの」
和津の長男は、中学三年生で最後の文化祭である。和津の息子さんが、Avid crownと、RSKの東京のライブに行ったことを学校で話たら、ライブに行きたかった生徒が沢山いたらしく、かなり羨ましがられたそうだ。
和津の長男の同級生は、高校受験で、今は高校から、都会の高校に行き、良い大学を目指す子が多く、みんなバラバラになる。だから卒業する前に、中学の思い出になるようなことを子供達にしてあげたいと、父兄の間で話がでたそうだ。
「ギャラは、そんなに出せないかもしれないけど。でも、子供達、リョウタくんのバンドのライブを学校で、みんなで見れたら喜ぶと思うんだ」
「わかった。私達の母校でもある中学だしね。文化祭にライブできるように調整してみる」
私は和津に言った。
「京子、ありがとうー。子供達、喜ぶわ」
「もちろん私も見に行くわ」
花江が言った。
それにRSKが、地元でやる本格的にやるライブにもなる。
次の日。野菜を配達に来た駿くんに、そのことを言った。
「オレの中学で?!母校でライブやれるなんて、嬉しいです」
「生徒達には、サプライズだから内密にお願いね」
「わかりましたー」
駿くんは、やる気満々だった。
RSKのメンバーと真吾くんとも、打ち合わせしたが、まるっきりオリジナルでは、知らない曲が多いだろうから、コピー曲も入れることにした。あとリョウタが、受験生にむけての曲を作ってくれるらしい。
体育館でライブ感を出すのは難しいが、そこはRSKの腕次第である。
中学生に心に残るような文化祭になるように、してやろうじゃないの。




