結婚ソング
幼稚園の父兄にも、色んな人がいる。
私の苦手とするタイプもチラホラいる。
「笹原さーん」
来た。来た。道郎くんのママである。
「笹原さん。今日も素敵です。そのニット、ブランドですか。笹原さんって、センス抜群です。私より5歳も年上に見えません。若いです」
ったく。5歳上とかって、人の年齢を勝手に公表するなーつの。
道郎くんのママは、とりあえず誉めとけば、印象が良いだろうという考えみたいで、会えば、しらじらしい、オーバーな誉めかたをする。あんまり、しらじらしい誉め方なので
バカにしてんのか。
と、ムカつく時がある。誉めりゃいいってもんでもない。まるで、この人は、誉めときゃ、簡単よ。みたいに、見下してる感じがする。
「紗良ちゃんのママと話したことあります?昨日、少し話したんですけど、すごーい良い人っ。」
へえー。少し話しただけで、良い人と、判断できる道郎くんのママは、すごいわー。
どうみても人を見る目がありそうにみえないけど。
「すいません。主人が、車で待ってますので、失礼します」
私は、話が長引いても嫌なので、切り上げようとした。
「ご主人いらっしゃってるんですか。すごいイケメンのご主人で、羨ましいです。私、ぜひ、ご主人に、ご挨拶したいです」
道郎くんのママが、目を光らせて言った。
面倒くさいー。
「すいません。今日は今から出掛けるので、いいです。私から、道郎くんのママが、挨拶したかったことは、主人に伝えておきますので。それでは、失礼します」
私は、恭ちゃんの手を握って、小走りに、その場を去った。
「遅かったな」
リョウタが言った。
「道郎くんのママに、捕まったの」
「あー。あの、やたら持ち上げるママか」
道郎くんのママ、ママ友作ろうと必死みたいだが、ちょっと、アピールの仕方が間違ってる気がする。
私は、すごく苦手なタイプ。
きっと、のちのち、「笹原さんだから言うけど」「笹原さんに相談があるの」
私の嫌いな前置きのセリフを使って、取り入ろうとするだろう。
たいてい、信用できない言葉だ。
酒蔵の跡取り息子の甲斐くんが結婚することになった。
以前、Avid crownが、この町で、ワンマンライブするときに、倉を貸してくれた人である。真吾くんの同級生でもある。
そこで、真吾くんに、ロックなwedding songを歌ってほしいと、リョウタが頼まれたのである。
甲斐くんは、大学時代に、バンドを組んでで、ロックが大好きだ。
甲斐くんらしい結婚式にしたいし、リョウタに歌ってほしいということだ。
で急遽、新バンドを組むことになった。
リョウタが、ボーカル&ギター、駿くんがベース、カンジくんがドラムで、スリーピースバンドを組んだ。
駿くんは本来はギターなのだが、ベースも弾けるということで、ベースになった。
そういうことで、日曜日は、三人で練習してる。
やはり酒蔵の跡取り息子の結婚式とあって、式は昔ながらの家でやるらしい。
披露宴は、町一番の大きな会場で盛大にやるみたいだ。
駿くんの披露宴の時みたいに、かなりの招待客みたいだ。
披露宴当日。
甲斐くんの大学時代の友人もきて、すごい賑わいだった。
こんな大勢の招待客の前で、リョウタ達が演奏するのである。
酒組合の偉い方もきている。
でも、甲斐くんがロックな披露宴にしたいみたいだから。
偉い方の祝辞が多くて、新郎新婦の友人達は、飽き気味だった。
「次は、『RSK』さんに演奏して頂きます。」
昔のロックで会場は盛り上がった。
カンジくんは久しぶりのドラムにもかかわらず、すごい迫力だった。
即席のバンド。『RSK』は、私の事務所「Avid 」の所属バンドになった。
リョウタは、バンドを掛け持ちすることになるが、今は、珍しいことでもない。
そして、『RSK』のマネジャーを真吾くんが、やることになった。




