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東京②

「Avid crown 東京きたぞー」

裕太くんが、叫んだ。

わざわざ東京まで来てくれたAvid crownのファンも、何人かいたので、完全アウェイという雰囲気ではなかった。


「オレ達の夢だった東京でライブすること。叶いました。」


30歳を過ぎたメンバー。リョウタが25歳の時に東京で、ライブをやりたがってた。私とリョウタが結婚して、リョウタが、私の実家に来たので前みたいに、思うようにバンド練習は出来なかったと思う。でも解散もしないで、ずっとAvid crownを続けて、メンバー4人で東京でライブが出来た。



私はリョウタの夢を止めたこと後悔してたから、今日ライブが出来てよかった。




二番手は、RSK。visionTXのファンが駿くんと、カンジくんを見て感動してた。

リョウタが、ボーカルをして、地元のメンバーでスリーピースでやった即席のバンドだったが、三人は息がピッタリだった。スピードのある曲で客を魅了した。




トリは、ルキアくん率いるTerezishonだ。

「待ってたかいー」

ルキアくんが、叫ぶとvisionTXのファンは、すごい歓声だった。

やはりトリとあって、すごい盛り上がりだった。


「visionTXは別に仲悪いわけでもなくて、このメンバーで、ずっと続けていくんだろうなと思ってたけど、オレのワガママで、解散することになった。でも、こうして駿と、カンジと、別のバンドだけど、また東京で一緒にライブやれて嬉しいよ。まあ見ててよ。オレらのこと。良い曲どんどん作って、visionTXより、良いバンドって言わせてみせるから」


MCはルキアくんの本音だろう。自分のせいで、visionTXが解散してしまったこと、ずっと気にしてたのだろう。

期待してたファンもいたかもしれないが、今日はvisionTXの復活はしなかった。もう、それぞれで演っていくほうがいいと思ったから。



ライブが終わり、楽屋にspeck crewのマサトが来た。

「よおー。駿、カンジ久しぶり。ルキアとは会ったけど」

マサトが、言った。

「マサトさん。来てくれたんですかっ。嬉しいです」


駿くんは、マサトがライブに見に来てくれたことをとても喜んでいた。


地道な活動ではあるが、ギタリストではカリスマ的な存在のマサト。同じギタリストとして、駿くんはマサトを尊敬してるのだろう。


「よお。京子。元気そうだな」

楽屋に、入ってきた私を見て、マサトが言った。


「えっ。マサトさん、京子さんを知ってるんですか?」

駿くんが、驚いて言った。


「京子は、オレの大学時代の元カノだよ」

マサトのやつ。ここで、言わなくてもいいことを。


「えっ。京子さんが元カノ?」

駿くんどころか、カンジくんも、ルキアくんも驚いていた。


「そう。オレがメジャーデビュー出来たのは、京子のおかげなんだよ」

また余計なことを、マサトは言った。



みるみるリョウタの顔は、不機嫌になっていった。



打ち上げは、メンバーとマネジャーの真吾くんで、してもらうことにした。

私は恭ちゃんが気になったので参加しないことにした。それに男同士のほうがいいだろう。


「でも、驚いたような。京子さんがマサトさんの元カノだったなんて」

カンジくんが言った。


「社長さん。やっぱりタダものじゃないね。見抜く力は、あるってわけだ」

ルキアくんが言った。


でも、駿くんは、前からリョウタがマサトのことを言うと機嫌悪くなるのに気づいてたらしく、カンジくんとルキアくんに、それ以上言わないように目で合図した。



確かに、せっかくの東京でのライブの打ち上げなのに、リョウタが機嫌悪くなり雰囲気悪くなるのも良くない。



「京子さんは、すげーよ。オレのことも髪やメイクで、改造してくれたし、センス抜群」

Avid crownのボーカルの裕太くんが言った。


「だからリョウタは、その京子さんが選んだ男だから、間違いないよ」

裕太くんが言った。

裕太くんは、リョウタに気を使って少し、フォローしたにちがいない。


「音楽は詳しいなと思ってたけど。でもオレのワガママを全身で聞いてくれたのは、京子だけだから」

リョウタが言った。



「じゃあ、オレら、売れちゃうかもねー」

ルキアくんが無邪気な笑顔で言った。




リョウタがホテルに帰ってきた。

私は、恭ちゃんと寝ていた。

リョウタは、ベットに座り私と恭ちゃんの寝顔を見てた。



ずっと好きだった人が、妻になり家族になって、オレの帰りを息子と待っていることが不思議だった。11年間、オレの想いは、ぶれることがない。だから、こうして、今そばにいることが、愛しい。



オレあの時、東京に行きたかったのだろうか。

想っても追い付かない想いを振り払うためか、それとも、メジャーになったら、京子がオレのことを対等に考えてくれるかもしれない。と、浅はかな考えだったような気がする。




京子と、一緒に東京に来て、今夜ライブ出来るなんて、それが本当のオレの夢だったかもしれない。



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