表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/175

レベル。

「まあ。ケンちゃん、久しぶりー」

下で、母親が、驚いてか、声が響いた。

「京子、ケンちゃんよー」

私が二階から、下に降りていくと、幼馴染みのケンちゃんが来ていた。

「京子ちゃん。すごい若い。美人のままだね」

近所の家の野々村健介。私の3歳上だ。小さい頃、ケンちゃんと、私の兄と、よく遊んだ。ケンちゃんは、東京の大学をしたあと、一流企業に就職し、しばらく外国勤務だった。最近、日本の本社に移動になり、部長になったらしい。

「お世辞は、いいわよ」

私は、ケンちゃんに言った。

ケンちゃんは、背が高く、44歳のわりには、スタイルがよく、落ち着いた感じの男性になっていた。

「えっ。誰?おばさんに、こんな大きなお孫さん?」

ケンちゃんが、ついてきたリョウタを見て言った。

「ケンちゃん、違うわよ。息子よ」

お母さんは、笑いながら言った。

「息子?京子ちゃんに、弟いたっけ?」

ケンちゃんは、また驚いた。

「はあ?誰が、弟だよっ」

リョウタは、ムッとして言った。

「ケンちゃん、婿よ。娘婿のリョウタくん」

「えぇー。こんな若い旦那さん?!京子ちゃんが結婚して帰ってきたとは、聞いてたけど。年下かあ。びっくりだな」

「誰、こいつ?失礼な奴だな」

リョウタが、またまたムッとして言った。

「幼馴染みのケンちゃんだよ。小さい頃、よく遊んだ」

「そうそう、よく遊んだね。京子ちゃんとは、一緒にお風呂に入った仲なんだよ」

ケンちゃんは、わざとか、意味ありげにリョウタに言った。

「なんだよ。それ」

リョウタは、私に、どういうことだ?みたいな顔して聞いてきた。

「3歳のときの話だよー」

リョウタは、ふんって、顔をした。

「そんなことで、嫉妬するんだ?やっぱり若いから子供だねー。旦那さん」

ケンちゃんは、挑戦的にイヤミをリョウタに言った。

リョウタは、ムッとしてたが、オッサンを相手にしてられないって感じだった。


ケンちゃんは、休みをとれたので、一週間くらい実家にいるらしい。奥さんとお子さんは、来なかったらしい。



「なんなんだよ。あのオッサンっ。むかつくっ」

ケンちゃんが帰ったあと、リョウタは、怒っていた。

「一流企業の部長かなんかしんないけど、感じ悪い」

ケンちゃんとは、ケンちゃんが大学の時以来、会ってなかった。優しい近所のお兄さんっていうイメージしかない。




兄が店に来た時に、ケンちゃんが、帰ってきてると教えたら、

「へえー。久しぶりだな。すごい美人の奥さんと結婚したとは、聞いたけど。」

懐かしそうに兄は言った。

「でも、京子のこと、好きだったのかなーと、オレが高校ん時、思ってたな。そういう記憶」

兄よ。余計なことは、言わなくていい。




リョウタが休憩時間にコンビニに出掛けた時、偶然、ケンちゃんに会った。

「こんにちは。京子ちゃんの旦那さん」

ケンちゃんは、自分からリョウタに声をかけた。

「オレ、京子ちゃんのファーストキス奪ったんだよ」

ニヤリと笑って、ケンちゃんは、リョウタに言った。

「だ、だから、なんですか」

リョウタは、動揺しつつ、平静を装った。

「オレ、あの頃は、京子ちゃんと結婚すると思ってた。それが、こんな若い旦那さんとは。京子ちゃん、顔で選んだみたいだね。お店、京子ちゃんがオーナーなんでしょう。京子ちゃんは、頭いいから、こんな頼りない旦那さんで、バランスとれてるか」

皮肉たっぷりに、リョウタは言われた。




リョウタは、すっかり、イジケてしまった。

なんで、リョウタに、そんなこと言うのよ。ケンちゃん、嫌な感じ。

ファーストキスだって、私が高校生で、ケンちゃんが大学生の時、勝手に、ふいうちに、されただけ。

私は、ケンちゃんのことを、近所のお兄さんにしか見えなかったから、ファーストキスの相手という認識もない。





休みの日に、ショッピングモールで買い物をしてると、ケンちゃんに、偶然会った。

「京子ちゃん」

私は、ケンちゃんの顔をみて、怪訝そうにした。

「なんで、リョウタに、あんなこと言ったの?ファーストキスを奪ったとか、人の旦那さんにいうなんて、ありえない」

「えっ。昔のこと言っただけだろ。そんなことくらいで、怒ってんの?京子ちゃんの旦那さん、嫉妬深いんだ?面倒くさいねー。」

ケンちゃん、少しバカにしたように笑った。


「リョウタは、純粋なの」

嫉妬深いと、違う気がする。

「純粋って、一応、子供いて父親なんだろ?いつまでも、少年の心とか言わないでくれよ」

やはり、人って変わるんだ。一流企業の部長かなんか知らないけど、上から目線だ。

「ケンちゃん。底意地悪いね。そんなんじゃ、会社の若い部下に嫌われてるよ。イヤミなオッサン、むかつくって言われてるよ。それじゃあ、出世したって、嫌われもののオッサンになっただけだよ。部下からの信頼度は、0ってなわけ。わたし、性格の悪いオッサンは、嫌いだから、じゃねー」

私は、ケンちゃんに皮肉たっぷり言って、別れた。



でも、なんか、年をとるって、寂しい。

優しい心を持った兄のような人が、年をとり、どこにでもいる会社の嫌な上司みたいなオッサンになってて、気持ちが汚れていくんだね。

若い人を、ひがむって、みっともないな。

自分も、若いときが、あったのに。




「リョウタは?」

家に帰って、母親に聞いた。

「上に行ったのかしら?さっきまで、ここで、『京子が、帰ってこない』って、泣きそうだったのよ」

私は、二階に行った。

部屋に行くと、リョウタがいた。

「リョウタ。大好きだよ」

私は、そう言って、リョウタを後ろから抱きしめた。

リョウタは、安心したように嬉しそうに微笑った。



花江の娘さんの由衣ちゃんが「この町のイケメンは、レベルが高い」って言ってた意味が解った気がする。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ