男の料理教室。
リョウタが、また真吾くんと駿くんと飲みに行くらしい。
「リョウタ。彩ちゃんも紀香ちゃんも、妊娠して、心細くなったりするんだから、飲み会、早く切り上げなさいよ。そういう風に、リョウタから言わなきゃダメよ」
私は、リョウタに注意するように言った。
「わかってる。9時には帰るようにするよ」
「紀香が妊娠したのは嬉しいけど、オレ、欲求不満なりそう。浮気したくなったら、どうしよう」
真吾くんが、もう欲求不満の心配をしている。
「リョウタくんは、どうしたの?」
リョウタは、真吾くんに質問されて、ビールを吹き出した。
「ゴホッ。オレは、大丈夫だった。我慢できたよ。我慢っていうか、浮気しようとは、なかったな。オレの愛は絶大なる愛だから」
リョウタは、誇らしげに言った。
「それ。すごくない?なんか。弱味握られてんじゃないの」
真吾くんが、リョウタを疑った。
「はあ。実は20歳の時、一回浮気したら、あっさり京子にフラれて、より戻すのに5年かかったから、もう怖くて浮気できない。」
リョウタは、本当のことを言った。
「あー。それは怖い。京子さん、離婚しても、バリバリ一人でやっていけそうだから、あっさり別れ言いそうだね。離婚されたら、リョウタくん、仕事も失うし、住むところも失うしね。ガハハっ。そりゃ怖くて、浮気できないーね」
真吾くんは、リョウタをからかって、笑った。
「それを言うなよー」
リョウタは、タジタジだ。
「駿くんは、我慢できんの?」
今度は、真吾くんは、駿くんに聞いた。
「オレは、全然大丈夫ですよ。浮気の相手を探すの面倒くさいし、時間ももったいないですよ。時間の無駄」
「ほー。でもさ、探さなくても相手から誘ってきたら?」
「それも、面倒くさいので。結婚してるわけだから、浮気したら、揉めるわけだから、それもまた面倒くさいし、揉めてる時間がもったいないです」
駿くんは、合理的なわけだ。
「ヤバイ。オレだけじゃん。浮気しそうなの」
真吾くんは、焦り出した。
「じゃあ。オレが浮気しないように念じてやるよ」
リョウタが言った。
「真吾くんが浮気したら、紀香ちゃんが哀しむし、お腹の子供も哀しむんだよ。産まれてくる前に、真吾くんの子供が哀しむんだよ。それでも浮気できる?」
「できないっ。オレ浮気しない。誓うよ」
真吾くんは、浮気しない宣言をした。
「ところでさ、リョウタくん、ヤバイよ。男の料理教室も、してほしいと言う声があるらしいよ。今、男が料理しても、おかしくないし。むしろ、奥さんからも、料理してほしいと言う希望があるみたいで。京子先生、男の生徒に口説かれるかもよー。やばくね?」
また真吾くんは、リョウタをからかった。
「今日は、もう、お開きにしよう。真吾くんも、駿くんも、奥さんが妊娠してるんだから、早く帰らないと」
そう言って、リョウタは、急いで帰った。
リョウタが、すごい勢いで、帰ってきた。
「京子っ。男の料理教室なんか、やるんじゃないぞっ。絶対ダメだからなっ」
リョウタは、息を切らし言った。
「ああ。そう言う話があったけど、男性の料理の先生のほうがいんじゃないですか。って断ったわよ」
「ほんとか?でも、男は、京子先生がいいって言ってるらしいじゃないか」
「ほんとよー。」
「他の男にエプロン姿見せるのなんて、許さないからなっ」
意味わからないことをリョウタは、言った。
ランチタイム。
ランドセルを背負った小学生の男の子、二人が入ってきた。
「ホットドックください」
この間の特産祭りの出店に来てくれた男の子だろうか。手には、100円を握りしめていた。
「ホットドックは、特産祭りの時だけなんだよ」
リョウタが小学生に言った。
「リョウタ。いいよ。すぐ作るから、席に案内してて」
私はリョウタに言った。
リョウタが小学生を席に案内した。
「学校は早かったの?」
リョウタは、授業が終わる時間じゃないと思ったのか小学生に言った。
「今日は午前授業なの!町のイケメンのくせにして、それくらい分からないの?」
リョウタは、小学生に指摘された。
「ごめん」
リョウタは、小学生に謝った。
「イケメン兄ちゃんさ。本に出てたでしょう。オレの母ちゃん買ってた。」
「オレんちは、ねえちゃんが買ってた」
小学生二人は言った。
小学生は、タウン情報誌のことを言ってるのだろう。
「お母さんとお姉さんに、ありがとうって言っててね」
リョウタは、小学生に言った。
「いいけど。」
リョウタは、思ってた。恭も、小学生になったら、こんな風に生意気になるだろうかと。
リョウタは、小学生にホットドックを持って行った。
「うまいーっ。コンビニのホットドックと比べ物にならないー」
小学生は、頬張った。
作りたてのホットドックは、美味しいだろう。
なかなか、田舎は、ホットドック屋とかないから、コンビニで買うしかないのである。
小学生が100円を払って帰るとき、リョウタに言った。
「イケメン兄ちゃんさ。まあ、仮面ライダーのお兄ちゃんより、カッコいいと思うよ。じゃねー」
仮面ライダーの俳優はイケメンばかりだ。それより、カッコいいと言うことは、小学生なりに、リョウタを誉めたのだろう。
男の料理教室は、受講生が3人しか集まらなく、男性の料理の先生がやる気をうせてるようだ。
その男性の料理先生は、都会で、ローカルテレビで、料理のコーナーを持っている先生なのだが、それでも集まらなかったらしい。
「京子先生っ。男の料理教室が、あと3日だと言うのに、西木先生が、インフルエンザになってしまったんですっ。お願いです。代わりに、教えて貰えないですか」
男性の料理の先生は、インフルエンザになったらしい。
まあ、受講生が3人だけなら、リョウタも煩く言わないだろう。
しかし、男の先生がインフルエンザで、代わりに私がやることになったか、どうかは、知らないが、その3日間で受講生が増え、30人の受講生になった。
それを聞いたリョウタ。
「スケベオヤジばっかじゃねーのかっ」
激怒していた。
「オレも料理教室、参加する。」
えぇー。旦那が料理教室に来るのって、恥ずかしいー。
当日。リョウタは、監視役に、真吾くんと駿くんも、料理教室に参加させた。
「先生ー。ここが分からないですけど」
受講生の40代の男性が私に聞いてきた。
すると、すかさず、リョウタは目を光らせていた。




