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会いたい本当の気持ち。



明奈ちゃんを急遽預かることになった。

関東の親戚に不幸があり明奈ちゃんのお父さん、お祖父さん、お祖母さんが行かなければならなくなったためである。



水曜日だったのでリョウタと恭ちゃんと明奈ちゃんを幼稚園に迎えに行った帰りにスーパーに寄った。


「明奈ちゃん、夕飯は何が食べたい?」

私は明奈ちゃんに聞いた。

「明奈、ハンバーグがいいー」

「ボクもー」

恭ちゃんもハンバーグがいいというので、今夜はハンバーグにすることにした。



スーパーで食材を選んでレジに行こうとした時に、目の前に30代くらいの女性が立っていた。


「明奈ー」


その女性は明奈ちゃんの名前を呼んだ。細い女性で長い髪を縛らず、バサバサとしていた。綺麗な女性だが、やつれた感じで神経質そうに見えた。


「明奈、どうしたの?ママよ」


その女性は明奈ちゃんは行こうとしなかった。むしろ怖がって、私にしがみついていた。


「あなたは、誰?明奈のなんなの?もしかして澤田の再婚相手?でも明奈は私の娘よ。渡しなさいよっ」


その女性は勝手に私を明奈ちゃんのパパの再婚相手と決めつけ、ヒステリックに言った。


「渡しません。私は明奈ちゃんを澤田さんから預かってます。知らない人に渡すわけにはいきません」

私はキッパリと言った。


「渡しなさいよっー。明奈は私が産んだ子よっー」

女性は叫ぶように言った。


明奈ちゃんと恭ちゃんは、怖がって二人とも私にしがみついていた。


「明奈ちゃん、アナタを見て怖がってますよ。」

リョウタが来て、その女性に言った。


女性はリョウタの言葉に、うなだれた。


「私は一人なの。家族がいない。だから自分の娘に会いに来て、どうしていけないのよ。明奈は私が産んだの。なのに、どうして私に近づこうとしないの。家に居たときも、私に近づこうとしなかった・・」

女性は泣き出した。


一人ということは不倫相手だった男性とは別れたのだろうか。

確かパート先の年下男性に本気になり、家を出て行ったはずだ。



「今の状態のアナタに、明奈ちゃんを渡すわけにはいきません。明奈ちゃんに会いたいなら、澤田さんに断わってから会うべきでしょう」

リョウタは女性に言った。



女性は納得したようで、この場から立ち去った。




母親を見て、怯える子供。

明奈ちゃんは、どんな怖い思いをしたのだろう。




夕飯は明奈ちゃんのリクエストのハンバーグ。

「美味しいー。明奈、こんな美味しいハンバーグ食べたの初めてー」

明奈ちゃんは、嬉しそうに食べてくれた。


スーパーで嫌な思いをしたので、明奈ちゃんが元気に食べてくれて安心した。



女の子なので、お風呂は私と入った。

明奈ちゃんの髪を洗ってやった。

「恭ちゃんのママの痛くないー。パパが髪を洗うと、ごしごしって痛くする」

父親だと、つい力を入れて洗ってしまうのだろう。



今夜はベッドに4人で寝た。

明奈ちゃんが私の隣に寝た。ほんとは恭ちゃんが隣に寝たかったのだろうけど、恭ちゃんは明菜ちゃんのために我慢したのだろう。


「明奈、4人で寝るの初めて。明奈は途中からおばあちゃんと寝てたから。今はパパと二人で寝てる」

母親がいる時に、おばあちゃんと寝てた明奈ちゃん。

母親が育児放棄したのか、明奈ちゃんが母親を警戒してたのか。



明奈ちゃんは、眠りながら私に寄り添った。

母親の愛情を知らなかったのだろうか。

でも明奈ちゃんの気持ちが私も分かる。




私も兄と差別され育ち、母親の愛情なんて感じたことがなかった。



朝、幼稚園に行く前に、明奈ちゃんの髪を結んでやった。

「可愛いー。この髪したの初めてー。恭ちゃんのママ、ありがとうー」


可愛い髪飾りもつけてやると、明奈ちゃんは喜んだ。



店に行く前に、恭ちゃんと明奈ちゃんを幼稚園に送った。

「明奈ちゃん、お迎えまでにはパパ帰ってくると思うから」


「うんっ。恭ちゃんのママ、ありがとう。明奈、恭ちゃんちにお泊まりして楽しかったー」

私に手を振りながら明奈ちゃんは言った。




夜に明奈ちゃんのパパが店に、お礼に来た。


「京子さん、リョウタさん。ありがとう。明奈、すごく喜んでました。父親のオレじゃ、出来ないことあるので助かりました」


明奈ちゃんのパパは、私達に言った。



「元嫁ですが、男に捨てらたみたいです。だから一人になったから明奈に会いに来たのでしょう。明奈は元嫁が産んだ子供だし、明奈が会いたいと言うなら会わせたくないわけじゃないです。でも明奈が会いたくないなら、会わせるつもりはないです。今は、まだ明奈は母親に怯えてます。明奈が、もう少し大きくなったら会いたくなる時が来るでしょう。その時は母親に会わせようと思います」


確かに明奈ちゃんのパパが言うように、明奈ちゃんが自分から会いたいと思ってからでいいだろう。

今、無理矢理会わせても恐怖感しかないだろう。




家に帰ってきたパパに明奈ちゃんが言った。


「明奈のママみたいに、どこの家もママって怖いのかと思ってた。恭ちゃんのママみたいに子供に優しいママもいるんだね。いつか明奈も恭ちゃんのママみたいなママになりたいー」


そう言って明奈ちゃんは、私があげた髪飾りを大切そうに宝箱に入れた。


















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