調査報告。
「どうやら、旦那が浮気してるみたいなのよ」
花江の旦那さんが浮気?奥さんが花江なのに、浮気するなんて、すごい度胸だ。
「水商売の女に入れ込んでるらしい」
ああ。水商売ね。では、浮気ではないだろう。営業に利用されてるだけだろう。
「この辺の店は、ホステスは、オバサンばかりでしょう」
私が花江に言うと
「そうなのよ。その相手が腹立つのよ」
花江は、怒りが込み上げたのか、注文したステーキに、フォークをぶち刺した。
その花江の旦那さんが入れ込んでるホステスは、スナック「ルーツ」のアケミという源氏名らしい。
花江が言うには、若いホステスに入れ込むなら、理解もできるが、アケミさんは、46歳らしい。自分より年上の女に、入れ込むのが許せないらしい。
でも、この町のスナックのホステスにしては、46歳は若い方だろう。花江の旦那さんよりは、年下ではある。
花江の旦那さんは、アケミさんに会いたさに、毎日のように、そのスナックに通ってるらしい。
「私が気に入らないのは、アケミの身の上ばなしよ」
アケミさんは、離婚して、シングルマザーで、二人の子供を育てるために、昼はお弁当屋で、働き、夜は、ホステスをしているという同情をひきたいような話をしたらしい。
なんか、うさんくさいな。
「私、調べたのよ。そのアケミって女のこと」
さすが、花江だ。花江の調査力に、右にでるものはいないだろう。
アケミさんは、昼は、お弁当屋で、働いてるのは本当らしい。で、高校生の息子さんと、娘さんがいるらしい。
アケミさんは、隣の町の人で、わざわざ、この町のスナックまで、来てるらしい。
「隣の町なのに、うちの町に、わざわざ来ているということは、身元がバレたくないからだと思うのよ。知らないオヤジを相手する方が話を作りやすいからね」
「でさ、誰かアケミのいるスナックに、調査するために、行ってほしいんだけど。京子、リョウタくん達に頼めない?」
花江はリョウタ達に、そのスナックに行って、アケミの行動を監視してほしいというのだ。
「オレ、やだ。絶対やだよ。もう、オバサンのホステスは、懲り懲り。真吾くんと駿くんも、嫌だと言うよ。他の人に頼んでくれ」
あー。リョウタ達は、熟女パブで、散々な目にあったからか、オバサンホステスが相手は、嫌らしい。
ということで、花江は、同級生のバツイチの村越くんに頼んだ。
調査報告は、うちの店ですることになった。
「村越くん。お疲れさま。今日は、好きなのを頼んでいいわよ。ワインもいいわよ。」
花江は、村越くんに言った。
「佐藤さんちのじいさん、いるだろ。佐藤さんちのじいさんも、アケミってホステスにかなり貢いでるみたいだ。なんでも、アケミの息子が、重病で入院してるからと言われ、佐藤さんちのじいさんは、金を30万円貸したみたいだ。その金は、おそろく返す気ないだろう」
30万円?!佐藤さんちのじいさんは、82歳だ。そんな年寄りから、金を巻き上げるなんて、タチ悪い。
「その息子が入院してるって話も本当かどうか。あと、シングルマザーを売りにしてるらしいが、オレの高校の同級生が隣町にいるから聞いたんだけど、旦那は、いるみたいだ。別れてないみたいだ。なんでも、6歳年下の旦那で、三ヶ月前にリストラされたみたいだ。そのアケミって女が、この町のスナックで、働きだしたのも、三ヶ月前みたいだ。」
「なるほどね。」
村越くんが言うには、田舎のスナックだから、同伴やアフターは、ないが、アケミは、他の客にも、ブランド品を貢がせてるみたいである。
「実はさ。昨夜。旦那に、友達の子供が入院したから、お金を貸してやりたいから、10万円くれと言われたのよ。」
花江が言った。
「それは、アケミのもとに行くと思うな」
そのアケミは、年のわりには細くて、綺麗なホステスらしい。客に、持ち上げも上手くて、その気になる男もいるみたいだ。綺麗な女に、頼られれば悪い気しないから、オッサン達は、つい金を貸してしまうんだろう。
でも、花江は、旦那に金を渡して、泳がせるみたいだ。
日曜日に、花江と、恭ちゃんと、隣の町のショッピングタウンに行くと、ある家族が、仲良さそうに歩いていた。
「京子。あの女が、アケミよ」
花江は、家族の母親らしい女を見た。
重病で入院しているという息子さんは、髪を茶髪にし、ピアスをし、元気そうだった。娘さんらしき人は、高校生なのに、ヴィトンの長財布を持っていた。アケミは、CHANELのバックを持っていた。
「お父さん、焼き肉行こうよ」
家族は、実に楽しそうだった。
シングルマザーが、聞いて呆れるよ。
でも、何より許せないのは、息子を病気で入院しているという嘘をついたことだ。
自分の子供を美談のために、病気にしたてるとは、母親として、すべきことじゃない。
最低だ。
花江の旦那は、金を持って、アケミのスナックに行ったみたいだ。
「アケミさん。これ息子さんの入院費の足しにして。見られるから、早くしまって」
花江の旦那さんは、お金が入った封筒をアケミに渡そうとした時
「ちょっと、待ったーっ」
花江が、仁王立ちで、立っていた。
「そのお金は、私のよ。アンタみたいな女に渡すわけには、いかないのよっー」
花江は、叫んだ。
「このアバズレ女めっ。じいさんが渡した30万円返せー」
花江の隣には、佐藤さんのじいさんの奥さんのタキエばあさんが、杖をついて立っていた。
「うちの旦那が貢いだ物も返しなさいよっ」
その他に、旦那さんがアケミに貢いだという奥さん達もいた。
「ふんっ。あんたらの旦那が勝手に私に貢いだのよ。なんで返さなきゃいけないのよ。あんたらが、旦那を粗末に扱うから、私が優しくしてやったのよ。感謝しなさい。だいいち、あんたらの金じゃないだろ。旦那が汗水働いた金なんだよ。働かないで家でごろごろしてるアンタらに言われる筋合いないねー」
アケミは、開き直ったように言った。
「旦那の金は、私が働いた金よっ。私達が、旦那が働きやすいように家事をやってるから、働けてるのよっー。だから、アンタみたいな女に金を渡すわけにはいかないのよおっ」
花江は、言った。
「ここのオーナー出して。私達の被害金額を出したから、こっちは、警察に行ってもいいのよ。こんな詐欺女を雇って、オーナーの責任ね。この町で、商売できなくなるわよっ。それでも、いいのお」
花江は、啖呵をきった。
スナックのママらしき人が慌てて、奥さん達に謝罪した。
そして、アケミは、この町に出入り禁止になった。
リョウタのバンド Avid crownのミニアルバムが、売れてるようで、地方銀行のローカルCMソングにと、Avid crownに依頼が来ている。
それを、聞きつけて、ローカルの芸能プロダクションの「B事務所」から、Avid crownにマネージメント契約を結ばないかと言われたらしい。
「京子。どう思う。マネージメント頼んだほうがいいか」
リョウタに聞かれた。
「B事務所は、ダメよ。止めたほうがいい」
私は、言った。
B事務所と言えば、県内では、一番名の知れてるローカル芸能プロダクションである。しかし、いい噂は聞かない。
ローカルテレビ局で、働いてる理恵も言ってたが、レポーターを依頼すると、高いギャラを要求され、それに応じないと、素人のアルバイトみたなレポーターをよこされるらしい。
そして、所属タレントやDJの取り分は、かなり安いらしい。
リョウタが、いいように利用されて働き損はさせられない。
「Avid crownのマネージメントは、私がするわ」
こうして、私は、Avid crownの事務所「Avid」を設立した。




