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キャリアウーマン

「京子、ルリちゃんを紹介してくれて、ありがとう。ルリちゃんがレポーターやってる夜中の番組、けっこう評判いい。」

理恵から電話が来た。ルリさんは元キャバ嬢で、リョウタの元カノである。

「今度さ、ルリちゃんを土曜日に鍋の特別番組やるんだけど昼放送だけど、ルリちゃんをレポーターに使ってみようかなと思ってるのよ。彼女、リアクションがいいから、けっこうグルメ番組向いてるんじゃないかな。あと、オヤジ転がし上手いし、やらせてみようと思ってね」


確かにルリさんは、リアクションがいい。わざとらしいリアクションではなくて、自然な天然なリアクションである。喜怒哀楽が激しいといえば、それまでだが。


でも私は思う。それを見抜いて引き出したのは、理恵のおかげじゃないかと。

レポーターの仕事がないときは、ルリさんは理恵について雑務をしているらしい。

「しかし、京子も相変わらず面倒身がいいわね。リョウタくんの元カノの仕事の世話をするんなんてさ。私には、そこまで出来ないわよ」

理恵は、そう言うが、面倒身がいいのは理恵も同じである。結局ルリさんを自分につかせて、仕事を与えてるんだから。

ルリさんのことを私が感謝することではないが、理恵に任せて安心である。



理恵の電話を切ったと思ったら、今度は、高校の同級生の慶子から電話である。

「京子、この間は、出産祝いありがとう」

慶子は8歳年下と結婚して最近、男の子を出産した。しかし、もう仕事復帰したらしい。息子さんは旦那さんの母親が見てるらしい。仕事復帰したいために、旦那さんの両親と同居を始めたらしい。保育所に預けるとお金かかるし、それに産まれたばかりの息子を預けられないということで、慶子から旦那さんの両親に、赤ちゃんの面倒みてほしいということで、同居をお願いしたらしい。


「まあ、同居上手くいくか分からないけど、私の親よりは、うるさくないわ。姑より実親のほうが、うるさくて、嫌んなる。京子、よく親と同居できるわね」


慶子とは、都会いるときは、二人で親の愚痴を言って飲んだものである。


「ところでさ。リョウタくんのバンド、うちのタウン情報誌に、でてくれないかな」


なんでも、先日のリョウタが情報番組に出たのを見たらしく、ローカルで活躍してるバンドだし音楽ページに出てほしいと言うことである。


慶子は大学卒業して、県内のタウン情報誌に就職した。

そこで編集者として、バリバリ働いてる。


こうして、リョウタのバンド、Avid crownは、タウン情報誌の取材を受けることになった。


写真撮影に、慶子も立ち合った。

「もう、ちょっと横から、撮ったほうがいんじゃないの」


ベテランカメラマンに、慶子は指示をだしていた。


「そんな、爽やかさじゃなくてっ。もっと、バンド感ださせてたほうがいいのよ。」


笑顔を要求したカメラマンに、慶子は、バンバン指摘している。


「だから、並木さんっ。アイドルの女の子撮ってんじゃないからねっ。バンド撮ったことないのおっ」


並木さんとは、カメラマンである。


「ちょっとスタイリストっ。裕太くんの服の色変えて。この色じゃ顔の色が、よく写らないのよ。それくらい分からないのっ。あとリョウタくんの服は、皮にして。バンド感だしたいから」


今度は、スタイリストに、文句を言い始めた。



たかが、ローカルで活動してるリョウタのバンドの取材でも手を抜かない慶子だった。とても産休明けには、思えない。



「慶子さん、怖かったー。仕事になると人が変わる」

リョウタが、取材から帰ってきて、言った。

「もう、スタッフさん達、ピリピリしてたよ」

リョウタは、ぐったりしてソファに寝た。



慶子の力で、リョウタのバンドはタウン情報誌の表紙になるそうである。見開きカラページ、2ページに載ることになった。

タウン情報誌で、そこまでページを押さえるって、すごいことである。



タウン情報誌発売日。

コンビニに、リョウタのバンドは、表紙で前列に置かれていた。

「京子ー。タウン情報誌買ったわよー。リョウタくん、凄いじゃないの。表紙よー」


花江が、タウン情報誌を持ってきた。


「すごい。メジャーなバンドって感じで、写ってる。カッコいいー。内容もいいー。」


花江は、娘さんの分も二冊買ったそうだ。



「京子、ありがとう。おかげさまで、タウン情報誌、通常の3倍売れたわ。リョウタくんのバンドのおかげだわ」


慶子は、そう言ったが、慶子の腕のおかげだろう。

慶子が、担当したリョウタのバンドのページは、野暮ったいローカルさが、出ていなかった。通常のタウン情報誌だと、ラーメンを表紙に持ってくれば売れると言う考えだが、慶子はリョウタのバンドを表紙にしたのである。


「表紙に関しては編集長と、かなり揉めたわよ。編集長は、グルメで行くって引かないんだけど、毎回毎回グルメでは、変化なくて読者も離れるのよ。グルメ雑誌じゃないんだから。新しい読者をつかむには変化しなくちゃ」



慶子は、仕事を辞める気ないだろう。

でも、旦那さんの両親は働き者の嫁と感謝してるらしい。



後日。

慶子は、人事で昇進し、副編集長となった。






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