エゴ
真吾くんが、飲み会に、顔を腫らしてきた。
「どうしたの?その顔?」
「紀香に殴られた」
顔が腫れるくらい殴るなんて、紀香ちゃん、どういう殴りかたをしたのだろう。
「同級生の女子とメールやりとりしたら、殴られた。」
理由は、それだけではないだろう。
「その女子と、ちょっと、飲みに行く約束してしまって、そのメールを紀香に見られて、グーで、3発殴られた」
「こえー」
カンジくんが言った。
真吾くんも、紀香ちゃんは、妊娠してるんだから、気を付けないと、そういうことで、妊婦さんを不安にさせてはいけない。
「なんで、女って、殴るんだろうな」
リョウタが言った。
「オレも、京子じゃない女と、付き合ってたとき、何人かに殴られた。オレが金目当てで、付き合ったオレが悪いんだけどさ」
リョウタは、そんな何人ものの女性に殴られたのか。悪い男だ。
「京子さんには、殴られたことないの?」
真吾くんが、言った。
「京子には、ない。1回もない」
「浮気したときは?」
「殴られないよ。リョウタが、好きな人と、付き合ったらいいよ。今まで付き合ってくれて、ありがとう。と言われた」
「京子さん、大人ー」
駿くんが感心して、言った。
「いや、それ、あっさり言われて、傷ついたよ。京子は、オレに感情ないんだなって」
リョウタが、20歳のときに、1回浮気した時のことである。
「でも、やっぱ冷静で大人だよ。オレ、包丁だされた時あった」
カンジくんが言った。それは、かなりヤバイ。カンジくんは、一体どんな悪さしたんだろう。
「アパートで、女同士で、鉢合わせて、修羅場。」
まあまあ、こいつらの場合、イケメンで、モテたから、そういうことも、あるだろう。
リョウタが、飲み会が帰ってきた。
「早かったね」
「京子に、会いたかったから」
リョウタは、後ろから私を抱きしめた。
「真吾くんが、紀香ちゃんに殴られたって顔を腫らしてきた。なんで、京子は、オレを殴らないの?浮気したときも、殴らなかっただろ」
リョウタは、聞いてきた。
「殴ったら、リョウタ痛いでしょう。リョウタが痛い思いするのが、嫌だから」
私は殴られて、愛情を感じない。
私が、高校の時、進路を決めるとき、美術大学に行きたかったが、母親は、大反対だった。美術大に行っても、まともに就職できないのに、不利だ。就職に有利な大学に行くべきだと、私の行きたい大学を受け入れなかった。美術大に行くなら、学費は出さないと言われた。それでも、「どうしても行きたい」と、歯向かった私は、母親に、ヒステリックに叩かれた。
愛情があるから殴ると美談にする親もいる。確かに、あと腐れなく殴る親もいて、わだかまりのない親子もいるだろう。
しかし、私は母親に叩かれた時に、全く愛情を感じなかった。母親は、私が自分の思い通りにならない苛立ちから、叩いただけ。
叩いて、「私は、親だから言うことを聞きなさい」って、自分を優位にしたいだけ。
お金のない高校生の娘の弱いところをつき、責める。
大学行きたいなら、言うことを聞けと、ただの親のエゴだ。
大学行きたいなら、いつでも行ける。自分で働いて、行くこともできるだろう。そして、私は、親の言う通り、人気のある私立大に行った。そう、親の言うとおりにして、家を出ることを選んだのである。
だから、私は、恭ちゃんが、反抗期がきたとしても、恭ちゃんを殴ることはないだろう。私は、恭ちゃんを叩きたいという感情はない。私と同じ思いは、子供に絶対させたくない。
もし、愛情を持って、恭ちゃんを叩いたとしても、恭ちゃんは、愛情で、叩いてくれたと思うだろうか。思わないだろう。ヒステリックな母親と、思われたら、私は、哀しい。
「でも、京子なら、殴ってもいいよ」
リョウタが言った。
「京子なら、愛を感じる」
リョウタ、それって、Mだよ(笑)
今月は、少し忙しくなるので、更新少ないかもしれません。
いつも、読んで下さってる方々、ありがとうございます。




