女友達。
「先生。旦那の女友達って、どう思います?」
料理教室の後に、紀香ちゃんが、唐突に聞いてきた。
「うーん。同級生の友達なら、仕方ないかな。私より、付き合い長いだろうし」
「でも、女友達といいながら、元カノの可能性があるんですよ」
紀香ちゃんは、確信したような顔つきで言った。
「あっ。それは嫌だ。元カノと友達というのは、ちょっとね」
「でしょうー」
紀香ちゃんの旦那さんの真吾くんは、地元の同級生と月一くらいで、飲み会をするそうなんだが、男性ばかりの飲み会に、女性一人で参加する同級生の女性がいるらしい。
「既婚者の男性もいるなかに、女一人で参加する女って、どう思います?信じられないですよね」
あー。リョウタの専門学校の同級生にもいたな。そういう女。元カノって、言い張って、店まで押し掛けられたんだよね。そういうのは確かに迷惑だ。
「その同級生の女が、真吾は隠してますけど、中学の時に、付き合ってた元カノらしいですよ。」
あー。それは、真吾くんも、うかつだな。紀香ちゃんが、気にするのも仕方ない。
「今度その飲み会があるんですよ。許せない。真吾のやつ、元カノと浮気したら、許さないっ」
紀香ちゃんは、かなり殺気だっていた。
真吾くんは地元の同級生との飲み会に行った。
「真吾、イケメン店長と仲いんだって?イケメン店長を紹介してよー」
例の同級生の女性、斉藤奈々が言った。
「はあ。なんで、オマエに紹介しなくちゃいけないんだよ。イケメン店長は、結婚してるんだぞ。」
真吾くんは、呆れたように斉藤奈々に言った。
「だって。イケメン店長の奥さん、かなり年上みたいじゃない。そろそろ、そんなオバサンより、若い女と遊びたい頃じゃないの」
斉藤奈々は、自分を若いと思ってるみたいで、自信満々だった。
「おまえ、バカ?オマエより、奥さんのほうが、いいに決まってるんだろーが」
真吾くんは、斉藤奈々をバカにして、笑った。
「なによ。そんな40超えたオバサンより、私の方がいいに決まってるでしょう。ねえー」
斉藤奈々は、他の参加者の同級生の男達に、同意を求めた。
すると、誰も返事しないで黙った。
「はあ?なんで、誰も返事しないのよ。私より、そのオバサンのほうが、いいって言うの?」
「オレは、年上でも、イケメン店長の奥さんのほうが、いい」
「オレも」
同級生の男性陣は、言い始めた。
「奈々。オマエとは、品が違うんだよ。オマエなんかと、比べるのも失礼だ」
真吾くんは、またバカにしたように、言った。
「真吾。あなたは、若い子がいいって言ってたじゃない。いつからオバサン好きになったのよ。おかしいんじゃないの。」
「イケメン店長の奥さんは、見た目も教養も、大人の余裕も、オマエより、勝ってるんだよ。オマエなんかと、一緒にすんなっ」
周りの同級生の男性陣も、うんうんと、頷いていた。
「真吾っー。それが元カノの私に言うセリフなのっ。私は、今でも、言い寄ってくる男が沢山いるのよ。モテ度が、そんなオバサンと、訳が違うのよ」
斉藤奈々は、ムキになっていた。
「バカじゃねーの。オマエに、言いよってくる男はモテない男ばかりなんだよ。モテない男に、モテたって、自慢なんねーの。モテない男も、簡単にやらしてくれる女って、わかってるんだよ。イケメン店長の奥さんとは、レベルが違うんだよ。あと、オレの元カノって言うの、やめてくんない。オレも、中学で、彼女ほしいだけで、誰でもよかっただけだからよ」
「悔しいー。真吾っ。覚えてらっしゃい」
斉藤奈々は、プライドがズタズタにされて、怒りがおさまらないようだった。
ランチタイム。
「いらっしゃいませ。ご案内致します」
女性が一人で入ってきた。それは、例の斉藤奈々だった。
「茄子のトマトソースパスタと、ウーロン茶」
斉藤奈々は、注文した。何を考えて、やってきたのだろうか。
斉藤奈々は、キッチンにいる私をジロジロと見ているようだった。
「ふんっ。ちょっと綺麗なだけじゃないの。私の方が若いわ」
斉藤奈々は、ボソッと言った。
「お待たせ致しました。茄子のトマトソースパスタで、ございます」
リョウタが、斉藤奈々にパスタを運んだ。
斉藤奈々が、パスタを食べ始めると
「あっ。これ髪の毛かしら。パスタに入ってた」
パスタに、髪の毛入ってると言い始めた。
「申し訳ございません。すぐお取りかえ致します」
リョウタが、パスタを下げようとすると、隣にいた親子が、言い始めた。
「シェフは、ちゃんと髪しばって、帽子だってかぶってるのに、そんなわけないわよ。だいいち、シェフの髪の色と違うんじゃないの。シェフは、黒よ。この髪の毛は、茶髪じゃないの」
母親の方が言った。
「あー。このおばちゃんの髪と同じ色の髪だー」
今度は、幼稚園くらいの息子が、斉藤奈々を指差して言った。
「おば、おばちゃんてなによ。」
斉藤奈々は、子供に、おばちゃんと言われたのが不満そうだった。
「トマトソースに混じったから、髪の毛が赤くみえるだけじゃないの」
斉藤奈々は、言い訳をした。
「このおばちゃんのだー。おばちゃんのだー。おばちゃんのだー。」
子供は、おばちゃんを連呼した。
「失礼な子供ね。どういう躾してるの?私を、疑う気?」
怒った斉藤奈々に、子供は、また言った。
「わー。鬼ババアだー。鬼ババアー。」
他にいたお客様は、子供の連呼に、クスッと笑っていた。
私は、キッチンから、出ていき
「お客様、大変申し訳ございませんでした。私の不注意です。すぐパスタをお取りかえ致します」
斉藤奈々に、謝罪した。
証拠もないのに、お客様を疑うわけには、いかない。
確かに、パスタに入ってた髪の毛は、私の髪とは、髪の太さも色も違っていた。
リョウタは、作り直したパスタを斉藤奈々に持っていった。
「お客様、大変申し訳ございませんでした。こちら、よろしかったらサラダもご一緒に、どうぞお召し上がりください」
お詫びにサラダをつけた。
食べ終えて、斉藤奈々が、帰ろうとしたので、私は、レジに行った。
「お客様、本日は大変申し訳ございませでした。ご迷惑おかけしましたので、お代は、けっこうです。」
私が斉藤奈々に言った。
「いいわよ。取り替えてもらったんだし、美味しかったし、払うわよ。」
斉藤奈々は、払おうとした。
「お客様の食事中に、不快な思いをさせてしまいましたので、お代は、頂けません。今後このようなことがないように、改めて、注意して参りますので、また、お越しください」
私は、深々と斉藤奈々に頭を下げた。
「わかったわよ。もういいわよ」
そう言って、斉藤奈々は、帰って行った。
「シェフ。今。ああいう荒手のクレーマーいるから、気を付けたほうが、いいわよ」
私をかばってくれた親子の母親が言った。
「ありがとうございます」
私は、母親に言った。
「ボクにも迷惑かけちゃったから、プリン、今持ってくるね」
こんな小さい子が、私をかばってくれたのが、嬉しかった。
店から出ていった斉藤奈々が、うちの店に来ようとした真吾くんと紀香ちゃんと出くわした。
「奈々。おまえ、パスタ屋に何しに言ったんだよ。」
真吾くんは怖い顔して、言った。
「別に、パスタ食べにいっただけよ」
紀香ちゃんも、斉藤奈々をすごい形相で、睨んだ。
「まあ。シェフさん。ちょっとだけは、私より勝ってるかな。ちょっとだけね」
斉藤奈々は、少しは負けを認めたようだった。
斉藤奈々と別れたあと、真吾くんは、紀香ちゃんに、そうとう追求されました。
次話投稿で、途中保存出来なくて、投稿てこずりました。




