AND
メルマガでお知らせしたシークレットライブは、予想を上回る応募で抽選になった。
「私、RSKのライブ外れた。たぶんドラマの主題歌歌うから、ライブ見たかったー」
地元の高校の休み時間に、女子高校生が話していた。
「沙知、RSKと知り合いの人いないの?」
チケット落選が諦めきれない女子高校生が友達に言った。
「諦めなよ。先輩達、差し置いて、私達、行けないじゃん。3年の先輩達、1年の時からパスタ屋の常連らしく、RSKやる前から、リョウタさんと知り合いだから先輩がチケット取れなかったら、うちらも行けないじゃん」
高校1年になったばかりの女子高校生は、ハンドボール部に入った。
そう、うちの店の常連のハンドボール部三人組の後輩である。
あのハンドボール部三人組も、先輩になった。高体連が終われば、部活は引退する。
でも3年になっても、相変わらず、部活帰りに三人で、店に食べに来る。
「店長ー。明日ライブ行きますんで。当選しましたんで。」
夕方、部活帰りにハンドボール部の三人がやって来た。
「おー。当選したんだ。やっぱ常連は当選しないとな。」
リョウタは、ハンドボール部に三人に笑顔で言った。
「当たり前ですよ。たとえ落選しても行きます」
この子達も卒業したら、バラバラになって店に来なくなるだろう。
砲丸投げ選手の咲ちゃんは、大学に行った。
柔道部の美鈴ちゃんも、大学に行った。
二人とも私と同じ大学に行った。アパートを借りて大学生生活を楽しんでいるみたいだ。
バスケ部の絢斗くんは大学にいかず、この県のプロバスケットチームに加入した。
だから咲ちゃん、美鈴ちゃん、絢斗くんは、4月に地方都市での新生活を始めてから店に来なくなった。
みんな忙しいから仕方ないが、なんとなく寂しい。
日曜日。
リョウタと私は、朝早くから会場にセッティングに行った。
ライブには両親と恭ちゃんも来る。もちろん花江家族もくる。
会場時間になるとチケット当選した150人が、続々と来た。
「京子さん、リョウタくん、お客さんですよ」
楽屋に、真吾くんがお客さんを連れて来た。
「シェフ、店長ー。久しぶりですっ」
そこには、咲ちゃんと美鈴ちゃんがいた。
そして後ろに、プロバスケット選手になった絢斗くんもいた。
「三人とも来てくれたのー。忙しいのに時間取れたの?」
私は、三人が来てくれたので驚いた。
「チケット当選したんで、当然来ますよ」
相変わらず、クールな口調の咲ちゃんが言った。
「ちょうど、移動日でオフだったんで」
絢斗くんが言った。
「私の駿様のシークレットライブを見ないわけにはいかないんで」
駿くんを大好きな美鈴ちゃんも言った。
「みんな元気そうだな。今日のライブ期待しててよ」
リョウタが、三人に言った。
そして、RSKのシークレットライブは始まった。
ライブは、オープニングから盛り上がり時間が経つのはあっという間でラストの曲。
「ラストは新曲。松坂健人くんのドラマ主題歌にもなっています。これから、みんなも大切な人に出会うと思います。すでに出会った人もいるかもしれない。うまく気持ちが伝わらなくて悔しい想いする時もある。でも大切に想う気持ちが持てたことを誇りに思ってください。
聴いてください。『AND』」
リョウタのMCから、新曲を歌った。
この曲のキーボードは私が弾いた。
会場はタオルで涙を拭く人が沢山いた。
花江は一番前で、号泣していた。
今まで近くにいた人が、離れていくのは寂しい。
でも寂しくても応援してあげなきゃいけない。
離れた分、近くにいた時より何倍も応援しなきゃ届かない。
こうして、会える日も来る。
だから卒業して、この地を離れた三人が、この地を忘れないように、そして応援してるよって伝わるように、この三人が、どこにいてもRSKの曲を聴けるように、私は頑張らなきゃいけない。
ライブ1週間後に、RSKの新曲『AND』は発売された。
そして、インディーズチャート 1位になった。




