お知らせとリメイク版
今更ですが、たまにコメントを頂くので通知致します。
この小説はエタっています。
と、いうのも環境の変化の度に筆を折っていたのと、単純に初期のプロットを紛失してしまったんですよね……。
あと、当時は姫に対するヘイトが予想以上に高く戦々恐々としており色々と設定を誤ったなと感じていました。地の文章も前半と後半で大分異なりますしね……。
とはいえ、愛着があるのも事実ですので大学生になった頃リメイクを決意して少し文量を貯めてました。
まあ、就活がうまく行かずに再度筆を折ってしまったわけですが……。
続きを書くとしたらリメイク版としてやり直そうと思います。
供養も兼ねて、貯めていたものを載せます。
少し多いですが、こちらに一気に載せます。
お知らせについてですが、休職と退職のコンボを決めた後に再び書き始めました。
今は新作を毎日投稿しています。
アホみたいな量の設定資料を作成し、必要な資料を読み込んで勉強までしたのでエタらないように自身を追い込みました。
異世界英雄になどなれはしない
https://ncode.syosetu.com/n4599he/
こちらです、例によってダークファンタジーで主人公がボロボロになります。
本ページの小説情報から、同一作者の別作品からでもいけます。多分そっちの方が早いです。
宜しければご覧ください。
https://twitter.com/tomsoya0828
こちら私のTwitterです。
更新されなくなったらしばき倒しにきてください。
それと、原作担当という形で漫画描き始めました。
イベントにも参加しまして、良い評価を頂けました。
https://twitter.com/genjitutoha/status/1400040635508224000
こちらにサンプルあります
漫画に関しましては活動報告の方をご覧ください。
次作の表紙がかっこいいです。
以下活動報告、URLをコピペする以外にも作者名から活動報告へ飛べます
https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/2852693/
URL上手く貼れてなかったら教えてください。
なんだかんだ元気にやっています。
続きを期待していた方はごめんなさい。
もっと面白いもの書くので許してください。
お知らせは以上になります。
長文、失礼致しました。
リメイク 勇者になれない僕らは異世界牢獄から這い上がる
――手から零れ落ちた。
指先から感覚と体温が離れていく。映したくない光景を映す双眸は僕を裏切るように厳然と現実を突きつけた。
暗闇に落下する彼女に僕は泣き叫ぶことしか出来ない。本当は彼女こそ泣きたいのに、それでも彼女は笑って生きろという。
伸ばした手は届かない。ただ、無窮の闇に虚しく腕が浮いている。
顔を上げる。目に入ったのは、冷ややかな目で僕を見つめる魔術師。怨敵の姿だった。
許せなかった。
異世界に僕らを呼んで、騙し、騙り、陥れ、蔑み、嗤い、奪い、使い潰す彼らを僕は許せない。
彼らの手で殺された彼女の望み、恨み、辛み、それらは全て僕が背負う。
「もう、やめよう……」
何度酷い目にあっても、僕らは決してくじけなかった。諦めなかった。いつかみんなで元の世界に戻るために、この世界に屈してたまるかと思っていた。この世界に染まってしまっては、きっと元の世界に真の意味で帰ることはできないと思っていたから。
だから、せめて人間の尊厳を保つためにも人殺しだけはしないように決めてきた。
それが、僕らのルール。
ゆっくりと立ち上がる。魔術師が笑いながら僕を見る。その人当たりの良さそうな笑みは確実に僕らを嘲笑していた。愚弄するな、いつまでも嗤っていられると思うな。
「やめてしまおう。下らない。この気持ちが晴らせるなら、彼女の仇を討てるのなら、お前を殺せるなら、僕は、僕は――」
人殺しが人間の尊厳を踏みにじるというのなら、殺人者は一体何なのだろう。人殺しと呼ばれる存在は何にカテゴリーされるというのか。
悪魔、畜生、鬼畜、外道。種々雑多と呼び名は存在するが、いずれにしろ全て同じだ。ならば、この一言で事足りるだろう。
「僕は、人間をやめてやる――」
――化け物。
人を殺すことに善悪はないのだろう。
所詮、僕は勇者になれない。
僕は血に濡れた右眼を開いた。
~~~~~~
つまらないと思った。
繰り返される日々は徐々に彩を失い、同じ出来事を繰り言のように再現し続ける度に新鮮味が鍍金の如く剥がれていく。それは当たり前のことで、嫌気が差すというだけで何もできはしない。変えられるわけがない。
焼き直しの毎日。
まるで夢のように足元がおぼつかなくなって、[日常]という定義に溺れそうになる。
退屈という言葉すら退屈に思える日常は、いつか僕を殺すだろう。
人は刺激なしでは生きられない。刺激がない日々の積み重ねを人生なんて偽ってはいけない。
だからだろうか。僕は刺激を求めてしまった。
その行為自体はきっとなんてことない。だけど、後になってそれは僕にとって引き金のようなものだったと感じてしまえるようになった。
日常は唐突に終わりを告げる。
今思えば、不変こそ幸福の象徴だったのかもしれない。
僕の求めた刺激は、僕を殺しにやってきた。
うざったいような晴天が嘲笑うように僕を見下ろしていた。
いや、現にきっとそうなのだろう。憎いほど爽やかな涼風が頬を撫で、黒髪を後方へと攫っていく。
僕の置かれた状況を鑑みる限り、それは皮肉以外の何物でもない。気を逆撫でされたようで、表には出さないものの明確な苛立ちを覚える。
それは先方も同じようだった。
「……こっちを見てください、柊君」
どこか不機嫌な声が空を見つめていた僕の顔を落としに来る。
是非もなく視線を落とすと、そこには不貞腐れた女性の顔があった。説法を垂れるにしては、あまりにも幼い顔立ち。これで高校の教師だというのだから、この学校はどうかしているのかもしれない。というか、彼女を教師と認定した国もどうかしている可能性もある。試験官はロリコンだったのか。日本がロリに染まっているのか。だとしたら、それはそれで面白いかもしれない。
そんなクソどうでもいいことを考えながら、視線を彼女に合わす。
身長の関係で、僕が見下ろす形になる。
「言い訳があるなら聞きますよ」
「……いつものことじゃないですか。見逃してくださいよ」
「駄目です!」
目を逸らし、愚痴のように言葉を吐く。ただそれだけの行程で目前の女性は高らかに憤慨した。声まで幼いおかげで、やたらと耳に響く。その様相は以前近場のショッピングモールで見かけた、母親に玩具をねだる童女となんら変わりない。うるさいという事実だけが脳裏にこびり付く。
この人も毎度懲りないな。
「それと、四条君! 貴方もです!」
ロリ先生の怒りの矛先が僕から逸れる。
「成績なら問題ねーはずなんだけど。俺のしたいようにして何がわりぃんだよ?」
隣の腐れ縁の言葉に、女性の顔が真っ赤に染まる。
僕は順繰りに彼の容貌を眺めていく。
派手に染められた金色の髪、口内に含んだガム、着崩された制服……。他にも、数え上げるのも面倒なほど、彼は校則違反の塊だった。それに加えてあの口振りは、どう良心的に解釈しても喧嘩を売っているようにしかとられないだろう。
小学生並みの身長とはいえ、眼前の女性は教師だというのに。彼はもう少し言葉を選ぶことができないのだろうか。教師に対する畏敬の念が圧倒的に足りていない。
……。
この状況と友人の言動にため息を禁じ得ない。
「ちょっと柊君! 何ため息ついてるんですか。貴方も駄目なんですよ!」
「はあ……」
「はあ、じゃなくて!」
童女のような幼い顔が徐々に険を帯びてくる。その様相はとても愛くるしい。
依然、態度を崩さない僕らに彼女は感極まったように叫喚した。
「なんで貴方たちはいつも遅刻してくるんですか! それもこんなに遅れて!」
「「すいませーん」」
「毎回思うんですけど、感情の篭ってない謝罪は謝罪じゃないんですよ!?」
「サーセン。マジでサーセン」
「むしろ、ここは遅れてでも学校に来る僕らを褒めてほしいところですよ」
「ふてぶてしいにも程があります!」
もう! とこれまた愛らしい悪態をつく合法ロリ、もとい榛先生。本人は怒っているつもりなのだろうが、それは寧ろ逆効果だ。恐怖や畏敬よりも、可愛いなあ……、うるさいなあ……といったほのぼのとした感情が先行してしまう。彼女は教師という職業に向いていない気がする。
連綿と続く先生の説教という名の愚痴に、僕は小さく息を吐いて空を仰いだ。馬耳東風。めんどくさい言葉はすべて聞き流す。
太陽が中天に昇っている空を眺め、空腹感を覚える。
言葉は自然と口をついて出た。
「お腹空いた……」
「はあ!?」
「もう行っていいですか」
「このままじゃ五限にすら遅れるんじゃねえのか」
「ぐっ……、仕方ないですね。今日はこのくらいで勘弁してあげましょう」
勘弁もなにも、こちらは全然堪えてないんですけどね。却って目の保養になったくらいですよ。喉元まで出かかった言葉を無理やり飲み込む。
こんなことを言ったら本当に昼休みが潰れかねない。僕にだって思ったことを口にしない思慮くらいある。
「ほら、さっさと行ってください!」
「「あーい」」
「返事は『はい』です!」
「えー」
「えー、じゃない!」
いつも通りの日常。退屈ながらもそこそこに楽しい思いもしていた。
でも、僕は既に飽きていた。
僕だけじゃない、隣の悪友もだ。
いつも何かが足りない、違和感が付きまとう、満たされていない。故に、新しい刺激を求める。
それは決して良いものだけでないと知っていながら。
校門でのひと悶着のあと。
「やっぱ昼飯は高校で食うに限るな」
「完全に不良の発想だよねそれ」
「じゃあ恭平も不良か」
「いやだな、一緒にしないでよ」
僕らは他愛もない会話を交わしながら、教室で昼食を貪っていた。遅れてきたくせに、反省の色が微塵も窺えない下らない会話だ。
高校生、それも後輩をもつ身としては規範にならった生活を心がけなければならないのだろうが、生憎とそんな規律を享受するつもりはなかった。だが、学生である身分と青春を謳歌したいという極めて利己的でどうしようもない欲のために僕らは決まって昼に学校へと足を運んでいた。
それだけじゃない。
快楽主義者としては、面白いものはなんでも試してみたくなる。故に、青春のうちに数え上げられるような、学校をサボる、授業を真面目に聞かない――古典的だが、紙飛行機を飛ばしてみたり――、無理やり女子と自転車の二人乗りをしたり、誰が気になるだか好きだとか、およそ古臭いが正統派の青春を演じてきた。それに付随する形で学校に遅れる。結局は遅刻に帰結する。
まあ、ただひとつ言わせてもらうと、やるべきことはやっている。別に快楽主義だからといって刹那主義ではなく、将来のことも見据えている。勉強もしてるし、期間限定のお遊びと割り切っている。いや、割り切ってしまっている。だからきっと、どこか物足りない。
――日常なんてきっとこんなものだ。青春は存在しても、誰もが思い浮かべる青春なんて現実にはない。それは『戦争の起こらない世の中』のように、手の届かない理想なのだ。
またしてもため息を禁じ得ない。
「ため息ばっかついてるとハゲるぞ」
「慎太はデリカシーがないなあ」
「男相手に気遣う必要なんてねーだろ」
「確かにそうだね」
くだらないやり取りの間にも、食事は進んでいく。慎太の方を一瞥し、彼が沈思しているのを見る限り、僕と同じ思考を辿っているように思える。
足りないものを。不可視の幻想を追い求める者同士、悩みは絶えない。
再び思考に浸かろうとすると、それを遮るように教室の扉が思いきり開かれた。
「みなさん、ごきげんよう」
扉を開けたであろう人物は仁王立ちのまま、教室内を睥睨する。学校が指定する制服が一片も見当たらない黒のドレスを着た少女は、僕らの姿を認めると破顔一笑した。その様子を背後から眺めていた少年もまた、つられるように笑っていた。
「小城さんは本当に嬉しそうに笑うなあ」
「そ、そんなことはないわ。見間違いでしょう」
小城と呼ばれた少女は頬を仄かに赤く染めながら否定する。それでも尚、視線は僕らに注がれており少年の気持ちが幾許か知れた。
羞恥心を振り切るように、小城さんがこちらにやってくる。その後を、従者の如く少年が追従する。
「こちら、よろしくて?」
小城さんが隣の席を示しながら聞いてきた。寸分置かず、いいよと返す。
「では、失礼して」
「ああ、それなら新しく机を付けた方がいいよ」
席を持ってくる小城さんを遮り、少年が椅子ごと机を運んでくる。
「恭平君、慎太君。おはよう? いや、こんにちはかな」
「おはよう」
「おはよう」
僕らは揃っておはようと返す。机を僕らのものとくっつけながら、見かねたように彼は笑った。
「やっぱり、寝坊したんだね」
少年――神谷拓人の黒髪が揺れる。髪の奥の双眸は絶えず笑っていた。
「まあね」
「でも、それはそこの姫も同じだろ?」
「姫と言うのは遠慮してくださらない?」
ドレス姿の少女、小城百合はそう言って不快気な表情を露わにする。僕は苦笑を禁じ得ない。
彼女は僕らと同じ問題児と学校側から認定されている。寝坊はするわ、服装は自由だわ、極め付けには喋り方が面倒で……。問題児認定まで待ったなしだった。しかも、彼女はその独特の服装と喋り方の所為で見過ごせない損をしている。
「よろしかったら、今日の授業のノートを見せてくれないかしら? 他の人は目も合わせてくれないから、貴方たちに頼るしかないのよ」
彼女は、所謂ボッチだった。コミュ障というわけではない。ただ、常識に外れた奴は弾かれるだけだ。
それは、僕らも同じだった。
「わりぃな。俺らも今来たばっかなんだ」
「寧ろ、僕らも見せてほしいくらいだよ」
白紙のノートを見せて笑う。姫の表情が引き攣った。
「貴方たち、一体何のために学校に来てらっしゃるの? 私にノートを見せるためでしょう?」
「そうだそうだー」
「便乗するなよ拓人」
「しばくぞ姫」
周囲とは一線を画した発言が飛び交う。慎太のドスの効いた声に背後の席の生徒が肩を強張らせた。しかし、当の発言を受けた姫は「野蛮ですわね」と朗らかに笑っている。
「そもそも、勉強なんて人生の役に立ちませんわ」
「中学生の言い訳かよ」
「でも、ノートは欲しいんだよな」
溜め息混じりに吐いた言葉に拓人が反応した。
「ノートを見せてくれる人ならいるじゃない」
「え?」
拓人が指をさす。その方向に目を向ければ、こちらの輪に入りたそうにチラチラと視線をくれる少女がいた。その様子は明らかにこちらを意識したものだ。
やがて茶髪のボブカットの少女は、意を決したように眉を持ち上げ、ぎこちない動きでこちらにやってきた。背後に隠していたものが差し出される。
「きょ、恭平くん。よかったら私のノート見る?」
彼女は皆月愛莉。問題児である僕らに分け隔てなく接してくれる人物のひとり。
顔つきは妖艶さが目立つ姫とは正反対で、可愛いというイメージ。常に眉尻が下がっており、臆病な性格をしている。しかし、成績は優秀で僕ら問題児と違い遅刻も欠席もしない模範的な生徒。そのノートを見れるとあれば、断る理由がない。
……だが、先に昼飯を食べてからにしよう。
「ありがとう。これ食べたら見さしてもらうよ」
「う、うん」
「はぁ!?」
僕の言葉に否やが上がる。声を荒げたのは姫。彼女は驚愕の面持ちを湛えて僕を見ていた。
「何で今写さないのかしら? 早く写さないと昼休みが終わってしまいますわよ?」
「僕は小城さんや拓人と違って昼食を食べてきてないから」
「いえいえ。いつ写すの? 今でしょ! ですわ!」
「……」
姫が会話の流れをぶった切る。ドヤ顔がうぜぇ……。しかも、古いし。
以前頻繁に乱用してきた「ぱねぇ! ですわ!」よりは遥かにマシだが、うざいことに変わりはない。
彼女は一体何を目指しているんだろう。
「そんなにノートが見たいんなら早く言えよな」
不意に、横合いから声が掛かる。呆れの混じった声音だ。顔を向ければ、制服をきっちりと着こなした実直そうな顔つきの男と凛々しい顔立ちをした女がいた。
このクラスのリーダーで学級委員に所属する達賀直樹と真鍋帆華だ。僕は緩やかに相好を崩す。
「おはよう。僕はいいから、他のみんなに見せてあげて」
「おう」
「分かったわ。でも、ノートを渡しちゃうと姫のこの変顔が見れなくなるのは残念ね」
「変顔とはなんですの」
怒っているようで、妙に嬉しそうにする姫を余所にノートの書き写しが始まった。
僕も早々に昼飯をたいらげ、書き写しに参加する。皆月さんのノートが一番綺麗だった。
書き写しが終わると、まるで示し合わせたかのように授業開始のチャイムが鳴った。
「さーて、授業を始めますよー!」
意気揚々と榛先生が教室に入ってくる。教卓に教材を置いて、みんなを見渡した。
――その時だった。
もしも奇跡や神秘なんてものが世の中にあると言われたら、人はどう思うのだろうか。魔法みたいなことが有り得るなんて言われても、はいそうですかと無難な言葉を並べ立てるだけだろう。僕だって一笑に付して一蹴する。
でも、もう僕は笑えない。
人はどんな超常現象も超能力も頑なに認めないが、目の当たりにすればその限りではない。
「えー……」
僕は絶句する。超常現象を目の当たりにして、脳裏に浮かぶ嘘が粉々に砕け散った。
白い光が教室内を包んでいた。光は柔らかく、暖かい。しかし、それは決して清いものではなく、却って魔的なもののように思えた。
眼下には巨大な幾何学的な紋様。足許にはその一部が映っていた。それはフィルター越しの二次元のように、まるで一切現実味を持ち合わせていない。幾何学的な紋様、その全貌を想像して、僕は魔法陣という言葉を想起せずにはいられなかった。
紋様の輝きが加速度的に増していく。もう周囲の光景すら朧げだ。
「み、みなさん! おっ、落ち着いて! 落ち着いてください!」
全く以て落ち着かない先生の声を皮切りに、次第に生徒たちの悲鳴が止んでいく。
意識が暗闇に引きずり込まれそうだ。でも、僕に抗う気はなかった。
日常に於ける非日常、つまりは日常からの脱出。とうとう僕の願いが叶う。そう思うと、胸の鼓動を抑えられずにはいられなかった。
それはきっと、隣の慎太も同じだろう。
――日常は唐突に終わりを告げる。
その刺激はきっと僕を殺すことを分かっていながらも、僕は刺激を求められずにはいられない。だって、平凡な毎日に溺死するよりかは楽しいから。
最後に見たあいつの横顔は笑っていた。
~~~~~~
どれだけ眠っていたのだろう。瞼の裏に光の熱が染みる。体の節々が痛みを発していた。
上体を起こそうとして、自分が硬い床に寝かされていたことに気付く。クラスで気絶したところまでは記憶があることから、ここはきっと教室内だ。
蛍光灯にしては、強い光を受けながら瞼を開く。
途端に、僕は絶句した。
双眸に映ったのは、網膜に焼き付いたのは、両の目が捉えたものは、僕らが幻想と呼ぶ世界だった。
煌びやかに輝くシャンデリア。その輝きは光だけでなく、純金によるところも多いだろう。視点を下げれば、深紅のカーペットが目に入る。アカデミー賞授賞式に見るような豪奢なカーペットは見るからに高価そうだ。僕は即座に足をどけた。
頭を左右に振れば、目に入るのは高価な調度品の数々。その品々は高価でありながら、決して成金のような雰囲気を醸していない。所有者の気品を漂わせる統一感があった。
眼下に広がる大理石。左右に競い合うように立ち並ぶ支柱。どれをとっても一級品。以前都内で宿泊したホテルにもここまでのものはなかった。素人目にも明らかに分かる凄み。
自然と、視線はカーペットの先へと向かっていた。伸びきって皺ひとつないカーペットの先には、僅かな段差を経て玉座があった。背もたれは赤く、腕掛けは純金、赤と金が品良く混じった一品だ。当然、そこに座す人物が椅子に相応しくないわけがなかった。
「よくぞ参られた異世界の勇者たちよ!」
有無を言わせずに二の句が継がれる。
「余がリンドニア帝国第23代皇帝アルベルト・グランドロス・リンドニアである!」
僕は本能的に察した。自らよりも各上の存在。支配者たりえる者。それが目の前にいることを。
王や皇帝と呼ぶのに、これほど適した人間はいないだろう。そう思わせるほどの気迫と貫禄が眼前の男にはあった。
齢は四十代半ばといったところだろうか。外見は年を感じさせないほど逞しく、背丈も高い。右目にある傷は、過去の戦いによるものなのか。痛々しい傷跡は彼の威厳に拍車をかけていた。
皇帝が横を見遣る。見れば、皇帝の脇には僧衣らしきものを着た男と、鎧を纏った男女、軽装の少年、金髪の青年と少年が屹立していた。いずれもが、皇帝には劣るものの独特な気迫を纏っていた。僕は思わず後ずさった。
皇帝に諭されるように、僧衣の男が口を開く。
「私の名はアイソマー・レーメンス。この城で神官長をやらせて頂いております。そしてこちらの三人が――」
「帝国三将軍がひとり、ベルベナ・カルムードだ」
「同じく、グライン・アイザック」
「アルフィト・リオーネ。よろしくー」
鎧を纏った男女と、軽装の少年が不動のまま名乗る。
間髪入れずに、金髪の青年と少年が前に出る。礼装に身を包んだ姿は皇帝の血筋を確信させた。気品漂う青年が口を開く。
「お初にお目にかかります。私、リンドニア帝国第一皇子アルセム・オル・リンドニアと申します。是非お見知りおきを」
一礼の後に隣の少年の肩を叩く。兄弟なのだろうか、その顔立ち品良く整っており、非常に似通っている。弟と思しき少年は深呼吸をし、眼鏡の位置を直しながら声を発する。
「こ、こんにちは! ぼ、ボクはリンドニア帝国第二皇子セルベス・イル・リンドニアです! できたら覚えておいてください」
一息に捲し立てると、慌てて元の位置に戻る。声は緊張に震えており、兄とは鏡写しのように臆病なように窺えた。
皇帝、神官長、三将軍、二人の皇子。総勢七人が僕の前に屹立していた。その迫力は筆舌に尽くしがたい。
しかし、僕はどこか違和感を覚えていた。致命的な何かが欠けているような、不安感を。
「余を含め、ここにいる七人共々勇者殿たちを歓迎しよう!」
再び皇帝が雷の如き音量で声を降らし、僕は違和感を自覚した。
姫が――いや、小城百合のことではなく、文字通りの意味合いのお姫様がいないのだ。ようやく腑に落ちた。だが、口にする気はおきない。何か事情があるのだろう。
人の事情を無闇に詮索するのは柄じゃない。センセーショナルなゴシップが好きなわけでもあるまいし。
それは、横にいるこいつも同じ筈だ。
「マジかよ……」
低く、呟くような声が隣の友人から漏れた。彼は瞠目したまま身じろぎしない。口元は引き攣ったまま、嬉しそうに、だが疑念的に笑っている。
視線を隣から戻せば、玉座から凄絶な威圧感を覚えた。見れば、皇帝が僕らのことを注視していた。その双眸は炯々と輝いており、微塵も老いを感じさせない。
皇帝に喋らせたまま、返答もないという現状。それを自覚しながらも、上手い言葉が喉から出る気配はなかった。意を決したように、慎太が口を開く。ウィットに富んでいる彼なら、上手い返しを期待できるだろう。
しかし、慎太の声を遮るように女性の声が響いた。
「あ、あなた達は誰なんですか!?」
僕らの担任、榛先生だ。
彼女はヒステリーを起こしたように、感情のままに言葉を吐き散らす。
「一体何の真似ですか!? ふざけてるんですか!? いたずらなら早く元の場所に返してください!? 幾ら日本でもこんな真似許されませんよ!?」
背後を見遣れば、頬を紅潮させ怒鳴る先生の後ろに大勢の生徒がいた。皆一様に不安気な表情をしている。先生は、パニックよりも彼らの雰囲気に耐えられなかったに違いない。
だが、この場に於いてその行動は悪手だ。
「貴様! 王に向かって何という口のきき方を……!」
ベルベナと名乗った女騎士が激昂して腰元の剣を抜いた。今にも先生を斬りつけんばかりに怒気が膨れ上がっている。表情は、凛々しさから一転、鬼の形相と化している。
こんな感じでした。
拓人は姫の執事という新キャラでした。
姫は死語を使う変人という立ち位置に変わっていましたね。
今読むと地の文がくどいですね……。
期待させると悪いので一端、完結ということにさせて頂きます。
また、覚えている範囲内で初期プロットの展開を載せます。
以下記憶内のプロットです。ご注意ください。
【展開】
主人公は恭平、慎太、愛莉の三人。
慎太は帝国を裏から操る存在により魔王へと変貌する術式をかけられます。
その術式は帝国城内に及び、深い憎悪がトリガーとなるものでした。
本来であれば慎太ひとりが魔王として誕生する筈でしたが、帝国皇子の行動により恭平が条件を満たしてしまったため魔王が2分割されることになります。
慎太は完全な魔王となるため、恭平の眼を求め始めます。
一方で、恭平は他の日本人達を擁する王国に身を預けます。
しかし、この王国と日本人は只の利害が一致しているだけの関係であり、王国は後ろ盾になる代わりに危険な任務や戦場にばかり日本人が派遣されます。
王国内の日本人派閥のリーダーである着ぐるみの人は日本人が絶大な力を誇るため武力による独立を目指しています。
そんな折に王国と帝国間で戦争が勃発します。
日本人たちは遊撃隊として参戦。
波状攻撃と奇襲作戦により敵の本丸を攻め、恭平の手により皇帝が打ち倒されます。
しかし、それは囮であり真打である慎太が皇帝を名乗り登場します。
再び相まみえる二人。
魔王の眼の力を存分に発揮し、衝突。
慎太のことを良く知る恭平は、力に溺れ本来の天才性を発揮できない慎太の動きを読み勝利。
慎太が敗北したことにより魔眼が委譲され、恭平が完璧な魔王となります。
そして魔王となった恭平は、世界の歪な仕組み。勇者と魔王が流転していることを悟り姿を消します。
日本人たちは慎太を保護。戦争のどさくさに紛れて独立します。
とはいえ、国家経営の経験があるものがいるわけでもないので早々に難航します。
日本たちのリーダーは可愛い見た目(着ぐるみ)に反して脳筋なので武力で全てを解決しようとします。
そこで慎太が渉外役を買って出て、やがては内政も担当し、その手腕が認められ国王となりその地位を盤石なものとします。
そんな折、愛莉と行動を共にしていたウサギが国を訪れ助けを請います。
愛莉は帝国内の迷宮最深部にまで到達したものの、そこで待ち受けていたものに敗北し迷宮の維持リソースとして囚われの身となっていました。
それを聞いた慎太一行は迷宮を攻略し、最深部に到達。最深部にいたものは、変幻自在の魔物でした。当人たちが最も傷つけたくない姿に変貌するうえ、攻守共に勇者の慎太が手も足も出ないほど。愛莉は魔物が恭平に変貌したため攻撃を加えられずに敗北していました。
窮地に現れたのは恭平。彼は一瞬で魔物を塵に変えました。愛莉を救出した彼は、その身柄を慎太に託し姿を消します。
残された慎太たちは迷宮の最奥へ進み、そこで最古の魔術師と出会います。
魔術師はかつての勇者と共に魔王と戦った人間であり、勇者の言いつけにより長い間世界を監視していました。
しかし、それを疎ましく思った男が彼を迷宮内に封印しました。
その男こそが、帝国を裏で操っていた人物。
そも、勇者は魔王に勝利することはできず、その身を以て魔王を封印する存在であることが判明します。完全に封印することはできず、勇者の身が魔王に染まり切ったとき封印が解けます。つまり、魔王は元々勇者。
魔術師はこの事実に勘付いた勇者により封印を強固なものとして、後続の勇者が犠牲にならないようにしていました。
ですが、先述の通り魔術師が封印されたことで、魔王の封印はむき出しになりました。
それでも勇者の意志が固かった為、封印を解けずにいた男は自発的に後続の勇者を召喚し魔王を移植することを思いつきます。これが初期に帝国内で行われていたことです。
魔王となった恭平は自身を封印するため、かつての勇者の下へと向かいます。
しかし、そこで待ち受けていたのが男。
彼は、自らが神によって生み出された世界の調停者であると語ります。感情があるせいで、悠久のときを苦しむ彼は死ねない自らが死ぬために世界を滅ぼそうとしていました。
恭平は単身彼に挑みますが、敗北。
後を追ってきた慎太が見たのは、操り人形にされた恭平の姿でした。
……と、まあ確かこんな感じの展開を想像していた筈です。
リメイク版は帝国内の内政事情が異なったりと展開が違います。
冗長な文章、失礼いたしました。
宜しければ、小説情報→同一作者の別作品より 現在掲載中の 異世界英雄になどなれはしない をご一読下されば幸いです。
当作品が好きな方は恐らく好きです。またダークファンタジーなので。
ボロボロになりながら迷宮を探索、行商人の女の子と手を組んで日銭を稼ぎ、奴隷姉弟の面倒を見つつ元の世界に帰る方法を探す物語です。
当作品と同じで成長系チートで、日本人外国人といった異世界人が沢山おり文明に影響を及ぼしています。
9月中は毎日更新するので宜しければ、是非。




