表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/89

67 ドラゴン狩り前夜

ギャグ回とべりある成分補給回です。

「もう一度聞くよ。何を狩るって?」


「だから、ドラゴンでござるよ」


 闇オークション会場――店名ではない――から出てきた僕らは手頃な宿の一室に腰を落ち着けていた。

 忍者が狂って叫んだ所為でいらぬ関心を買ってしまったのだ。

 加えてその発言はあまりにも大言壮語で嘆息してしまうのも無理はない。


「ドラゴン倒すって何言ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


「ギャハハハハハ! さとるバカだってよー! バーカバーカ!」


 僕の膝の上で笑うアホの子べりある。自分のことを棚に上げて他人を笑っている。

 因みに、彼女はずっと変化したまま街の入口に待ちぼうけをくらっていた。

 一人が寂しかった反動か、合流してからよく喋る。

 悪魔とは言えまだ子供。酷なことをしてしまったな。

 プニプニした頬をつまみながら思惟していると、べりあるが懐からエーテルを取り出した。

 彼女は愉快げに笑いながらエーテルをラッパ飲みする。


「ギャハハハハハッゲフッゲホッうヴェ……」


 案の定、エーテルをがぶ飲みしていたべりあるが激しく咳き込んだ。そのまま僕の膝に吐瀉物がってあああぁぁぁ!?


「吐くな! 吐くんじゃないこのアホ悪魔!!」


「あ、アホじゃなっ……うぇっぷ」


「あ゛あ゛ああぁぁぁぁ!?」


 替えのきかないインナーが幼女のキラキラ加工されたモノに侵されていく。

 ふざけるな、僕の一張羅だぞ! これがなかったら僕は今夜どんな格好で寝ればいいんだ!? 

 慌てふためく僕を横目に忍者がチロチロと舌を出し床を這いずり回る。


「落ち着くでござる恭平殿! 幼女の吐瀉物などご褒美ではござらんか! ズズズ……」


「お前が落ち着けえぇぇぇぇぇ!」


 それがご褒美なのは一部の界隈だけだ!

 僕は備え付けの枕を握り締め、忍者に向けて全力で投球した。


「正気に戻れ!」


「拙者の至福の時間を奪わないでほしいでござるよ!」 


「ああもうコイツは駄目だ! 早いとこなんとかしないと! 助けて不動さん!」


「柊君おやすみ~」


「丸投げしやがったぁぁぁ!」


 べりあるの吐瀉物が原因で起きたこの騒動は、事態の沈静を見るのに30分を要した。

 





「えーっと、それでなんだっけ?」


「ドラゴン狩りでござるよ」


「あー、そうだったね」


 漸く落ち着いた忍者を前に重い溜め息をつく。

 結局、インナーはダメになってしまい処分した。今は忍者のズボンを借りている。

 これを機に僕は替えのインナーを買おうと思い至り、現在べりあるをおつかいに向かわせている。

 報酬がエーテルなので間違いなく買ってこられるだろう。

 それにしても、ドラゴン狩りねえ……。


「できるの?」


「拙者狩ったことがあるでござるよ? というか、日本人なら狩っていて当然の相手でござる。ドラゴン狩って俺TUEEEEは基本でござるからな」


「あ、そうなの……」


 思ったよりハードルは低いみたいだ。

 正直魔宮のボスより強いと思ってたけど、案外そうでもないのかもしれない。


「まあ、一応強いんでござるよ? ドラゴン。ただ、拙者達はチート持ちでござるし、攻略法もあるでござるから」


「攻略法?」


 そんな便利なものがあったのか。

 僕が魔宮にいた時は敵は大体初見だったので、攻略法なんて確立する暇がなかった。

 攻略法があったら僕はもっと強くなっていて……愛莉を死なせることはなかったのかもしれない。

 いや、益体もない思考はやめよう。

 今はドラゴンの攻略法だ。

 忍者が嬉々として説明してくれる。


「まあ、単純なものでござるよ。まずは両翼をもぎ取り地に引きずり落とす。次は喉にある呼吸器を潰しブレスを阻止、そして目を抉りとって視界を奪う。あとは囲んでタコ殴りすればどうにかなるでござる」


「エグっ!? 想像以上にエグいよ!」


「現実なんてそんなもんでござるよ」


 例えそうだとしてもあまり聞きたい話ではなかった。

 まあ、でも取り敢えずドラゴンが倒せることは分かった。問題はドラゴンの生息地だ。

 生息地までの往復、戦闘時間を含めてその日中に帰れるのか。

 それが不可能ならこの時点で計画は頓挫だ。


「ドラゴンってどこに生息してるの?」


「地図でいうならここらへんでござるな」


 忍者がゴソゴソと鞄から王国の地図を取り出し、現在いる街の遥か北東に位置する峡谷を指差した。

 とてもじゃないけど一日で行ける距離じゃない。


「そっか、じゃあおやすみ~」


「ちょっ、まだ寝ないで! 往復一時間も掛けずに行く方法があるんでござるよ!」


「あったとしても、人目につく方法なら論外だ」


「それも大丈夫でござるから!」


「えー、なに?」


 気怠げにベッドに寝そべっていた上体を起こす。

 正直ドラゴンとかどうでもいいから早く寝たい。

 そんな僕を見て何を思ったのか、忍者が必死に食い下がってきた。


「れ、レベル上げにもなるでござるから!」


「やばっ……本当に眠くなってきた」


「柊どのおぉおおぉぉぉぉ!」


 忍者が泣き喚きながら毛布にしがみついてくる。

 涙とか鼻水とかが四散しまくり、僕の毛布にも容赦なく降り注いだ。

 汚なっ!


「嘘だから泣くなよ……。それで、方法って何? 言っとくけどべりあるは一人乗りだから。レベルが低すぎて二人以上だと重量オーバーになるよ」


 これは以前べりあるから聞いたことだ。

 べりある曰く、変身には二通りあるらしく、一つが通常の変身。体積や能力が備わるが実質的なステータスは変わらない。だから一人乗りが限界。

 二つ目は、変身はせずに魔力をステータス上昇に注ぐこと。見た目は変わんないけど多少は強くなるのではないかと思う。見たことないから分からないけど。

 兎も角、べりあるが一人乗りであるという事実は歴然として動かしがたい。


「あっ、そうだったのでござるか。まあ、それでも方法は変わらないでござるよ。瀬奈から召喚獣を借りて渓谷に向かうのでござる」


「そういえば不動さんは召喚師だったな。ユニークスキルは忘れたけど」


「今ならまだ起きてると思うでござるから、拙者ちょっと行ってくるでござるよ」


「ああ、いってらー」


 そう言って忍者が部屋を出て行った数分後。



「せっかく人が寝ようとしてたのに邪魔するとか、クズ以下ね貴方! ウジ虫はウジ虫らしくそこらへんを這ってなさいな」


「ぶっ、ぶひぃ!」


「この光景も見慣れてきたな……」


 ドM忍者が鞭に打たれて喘ぐ姿が現出していた。

 ものの数分でこれだよ。いい加減本題を進めてくれ。


「このっ、クソ虫がァ!」


 大体この光景が子供に見られたら今後の人生観を狂わせることにもなりかねない。ここの宿には他にも宿泊客がいるんだから少しは遠慮しろよ。

 まあ、不動女王様が怖いから口出しはしないけど。


「ご、ござっふうぅぅぅ!」


 忍者が何度目かの嬌声を上げた時、


「おーい、きょうへー! ずぼん買ってきたぞー。エーテルくれ……って、おっ?」


「「「!?」」」


 べりあるを使いに出していたのを忘れてた……!

 こんな夜のプロレスごっこを子供が見たら情操教育上大変宜しくない。

 僕は反射的に指を走らせていた。


『影縛り【裏】』カース・バインド・リバース!」


 漆黒の魔手が出現し、二人の変態を鎖で縛り上げる。

 ……これ以上大人の遊びを子供に見せつけるのはよくない。

 べりあるが変なものを覚えたら今後の付き合いがやりにくくなる。

 二人とも、これに観念して大人しくしてくれ。


「し、縛りプレイでござるか……!」 


「た、たまには受けに回るのも悪くないわね……」


 ああ、わかってたよ。こうなることはなんとなくわかってたよ。

 この二人の異常性が尋常じゃないことくらい知ってたよ! クソッ!


「なあ、きょーへー」


「あ、なんだ?」


 べりあるが不思議そうに指を咥えて僕を見る。

 なんとなく、言いたいことは分かる。


「なんで二人は縛られてるのに気持ちよさそうにしてるんだ?」


「それはね、二人がどうしようもなく変態だからだよ。べりあるは『絶対』こんな風にっちゃ駄目だよ?」


「お、おう……!」


 僕の言葉遣いの所為か、べりあるがドン引きしつつも頷いた。

 彼女はそのまま鎖に縛られてる二人を見て、それから僕を見た。彼女の視線が三者を巡り、何か納得したようにうんうんと腕を組んで首肯した。

 鷹揚に腕組みするべりあるがこちらを見据える。

 次いで放たれた言葉は衝撃的なものだった。


「二人を縛るきょーへーはつまり、ドSってことだな!」


「ん? んんん!?」


 何を言われたのか理解できなかった。

 べりあるは僕の理解が追いつく前に、畳み掛けるように言葉を浴びせてくる。


「あたし知ってるんだからな! 縛ったり叩いたりする人はドSって言って、『変態』なんだってこと!」


「ま、まさか、いや、そんな……!」


「きょーへーも変態だったんだな!」


「べりある、違う、違うんだ……! これは不幸な行き違いだったんだ!」


 僕がこの二人と同列だなんて、そんなことは有り得ない!


「あたしもう眠いから寝るなー。きょーへーも早く寝ろよ。おやすみー」


「違うんだあぁぁあぁぁぁ!」


 必死に伸ばす手も虚しく空を掻き、べりあるはあくびを残して消えていった。

 狭い部屋に残されたのは惨めな変態たち。

 昔、男は皆狼! と慎太と共に言って自分の変態性を認めたことがあるが、それはこの二人とは比べるべくもない。つまり、僕は変態じゃない。そうだ、変態じゃないんだ……!

 何とか意識を落ち着けようとしていると、不意にシャツの裾が引っ張られた。

 視線の先には、鎖が解かれ満面の笑みを浮かべた二人の変態の顔。

 二人は親指を立てて、


「「こっちの世界へようこそ!」」


「お前ら、ぶっ殺すぞ!?」


 結局、ドラゴン狩りの話は明朝に延期になった。

 いいのかこんなんで。

ドSをも従える真のドS。それが主人公。


あとぶっちゃけた話、花売り少女の後の話の展開は早いです。

閑話挟んで一気に加速していきます。

それで、今どんな閑話にしようか悩んでます。今のところ、『べりあるの一日』みたいなのにしようかなって思ってたり。

こんなのがいいってのがありましたら言ってもらえると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ