表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/175

自分にないもの。

「京子っ。いつまで、喋ってるんだよ。もう30分も喋ってるんだぞ。いい加減にしろっー」

リョウタが、電話口に、わざと聞こえるように言った。

『リョウタさん、また嫉妬してるみたいですね。じゃあ、またね。社長さんー』

そう言って、ルキアくんは電話を切った。


「ライブの話してたのよ。つまり仕事の話なの。なんで、あんな風に聞こえるようにいうのよ。感じ悪いよ」

私は、リョウタに言った。

「ふんっ。若くて、イケメンのルキアくんと喋って、嬉しいくせに」

もうー。東京のライブでの打ち合わせしてたのに。ルキアくんは、東京にいて、会って打ち合わせ出来ないんだから、電話で、するしかないのに。


「不倫したら、許さないからなっ」

なんで、そういう方向に持っていくかな。


「許さないって、もし私が不倫したら、別れるの?」

「わ、別れないけど」

リョウタは、最近、ルキアくんに嫉妬して、いちいち面倒くさい。


「私が、リョウタと恭ちゃんを裏切って、不倫する女に見えるの?だったら、ひどい。」

「見えないけどっ。京子は、そんなことする女じゃないって分かってるけど。ルキアくん、若くてイケメンだし、オレだって心配になるだろっ」


「ルキアくんより、恭ちゃんのほうが若くて、イケメンだよ。」

そう言って、私は眠っていた恭ちゃんを抱き締めた。



「まあ。確かに、恭のほうが、若いけど」




休憩時間に、リョウタがコンビニ行ったとき、まかないを食べながら、花江が言った。


「それは嫉妬しても仕方ないじゃない。相手はルキアくんだもの。しかも、京子、ルキアくんに告白されたんでしょう。それじゃリョウタくん、気が気じゃないわよ」


でも、ルキアくんと電話すると、いちいち、ネチネチ、グチグチ言うから、たまったもんじゃない。これじゃあ、ライブの話が進まない。


「京子だって、リョウタくんが若い女と仲良くしてたら、嫌でしょう。」

「うーん。最近は仕方ないかなって思う。私、41歳だし、顔だって、スタイルだって、確実に老けてきてるんだから。リョウタが、若い女の人、仲良くするくらいは仕方ないかなって。あんまり縛ったら、かえって浮気されそう」


「そういうの。リョウタくん、かえって気にするんじゃないの。京子は自分に関心ないんだって思ったら、どうするのよ」


花江は、私と違って感情が豊かだから、わかりやすいが、私は仕方ないって、引いてしまうとこあるから伝わりにくい。



「人って、自分にないものを持ってる人に、嫉妬してしまうよ」

花江は、まかないを、たらいあげて言った。


ルキアくんにあって、リョウタにないもの。若さ?

でも私から見れば、リョウタもルキアくんも、年下だし、どっちも若い。


リョウタも、若い人に嫉妬するようになったのかー。リョウタも、年をとったんだね。



「京子、靴下脱がして」

「京子、耳掃除して」

「京子、着替え」



リョウタは、嫉妬してると、あれやって、これやってと要求が強くなる。

恭ちゃんより、手が掛かる。



「パパー。絵本読んでー」

リョウタが、恭ちゃんに絵本を読んでるうちに、下で洗濯物たたもう。



「パパ、どうして、柴犬のタロウくんは、お母さんを探しに行ったの」

絵本の内容は、柴犬のタロウくんは、他の家で飼われるために、お母さん犬と離ればなれになった。しかしタロウくんは、お母さん犬に会いたくて旅に出たのである。



「お母さんに会いたいから。お母さんのそばに居たいからだよ」

リョウタは、恭ちゃんに言った。

「恭だって、ママと離れたら嫌だろう?」

「嫌だー。ボクはママのそばに、ずっといるー」



洗濯物を畳んで、二階に行くと、リョウタは、ベットで、読み聞かせをしてるうちに寝てしまったらしい。

恭ちゃんは、絵本を見てた。



「ママー。愛してる」

恭ちゃんが、私に言った。愛してるって言い方、誰に教えてもらったんだろう。


「パパが、ボクに言ってた」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ