見た目で判断。
リビングのテレビが壊れた。
「このテレビ買ってから10年くらいするから、寿命かしらね」
母親が壊れても仕方なさそうに言った。
「隣町の大型電器店のチラシ入ってたぞ。かなり値引きしてた。リョウタくんがテレビに出た時やライブの録画したのを大画面でみたいから、いっそのこと50型くらいのテレビにするか」
父親が今朝のチラシを探しながら言った。
「そうね。私も目が辛くなってきたから画質のキレイなテレビがいいな」
私は最近、細かいのが見づらいので、でかい画面で画質のいいテレビのほうがいいと思っていた。
「恭ちゃんがアニメ見る時、大きい画面のほうがいいしね」
今度は母親が言った。
「ボク、大きいテレビがいいー」
恭ちゃんも言った。
ということで、日曜日だし隣町の全国チェーンの名の知れた大型家電量販店に、リョウタと恭ちゃんと三人で見に行くことにした。
大型家電量販店。
月の売り上げ成績が決まる月末に、チラシを出した店員は気合いが入っていた。
「おまえ入社して3カ月にもなるのに、こんな成績じゃ話になんねーよ。だいたい、おまえ電気小物ばかり、売っても意味ねーんだよ。一万円もしない商品の接客に、時間かけるな。客に聞かれても適当に説明して終わらせて10万円以上のモノ売らなきゃダメだろ。おまえは客に声をかけられてるのを待ってるだけだろ。こっちから高額な家電みてる客がいたら逃さない。こっちから、ガンガンいかなきゃ。金もなさそうな見てるだけの客には、かまうな」
現段階で売り上げ成績1位の36歳の入社10年目の小坂という店員が、売り上げ成績最下位の入社三ヶ月の新人の25歳の菅田将理に、見下したように言っていた。
「おまえ、今月も最下位で終わるのか?研修期間三ヶ月で、それはヤバイしょー。このままじゃ切られるぞ。ムダな人件費だよな。アハハー」
売り上げ成績1位の小坂は、馬鹿にしたような笑った。
「わー広い。品数も沢山あるわね。さすが有名な電器店ね」
私とリョウタと恭ちゃんは、大型家電量販店に入った。
私は夜に音源チェックをする時のイヤホンが欲しかったので、リョウタと恭ちゃんを先にテレビコーナーに行かせた。
イヤホンとはいえ種類が沢山あり、どれを買っていいか分からないので近くにいた若い男性店員に聞いた。
「イヤホンなんですけど沢山ありすぎて、どれを買っていいのか分からなくて耳が痛くならなくて、音漏れしないイヤホンありますか?」
「いらっしゃいませ。はい。あります。音漏れしないので通勤や通学で電車でも聴くために人気があるのが、このイヤホンです。」
その若い男性店員の名札を見ると菅田と名字だった。
菅田店員は、2800円くらいの人気のあるイヤホンを薦めた。
私は今まで、スマホについていたイヤホンを使っていたので2800円が安いの高いのか分からなかったが、他のイヤホンを見ると一万円を超えるイヤホンも多かった。さすがに980円のイヤホンは避けたい。音漏れしそうだ。
「このイヤホン、私も使ってるんですが値段のわりには、耳にも優しいし、音もいいので使いごごちいいので、つい薦めてしまいましたが、もう少し高い値段のイヤホンほうがいいですか」
菅田店員は、迷ってる私に店員に言った。
「いえ。あまり、こだわりないので店員さんが使ってみてお薦めするなら、このイヤホンにします」
私は丁寧な接客で優しい言い方をする菅田店員に薦めるイヤホンを買うことにして、手にとった。
「あとテレビ買いたいんですが」
私はテレビを決めるときに、慣れた店員にガツガツ説明されれのが嫌だったので、経験は浅そうだが丁寧な接客の菅田店員にテレビの説明を聞きたかったので言った。
テレビコーナーには、リョウタが恭ちゃんがテレビを見ていた。
リョウタと恭ちゃんは、大画面テレビのコーナーで迷いながら見てた。
「すいません。テレビ買いたいんですが今のテレビ、どれがいいですかね」
リョウタが、あまりのテレビの種類の数の多さに、近くにいた店員に聞いた。
「テレビ?ここは大画面テレビコーナーで値段もかなり
高いですよー。手頃な値段のテレビは、こっちです」
その店員は画面の小さい安いテレビコーナーにリョウタ達を連れて行った。
「えっ。50型くらいの大画面がいいです。それに、このテレビHDD録画出来ないじゃないですか」
リョウタはムッとして言った。
「50型?そんな大きな画面のテレビは6畳くらいの部屋だと威圧感があって、ダメですよ。テレビで部屋がせまくなるじゃないんですかぁー?それにHDD録画ついてるテレビは値段が張りますよ。だったら、この値段でDVDレコーダー繋がればいいじゃないですかー」
その店員は、リョウタに3万円のテレビを薦めた。
この客に見下した言い方をした店員は、現段階で売り上げ成績1位の小坂という店員だった。リョウタの見た目でアパート暮らしの若夫婦だろうと決めつけたのだろう。
そして買うか分からない客に、高額な大画面テレビの説明を時間かけて説明しても無駄だと判断したのだろう。
その様子を私は見ていた。
「リョウタ、大画面テレビは、こっちじゃないよ」
私は小坂店員に安いテレビを薦められてるリョウタに声をかけた。
「京子。この店員さんが、こっちのテレビのほうが安いって、こっちに連れてきてさ」
リョウタが私に言った。
「なんで。リビングのテレビだから、お父さんも半分出すからって、大画面テレビするって今日は買いに来たのよ」
私は大画面を買いに来たことを強調して、その見下した小坂店員に聞こえよがしにリョウタに言った。
すると私を見て小坂店員は、顔が変わった。
「お姉さんですか。大画面は、こちらです」
小坂店員は笑顔になり、大画面テレビコーナーに案内しようとした。
「あっ。いいです。イヤホンの説明してくれたこちらの店員さんにお願いしたので、けっこうです」
私は、しつこそうな小坂店員を追い払おうとした。
「でも、この菅田は、まだ新人で説明が不充分だと思うので、私の方が性能の良いテレビを説明しましすよ」
小坂店員、私の後ろにいた若い菅田店員を見ながら言った。
「いいです。専門用語言われても分からないので、慣れてるクドイ説明をする店員さんより、丁寧な店員さんのほうがいいのでアナタ様は、けっこうですっ」
私はキッパリ言い切って、菅田店員に案内をお願いした。
大画面テレビコーナーは、確かに沢山あり、どのメーカーがいいのかも判断出来ない。
「50型くらいで画質が良くて、ブルーレイは持ってるのでHDD録画できて」
リョウタは菅田店員に希望のテレビを言った。
「じゃあ、このテレビどうですか。値段は少しいいですが、さらに割引しますので。奥様にイヤホンも買って頂いたので」
イヤホンも買ったと言っても、2800円のイヤホンである。それで割引を増してくれるとは、菅田店員は、自分の売り上げというより、心からお客様に良い電化製品を買って欲しいというのが感じた。
私は菅田店員が薦めた30万円のテレビに決めた。そこから値引きして、25万にしてくれるらしい。こんなに値引きして菅田店員が、自腹値引きならないか心配になった。
「オレ、編集するのに画面の大きいパソコン見ていこうかな」
リョウタも菅田店員の感じの良さに、買うか買わないか三ヶ月くらい悩んでたパソコンも買う気になったようだ。
「じゃあ安くなってたから、恭ちゃんも小さいキーボード買う?」
私はオモチャのピアノじゃなく、恭ちゃんに卓上キーボードを買ってやりたかった。
「うんっ。ボク、欲しいー」
こうして私達は、テレビの他にデスクトップのパソコンに、卓上キーボード、業務用電子レンジ、スタジオに置くチェック用のテレビとブルーレイも買った。
もちろん、全て、担当は菅田店員である。
レジで精算してる私達を遠くで、客を見た目で判断する小坂店員が、恨めしそうに見ていた。
後日発表された今月の売り上げ成績のトップは、丁寧で親切な新人の若い菅田店員だった。
やはり客を見下したような態度の店員では、買う気もなくなるし、二度と行きたくない店になる。
自分の成績のためだけに必死な店員って、わかるものだ。
自分の成績より、お客様に喜んで買って頂きたいと丁寧で親切な店員さんのほうが、いいに決まってる。




