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おもいやり。

4月から、恭ちゃんが、幼稚園ということで、リョウタの両親が、入園祝いも兼ねて、日曜日に遊びに来た。

恭ちゃんは、また皆が集まったので、大喜びだった。


リョウタの両親から、お祝い金の他に、恭ちゃんの服を頂いた。

「子供って、すぐ大きくなるから、洋服は何着あってもいいと思ったから、つい買っちゃって」

リョウタのお母さんは、子供のブランド服を何着も買ってきた。

確かに、洋服は、すぐ小さくなるから、ついつい安い服を買ってきたりする。良い製品のものを頂くのは、ありがたい。



昼食を、食べて、私が片づけてると、キッチンにリョウタのお母さんが来た。

「京子さん、恭ちゃんも、そろそろ兄弟が、ほしいんじゃないかしら」

リョウタのお母さんから、二人目を催促されるように言われた。

そうだよね。今まで、リョウタのお母さんは、私に二人目は、まだ?と催促することはなかった。でも、思ってたけど、言わなかっただけなんだろう。私も40歳だし、恭ちゃんに、兄弟をと言われても仕方ない。

「すいません・・」

私は、子供ができにくい体なので、思わず謝ってしまった。

「京子さん、謝らなくていいのよ。こればかりは、自然なことだしね。いいのいいの。ただ恭ちゃんが、幼稚園に行ったら、妹か、弟が欲しくなるじゃないかと思って言っただけなの」


その様子をリョウタは、見ていた。



「母さん、ちょっと」

リョウタは、リョウタのお母さんを庭に呼んだ。

「なによ」

「母さん、京子に、二人目を催促するようなことを言わないでくれないか。それじゃ、人の家を干渉する小うるさいババアと同じじゃないか。京子は、二人目できないこと気にしてるかもしれないのに、母さんは、デリカシーないんだよ」

リョウタは、怒り口調で言った。

「私は、ただ恭ちゃんが、寂しいと思って言っただけよ」

「恭が、寂しい思いさせないくらい、京子は、恭に、どんだけ愛情注いでると思ってんだよ。適当なこと言うな。そんなに孫欲しいなら、アニキの嫁さんに言えばいいだろ。近くに住んでるんだしよ。アニキの嫁さんの方が京子より、若いんだから、三人目催促したらいいだろーが。」

リョウタがムキになって言ってると、リョウタのお母さんは、クスッと笑った。


「なんだよ。何がおかしいんだよ」

リョウタは、ムッとした。

「安心した。リョウタが、京子さんを思いやる気持ちを持ってて。本当は、リョウタが婿にいって、やれるか少し不安だったの。京子さんと10歳も年が離れるてるし、いずれ、上手くいかなくなるじゃないかって。京子さんのほうじゃなくてね。リョウタは、自由でワガママなとこあるし、リョウタじゃ婿が務まるかなって思った。でも、安心した。京子さんを大切にしてるみたいだから。それは、京子さんがリョウタを大切にくれてるからだね、きっと」

リョウタのお母さんは、ほっとしたような顔で言った。




リョウタの両親が帰ってから、お祝い金の封筒を開けてみた。

お祝い金10万円が入っていた。

「こんなに、頂いていいのかしら」

私は、金額が多いのに戸惑った。

封筒には、リョウタのお母さんから、私宛の手紙が入っていた。


「京子さん。いつも気遣いありがとうございます。お正月の温泉は楽しかったです。

リョウタは、ワガママなところがあるので、恭ちゃんの他に、リョウタの世話まで大変だと思います。でも、嫌な顔もせず、いつも私とお父さんを誘ってくれて、嬉しいです。

リョウタは、反抗期の頃からか、あまり親と話さなくなりました。たぶん、長男との親の期待の差に、リョウタは気づいたのでしょう。専門学校のために、家を出てからは、家にも帰らなくなりました。私達が、そうさせたのでしょう。でも、今になって思います。子供への期待って、なんだったんだろうと。良い大学に行って、会社を継いでもらうことが、期待だったのだけれど、長男は、結婚して、変わりました。近くにいても、親子の距離は遠いです。でも、リョウタは、結婚して、離れていても、リョウタとの距離が近くになったように思えます。そうさせたのは、京子さんじゃないかと思います。リョウタに、そっくりの恭ちゃんを見ると、リョウタが小さい頃、私にベッタリだった時を思い出します。

京子さん、恭ちゃんを産んでくれて、ありがとう。そして、これからも、リョウタを宜しくお願いします」



私は、手紙を読んで涙が止まらなかった。

今日、リョウタのお母さんが、二人目を催促したのは、ほんとに、何気なく言ってしまったのだろう。孫が、兄弟が欲しいだろうと気にかけるのは当たり前かもしれない。

私が、気に過ぎてたのだろう。



「お金、貰っておけよ。それがオレの親の気持ちなんだろう」

リョウタが言った。

「人の気持ちなんて、金じゃないけどさ。そういう伝えかたしか出来ない場合もあるよ。」




私は、このお祝い金を有りがたく頂くことにした。



人の思いやる現しかたなんて、人それぞれだ。

本当は、心配してるのに、伝わらない時もあるだろう。

伝え方が、相違して、誤解のままがある。

一生、誤解のまま、過ごす場合がある。



格差、差別、劣等感、優越感があり、人と人は、すれ違う。

わだかまりを、解くのは、思いやりかもしれない。



いつか、思いやりが、伝わる日が来るかもしれない。






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