69 ドラゴン狩り
『魔王の右眼』、僕が半身の魔王から奪ったスキルだ。
恐らくユニークスキルであろうこれには幾つか能力がある。
魔力の知覚化、威圧。今まで使ってきたのは使ってきたのはこの二つ。
僕が知る限りでは、あとひとつ能力がある。
「ガアアアァァァッ!」
拙攻を繰り返しは中空に浮かぶ赤黒い盾に弾かれる土龍。
僕はその憐れな土龍を見据え、ゆっくりと杖を掲げる。
三つ目の能力を行使するべく右眼に力を入れて、呟く。
「『再現:雷轟』」
瞬間、杖の先端から紫電が迸る。
ゼロ距離から発動した高速の魔術がスパークを散らしながら土龍に衝突。そのまま背後に後退させる。
堅固な鱗を貫通させることは敵わないが、ダメージは通っているようだ。
土龍が恨めしげに血走った目で僕を睨めつける。
「アルフィトの魔法を見ておいてよかったよ」
そう、これは僕の魔法じゃない。
そもそも、僕には光属性の適性はないし取得できる職業にない。では、何故発動できるのか。
その答えが、魔眼の三つ目の能力『再現』だ。
『魔王の右眼』は一度見た魔法を完全に再現することができる。
しかも、行使の際は使用者のステータスが反映される。故に、僕はアルフィトの使った魔法を使え、本人以上のパフォーマンスを発揮できるのだ。
無論、無制限にというわけではない。
魔法は僕のMPが尽きたら使えなくなるし、何より魔眼を発動している時のみという制限が掛かっている。そして、その魔眼を発動し続けていられる時間は約3分。
一度発動した以上、悠長に構えてはいられない。
距離を離した土龍と他の二体の龍を中心に魔力が渦巻いていく。
魔法を使う前兆。いくら魔防の高い僕でも三体の100レベ越えのドラゴンの魔法を受たら無事ではいられない。
僕は魔法の発動を阻止するべく地に手をつけて、新たな魔法を行使する。
「『再現:魔法支配』」
僕を中心に無色の結界が生成され広がっていく。
『魔法支配』の領域が辺りを侵食し、三体のドラゴンを飲み込んだ。
同時に、土龍二体と赤龍の魔法が発動し僕に向け放たられる。
土属性上級魔法『岩石砲弾』『地割れ』と炎属性上級魔法『獄炎』、三つの上級魔法が僕に襲いかかる。
だが、ここは僕の支配領域の中にある。
魔法を視認したところで、『魔法支配』を発動する。
「失せろ」
瞬間、魔法が消失する。
高速で発射された砲弾が、足元に迫っていた地響きが、地獄を体現したような焔が。
全て、最初からなかったかのように消え失せた。
動揺するドラゴン達。僕はそれらを尻目にべりあるに尋ねる。
「今何秒?」
「58、59、え、えーと60?」
「……一分くらいかな」
魔眼の使用時間が残り二分を切った。忍者の戦闘も手伝いたいので、使用時間は残しておいた方がいいだろう。
そろそろ終わらせようか。
杖をドラゴン達に向ける。僕の様相を見てドラゴン達が我にかえり、各々魔法を発動しようと構える。
しかし、魔法は発動しない。
全て僕が無効化した。先程発動させてやったのは一度眼で見ておきたかったからで、二度も見る必要はない。
「魔法を見せてくれてありがとう。これはほんのお返しだよ。
『再現:岩石砲弾』」
土龍が発動しようとした魔法を僕が発動する。
岩肌の尖った巨大な岩石が魔法陣より現出し赤龍に向けて射出される。
高速を伴い炸裂した岩石が赤龍に衝突し、爆砕。赤龍が痛みに悶え後退する。
「『影縛り【裏】』」
土龍の一体を僕の十八番で束縛し、固定する。
残りの一体には『獄炎』を見舞い、位置を誘導。これで三体のドラゴンが近接している状況ができた。
この峡谷の谷底において横幅は酷く狭い。ドラゴン一体なら兎も角、三体もいればまともに距離を取ることはできない。
人間サイズの僕には何の支障もないが、ドラゴン達は攻撃が躱しにくいということだ。
無論、強固な鱗によりまともにダメージを受けることがないことを見越してやってきているのだろう。実際、僕が与えたダメージは致命傷に至っていないのでその推測は正しい。
今のところは、だが。
攻撃が足りなければ足せばいい。如何に堅固な鎧も集中して叩けば脆く崩れる。
一回の上級魔法より千回の下級魔法。質より量が重要。
だが、もし質も量も伴ったらどうなるか?
「『再現:雷撃』」
上空に無数の魔法陣が出現し、枚挙に遑がないほどの紫電を発現させる。
空が僕の魔法に染まる様はまさに圧巻。三体のドラゴンもどこか惚けているように見える。
上級魔法『雷撃』の多重展開。僕の残存魔力を振り絞った最大の攻撃。
「これで終わりかな」
その言葉が呼び水だったかのように、幾百もの『雷撃』が峡谷に降り注ぐ。
ひとつひとつが絶大な威力を含有する魔法が大量に、空を裂くようにして降る場景は圧倒的な偉容を誇る。
辺りを眩しい光と破壊音が包む。
群集させたドラゴンを一気呵成に叩く攻撃は周囲の地形を変える勢いだ。
上級魔法が束になって谷底を抉り、ドラゴンを灼き、残光を残して消えていく光景は天災という言葉を連想させるほど苛烈だった。
「これが僕の全力か……」
本来火力のない僕がここまでできるようになるのだから、魔眼の力は計り知れない。
今なら愛莉の召喚獣の冥爛ともまともにやりあえる気がする。
「…………」
やがて弾幕が晴れるとクレーターがひとつ出来上がっており、底に三体のドラゴンの死体が横たわっていた。
全体的に貫かれたというより灼かれた感じだ。
所々鱗が破砕しているが、素材になる場所は十分に残っている。
さて、どれから剥ぎ取ってやろうかとナイフを取り出した時、頭中にファンファーレが鳴り響いた。
《レベルが上がりました!
58Lv→82Lv
ステータスが上昇しました!
スキルポイントを72獲得! 》
まるで今までの努力を嘲笑うかのような大量の経験値。
「……」
呆然のあまり言葉が出ない。
一匹辺り8Lv分の経験値があったのか?
いや、忍者の話だともう少し上がってもいいんだけどな。
その疑問は直ぐに氷解した。
背後から突如として奇声が上がったのだ。
「ふぉ、ふぉおおおおおぉぉぉぉう!? あたっ! あたっ! あたしのレベルがっ!」
馬鹿悪魔幼女ことべりあるだ。
彼女は何故か発狂していた。
「どうした、とうとう壊れたか?」
「違う! ぶっ殺すぞ! あたしのレベルがめっちゃ上がったんだよ! なんでだろな!」
なるほど、僕のレベルの上昇を妨げたのはコイツか。
僕が魔宮内で冥爛にしてもらったように、一定の範囲内にいる仲間は例え戦闘に参加していなくても経験値を分配してもらえるという法則だ。
僕がドラゴンを倒して得た経験値が二分割されべりあるにも行ったのだろう。
正直腹立たしいが、べりあるもレベル上げしなくてはいけなかったのも事実だし丁度いいと思おう。
「それで、レベルは幾つになった?」
「聞いて驚くな! 42だ! なんか色々覚えたっぽい!」
「何覚えたんだ?」
「わかんね!」
分かんないのかよ。
っていうか、もう42レベか。魔宮で必死にレベル上げしてた僕ってなんなの? しかもコイツに至っては漁夫の利で得た経験値。
もういいや、色々諦めた。
僕はべりあるに経験値の説明をしてやり、剥ぎ取りを済ませると忍者と合流することにした。
恭平:やっと無双できた……。
恭平のステータスを久しぶりにまとめてみました。
勇者のステータスは実質そのレベルの二倍と考えてください。
この場合は164ですね。
柊恭平 16歳 男 レベル82
魔族
職業:死霊術師
称号:魔眼の勇者
HP 7092/7092
MP 154/18334
筋力 778
体力 830(+124)
敏捷 877
耐性 1155(+150)
魔力 1480(+246)
魔防 1033
適正属性 『風』『無』『闇』
[スキル]
勇者の窓
言語理解【初級】
鑑定【上級】
状態異常耐性【中】
状態異常付加【大】
魔力上昇【大】
体力上昇【中】
罠解除【中級】
解呪【裏】
剥ぎ取り
気配感知
アイテムボックス【中】
暗視
詠唱簡略【上級】
詠唱破棄【初級】
消費MP削減【大】
MP回復速度上昇【大】
錬金術【裏】lv4
細工lv2
魂喰い
悪魔召喚
操馬
[魔法]
キュアlv3[下級]
呪痺lv2[下級]
風刃lv3[下級]
リカバリーlv2[下級]
風巻lv1[中級]
風弾lv1[中級]
影縛り【裏】lv4 [中級]実質上級
呪毒lv1[中級]
呪弱lv1[中級]
効果反転lv1[中級]
発信呪lv1[中級]
死者恐怖体現lv1[禁術]禁呪は通称
[特殊]
断罪の化身
∟ 断罪の剣
∟ 断罪の盾
魔王の右眼
まとめるの疲れた……。
何か抜けてるのがあったら教えて下さると助かります。




