婚約。
「リョウタ。私と恭ちゃん、婚約したよ。さっき、恭ちゃんにプロポーズされたの」
ソファで、ジャンプを読んでたリョウタは、『へっ?』という顔をした。
「誓いのキスもしたんだもんねー。もう一緒にお風呂に入る仲なんだもんねー」
「ねー」
私と恭ちゃんは、手を繋いで、リョウタに報告した。
「ふーん。じゃあ、京子、重婚じゃん」
リョウタは、呆れたように言った。
「じゅうこんって、なあに?」
恭ちゃんが聞いてきた。
「ママは、パパと結婚してるのに恭とも結婚すること。普通は一人の男としか結婚出来ないの」
なにも。子供の夢に水を差すようなことを言わないでもいいのに。リョウタ、子供相手に、意地悪だ。
「嫌だー。ボクはママと結婚するー」
恭ちゃんは、泣き出した。
「ママは、恭ちゃんと結婚するよ」
実際は、出来ないが息子からプロポーズされるなんて、嬉しいじゃないの。
「えっ。披露宴?」
真吾くんと、二人で飲みに言った時に真吾くんが言った。
「オレと京子、式は身内だけでしたけど、披露宴はやってないんだよ。恭が京子にプロポーズしたって、京子が喜んでたから、オレ達も披露宴やりたいなーと思って。最近、披露宴に出席するのも多いから、一層思ってさ」
私は披露宴は断固拒否したのである。晩婚だったし、皆さんにお披露目するほどではない。誰が私のウェイディングドレスを見たいだろうか。
「やったらいいさ。甲斐の披露宴は、好評だったし、リョウタくんも、ライブ感覚で、やったら?ライブハウスで、披露宴パーティも良いんでないの」
「なるほどー」
「甲斐の倉は、ライブするのはいいけど、料理を準備するの大変だから難しいから、会場決めるのオレに任せてくれる?京子社長が喜ぶようなハコを探すからさ」
こうして、もろもろの段取りは真吾くんがすることになった。
「えっ。披露宴パーティ?何で今さらするの?」
私は、突然、リョウタが言い出したので戸惑った。
「披露宴かなり出席してるうちに、オレ達もしてもいんじゃないかって。仲良い人を呼んで、披露宴したいなーって思って」
それは、私達は披露宴に呼ばれることが多い。でも、私は、41歳だし、気が進まない。
「ドレス着ないなら、いいよ。ワンピースでも、いいなら」
「なんでたよ。披露宴パーティなのにドレスだろーが」
絶対嫌。41歳がウェイディングドレス着るなんて、馬子にも衣装みたいなもの。私の場合、10歳下のリョウタとドレス着て並んだら、絶対。年の差がでる。招待客が来るのに嫌だ。若作りにも限界がある。
「今、晩婚多いし再婚でも披露宴するし、40代50代で、ウェイディングドレス着るのなんて、当たり前だろ。ウェイディングドレスだって、選べるんだから、年相応のドレスあるだろ」
そりゃあ。大人ぽっいウェイディングドレスもあるだろうけど。
でも、みんなが見るのに、恥ずかしい。
「なんで41歳でも、京子、綺麗なのに、そんな見た目気にするんだ。おかしいよ。気にしすぎ。恭だって喜ぶだろ」
そこまで、言うなら、折れるしかない。
会場は決まった。真吾くんが、真吾くんの友達のお父さんが、趣味と道楽でやってるジャズバーを見つけてくれたのである。
「ジャズバーだからライブできる状態だし、道楽の店のわりには意外と広い。ただ、バーだから、ツマミ程度だから、パーティ用の料理は、できないと思うから、紀香とも話したんだけど、京子さんの料理教室の生徒さんが作るのはどうかな。生徒さんも京子先生のお祝いのために作りたいと思うし。まあ、京子さんほど、上手くは出来ないと思うけど」
真吾くんが、リョウタとの打ち合わせの時に言った。
私は、ウェイディングドレス着てくれれば、いいからと、段取りは、真吾くんが中心でやっている。
真吾くんは、東京の企業で営業やっていたし、今、農業青年会の会長をやっているせいか、段取りが素早いし、まとめ役も適してる。
「招待客だけど、けっこう増えそうでさ。で、幼稚園のママ友と、恭の友達を呼ぶのが難しい。仲良い人一部だけ呼ぶと、『うちの子呼ばれない』とか、なるよね」
リョウタが、真吾くんに相談するように言った。
「だったら会費制にするんだから、一応、その恭ちゃんの組の人全員に、通知して、出席希望のかたは出席みたいな形で、いんじゃない。」
確かに、仲良くしてるようなママ友でも、お金だしてまで、参加したくない人もいるだろう。
「あと、曲だけど、京子さん、どのアーティスト好きなの?」
「古い洋楽とか、亡くなったギタリストとか」
「偉大な故人ばかりだな。」
そう伝説の偉大なるスターばかり好きだ。存在感が、すごくて、いつまでも残る。
リョウタが、幼稚園行ったときに、披露宴パーティのお知らせの紙を父兄に配った。
「都合悪い人もいると思うので今週中にメールで、いいので出欠のほうを教えてください。」
園児は会費は無料である。
「あのー。私、あまり笹原さんとお話ししたことないんですが子供に、こういうパーティとか経験させてやりたいので参加していいですか」
確かに、いつも他のママ達と、あまり喋らない聡くんのママが言った。
「いいですよ。ぜひ参加してください」
リョウタが聡くんのママに言った。
出席者が意外と多かった。
幼稚園関係は、恭の組の人の8割くらい親子で参加するみいだ。
あとは私の友人は、中学までの友人は、花江を含めた女子会グループと、高校は慶子夫婦。大学は理恵夫婦。料理教室の受講生は料理を用意をしてくれるので、全員参加する。
私の両親と兄家族。リョウタの両親と義兄家族。
仲の良い常連客。
リョウタは翼くん家族。あとは同級生の友達は、遠いので、呼ばないらしい。バンド関係の仲良い人を呼ぶらしい。
ウェイディングドレスをリョウタと揉めながら、決めたし、真吾くんが司会やるらしいし、あとは披露宴パーティの日曜日を待つばかりだ。




